「ジュディ・デンチとスティーヴ・クーガン、ふたりの巧さに尽きる」あなたを抱きしめる日まで マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
ジュディ・デンチとスティーヴ・クーガン、ふたりの巧さに尽きる
私は、フィロミナが奪われた息子と同じ1952年の生まれだ。フィロミナと母の年齢も数歳しか違わない。現在の母親の健康状態や体力を思うと、物語となる12年前(2002年)、フィロミナが自力で息子の消息を辿るのは最後のチャンスだったといえるだろう。
ほとんどキャリアのないソフィー・ケネディ・クラークが演じる若き日のフィロミナと、大ベテランのジュディ・デンチが演じる50年後のフィロミナが違和感なく繋がる。50年間、長く胸に仕舞い続けた想いへの贖罪がテーマだけに、この女優二人によるフィロミナの時間的な繋がりは作品のデキを大きく左右する。
カトリック教徒のフィロミナは、起きたことの責任は自分にあり、すべての罪を自分が背負うタイプ。一方、彼女とともに息子を探す記者のマーティンは信仰心を持たず、皮肉屋で簡単に人を信じない。このまったく価値観の違う二人が、少しずつ打ち解けていくところが、息子の消息を解明する本筋とは別の見どころとなる。
暗い過去を背負ってはいても、ロマンス小説で100万年に一度の奇跡の出会いに心をときめかすフィロミナ。人は過去と現在を切り離して過ごせるものなのだと改めて感じる。
フィロミナがロマンス小説のあらすじをマーティンに話して聞かせるシーンが楽しい。
マーティンはギネス(ビール)が好きなキャラクターなんだと思って観ていたら、これが大きな伏線だったとは・・・。
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