「収奪された時間を取り戻す、過去へと向かって行くロードムービー的側面」あなたを抱きしめる日まで えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)
収奪された時間を取り戻す、過去へと向かって行くロードムービー的側面
かつて、一夜限りの交わりで授かった子どもを修道院に取り上げられた老女が、子どもの50歳の誕生日にその過去を告白し、彼との再会を志す。
信仰とはなんだろうかと考えさせられた。
本来、人を救うためのものである宗教が、救うためではなく、償うために、厳しい戒律を強いる。
殊、絶対神を崇める一神教には、生まれてきただけで罪深いとする「原罪思想」や最終的には神に裁かれるとする「終末思想」に象徴されるように、大なり小なりその傾向が見られるし、特に厳格なカトリックでは、そこに教会の支配性が加わると思う。
本作は、信仰のもつ強い原罪観、終末観の結果、収奪された時間を取り戻す、過去へと向かって行くロードムービー的側面もある。
悪意ではなく善意から生まれる悪魔的行為を、更なる善意で包むジュディ・デンチの好演が光る。
カトリックへの強い批判性を持ちながら、信仰の本質である「愛」や「赦し」を逃げずに真正面から描いている。
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