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歴史や文化を愛するブレンダン・グリーソン演じるケン。その対局にあるような、おバカに見えるコリン・ファレル演じるレイのキャラクターが印象的。
レイとケンは今の仕事をする前からの知り合いのようで、言ってみれば、ケンにとってレイは我が子のような存在といえる。
子どもを殺すのは許されざるべきことという共通認識が、ケン、レイ、後半から登場するボス、レイフ・ファインズ演じるハリーにはある。
子ども殺しの罪を償わせるために子ども殺しをするという構図なのだ。
とはいっても、レイはケンの子どもというわけではない。ハリーから見れば大人の他人同士だし、ケン自身もまだそのことに気付いていない。
レイを仕留めるために忍び寄った公園で、頭に銃を突きつけるレイをケンは思わず止めてしまった。
これから殺そうとしている男が死のうとしている場面を止めたのは、頭ではなく心が動いたからだ。つまり、ケンがレイのことを我が子のように愛して守りたいと思っていると自覚した瞬間なのだ。
それは観ている私達が気付かされた瞬間でもある。
公園での一連のやり取りは観ていてハッとなる驚きがあるシーンで、マクドナー監督にしてやられた気になり思わずニヤけてしまった。
おバカなレイが子どもを誤射してしまったことを気に病んでいるとは考えもしていなかったので、頭に銃を突き付けた瞬間にまず驚き、それを止めてしまったケンにまた驚く。
こんなに面白いシークエンスはなかなかない。
マーティン・マクドナー監督の代表作といえる「スリービルボード」と、最新作の「イニシェリン島の精霊」を足したような作品で、マクドナー監督の原点のような印象を受ける。
それこそ「イニシェリン島の精霊」でコリン・ファレルとブレンダン・グリーソンが演じた役がそのまま本作のレイとケンのような雰囲気すら持つ。
曲がりくねり本当の物語が隠されたプロット。驚きのある展開。魅力的なキャラクター。
年間200本ちょっと映画を観るが控えめに言っても年間ベスト級。