「クソがぁ…!!」渇き。 うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)
クソがぁ…!!
過去の中島作品の積み上げてきたものを、根底から覆す、はっきり言って駄作です。
『嫌われ松子』『パコと』『下妻』『告白』全部見ました。それ以外は未見ですが、中島ワールドに魅せられてきたファンとして彼に言いたい。「クソがぁ!」
作品のテイストは『嫌われ』の救いのないストーリーに『告白』の重たいバイオレンス描写、随所にタランティーノ作品(他)に見られるバイオレンス・アクション描写が散見されます。
いままで見たこともない残酷描写を「発明」したわけでもなく、劇中見られる暴力描写はすべて、何らかの映画の模倣です。
もし彼がタランティーノ・シンドロームに陥ているとするなら、肝心のタランティーノご本人は『イングロリアス』『ジャンゴ』において、ストーリーテリングと娯楽性を極めたので、もう技巧に走る必要がない存在になってしまっています。
今更、確固たる評価を得ている中島哲也監督がどうしてハリウッド式のクライム・サスペンス・ムービーを模倣する必要があるのか。本当に理解に苦しみます。
新人の女優を光らせるのはお手の物だったはず。いったいどうしてしまったのでしょう。
ダメポイントはたくさんありますが、一番はやっぱり骨になるストーリーがないこと。
これに尽きますね。
冒頭、コンビニで3人殺された事件の第一発見者として、通報を受けた?警備会社の警備員、元刑事(役所広司)が登場し、次に彼が元妻から娘の失踪を知らされ、という流れからすれば、娘に何が起きたのか、それが明らかになるにつれ自分の過去に犯したあやまちと、家族との絆を取り戻していく展開を描くのが定石です。
脚本も監督自ら手がけているんで、意図的にそうしたのでしょうが、今回の映画は明らかに観客不在で作られています。
その点が過去の中島作品との大きな違いです。
断言します。この映画「面白くないです。」