「バケモノ親子。」渇き。 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
バケモノ親子。
幾ら渇き切っていても、ここまで凄惨なことは出来ない。
…って鑑賞者に思わせようとして描いているのだったら、
中島監督の狙いは当たったことになるんだろうか。
まずこんな非業凄惨暴力血まみれシーンがテンコ盛りの
作品を、さぁ高校生!1000円だから観ようねー!っていう
ノリでキャンペーンをやっちゃう製作サイドの良識を疑う。
が、結局気持ち悪くて席を立った人というのもそういない。
乗せられてしまったJコースターから、降りられなくなって
しまった観客は、ドラッグ漬けにされる被害者と相違ない
のだろうか?なんて、色々なことを考えたくても考える余地
を与えないほどの異様なテンションで物語はグイグイ進む。
いやー。何回目をつぶり、何回下を向いたことか。
ある意味、原作に忠実すぎるという映像の凄まじさ。
例えばタランティーノや園子温作品などにも血まみれ描写は
ふんだんに取り入れられるが、彼らの作品だと笑える。
なぜならそれを彼ら自身が作り出しているのが鮮明だから。
ところがこの作品には、あり得ない劇画だと思わせる材料が
少ない。妙なリアリティが強調され、実際に、自分の子供が
どこで、何を、しているのか分からない親御さんが多いので
ひょっとしたら?が頭を駆け巡ると異様な不安感に襲われる。
そもそも、あの刑事とあの妻の娘だ(ゴメン)、さもありなん。
と思われても仕方ないところだが、優等生ヅラして恐ろしい
事件をしでかしていたのがどんどん暴かれるにつれ、恐怖は
ピークに達する。素直に怖い。これはホラー映画じゃないか。
畳みかけるハイテンションの画は、逃げ出したい心情を一切
気にもかけず、最後までノンストップで描き切っている。が、
後半になると暴力漬けにされた観客の目が慣れて疲れてくる。
…まだやるのか?…まだ行くのか?…まだ探すのか?と。
トンデモないバケモノ娘という難役を演じ切った小松菜奈は
大したものだが、やはり私的には徹頭徹尾、役所広司の映画。
アカデミー賞級の演技をほぼ独壇場で見せつけ、粗暴で過激な
父親を猛猛と演じ切っている。彼こそバケモノ役者だと思った。
(ラストも救いがないなぁ。この毒を違う色で描けるものかしら)