劇場公開日 2014年6月27日

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「この混乱が痛快な劇薬になる!家族が形骸化した父の執念の行方は」渇き。 かわちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0この混乱が痛快な劇薬になる!家族が形骸化した父の執念の行方は

2021年1月6日
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鑑賞方法:VOD

混沌とした社会を悠々とぶっ飛ばす驚異のサスペンス。6年前の作品だけに、キャストの豪華さを感じられるだけでなく、メイキングに名を連ねた山戸結希やアニメーションを製作したスタジオ4℃など、今を代表するクレジットも多数見えたのがなお良かった。
主人公の藤島昭和は、娘が行方不明になったことを受け、単独で捜査を試みる。次第に浮かび上がってくるのは、皮肉にも似た血で周りの者を破壊するような娘の実像だった。追っていく度に映るのは、キ○ガイな父の乱暴さと、 深すぎる闇。正直、整理しようとも思えないほどとっ散らかっていて、理解しようにもなかなか疲れる。なので、ある程度身に任せ、鼻につく個性的な奴らを嘲笑いつつ観ていく。ポップで個性的な描写と反比例するムードは、小説の文字を起こしたとは思えないほどのカオスで、映画を観ている意義が感じられるほど。そして、真実が近づいていくにつれ、父親として、"家族を取り戻す"感情が形骸化していく。ただ、結局のところ、何を観たのかが忘れそうになってしまうのは、描写が展開を疎かにしていくあまり、サスペンスがあまり顔を出さなかったところにありそう。
何処を取ってもクズとゴミで、当たり前の顔をして生きている世界の恐ろしさったら。正直、このご時世の混乱から来る不安は消えていった気がしなくもない。痛快で不愉快なエンタメ。割と好きな一本かもしれない。

たいよーさん。