「不純物を排除した徹底的な暴力」渇き。 海さんの映画レビュー(感想・評価)
不純物を排除した徹底的な暴力
心理描写、動機付けの下書き、人間関係の掘り下げ。もちろんそれらは「物語」の構成には欠かせないのだけれど。あえて「不純物」として取り払うことで、より暴力性を際立たせているんじゃないだろうか。コロコロと入れ替わる時系列は向精神薬とアルコールに溺れる主人公のフラッシュバックを表現しているのかもしれない。終盤のホテルの一室では「ボク」と「父親」が入り乱れ、どちらの時系列かもわからなくなる。何故?どうして?ただただ不快、それもいいと思う。「世界が混迷していると思うのであれば、混迷しているのは他ならぬあなただ」といった冒頭の引用を忘れてはならない。
理解できないものを「意味わかんねえ」と切り捨てるのは簡単。意味わかんない、何考えてるかわからない、そう思わせる存在の可奈子はドラッグのメタファーでもあるし。その娘と向き合うことから逃げ続けた母親(黒沢あすか)になるのか。
それとも、憤りを絶やさずにその意図、真相を追い続けて父親(役所広司)になるのか。選ぶのも自由。
暴力に理由を求めるなんて、それこそ馬鹿げてる。
観賞後に、心の奥底から沸き上がる渇きに思わず誰かと話さずにはいられなかった。
言葉にならずレビューとしては不完全だけど、言葉にすれば陳腐になる。感じたままの印象を大事にしたい。
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