なみのおとのレビュー・感想・評価
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観客と対話させるドキュメンタリー
濱口竜介監督の作品、会話劇が多いが、ドキュメンタリー映画であってもそれは変わらない。この映画は、震災で津波被害に遭った方々の証言と対話を記録した作品だ。時折、監督自身も対話の相手として登場している。小津安二郎の映画のような正面ショットを多用して、映画を見る観客と津波被害を語る証言者を対話させるような工夫を凝らしている。
対話の内容が、直近の東日本大震災の被害のことだけでなく、昔の津波被害、そしてそのころから伝わる「てんでんこ」の紙芝居の物語など、今という時代性と土地の長い歴史性の両方を含んでいるのが素晴らしかった。
対話の内容は、津波の被害のことだが、浮かび上がってくるのは土地に根付く人々の生活やコミュニティの分厚さだったりする。消防団3人の対話は、なぜ給料がでるわけでもない消防団に入ったのか、というところから始まる。自分たちのコミュニティを自分たちで守るということを当然のことと考えているのだ。地域ネットワークのような中間集団を失いつつある都会とは対極の在り方で、それがある種、災害にも強い力を発揮するのだと教えてくれる作品だ。
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酒井耕監督の単独長編も観てみたい
受け止められる環境があれば、言葉は生きて浮かんできて、そして受け止められて、ときに別の言葉を誘発したりする。遮るのではなく、連鎖反応のように会話が重なる瞬間に胸がすく。小津を思わせる正面からの構図=逆構図カットも含め、『親密さ』や『ハッピーアワー』にも繋がっていく原始を見た気がした。
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