悪の法則 : 映画評論・批評
2013年11月12日更新
2013年11月15日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
マッカーシーとスコットのエッセンスがつるべ打ちの容赦ない不条理劇
小説家コーマック・マッカーシー(「ノー・カントリー」「チャイルド・オブ・ゴッド」他)が書き下ろしたオリジナル脚本、と聞いただけで脊髄をサワサワと痺れるような戦慄が走り抜ける。さらにリドリー・スコット演出だ。スコットは時々、スットコな失望を与える描写が混じることがあるが、今回はどうか?
これがいいのである、全編にわたって! マッカーシー&スコット双方のエッセンスのつるべ打ち、というか、スコットがマッカーシー脚本に引きずられてか、まったく無駄なく陰惨なストーリーを語りきってみせる。マイケル・ファスベンダー、ペネロペ・クルス、キャメロン・ディアス、ハビエル・バルデム、ブラッド・ピット、それぞれのスター・イメージを充分に生かしつつ、それを徹底破壊する、その演出がゴージャスにしてリアルなのだ。スコットは「悪の法則」で、演出の新次元に突き抜けたかもしれない。悲運というしかない主人公の弁護士を演じたファスベンダーがすばらしく説得力があり、それが作品の勝因だが、笑ってしまうほどに破壊力抜群だったのが、下半身美丈夫イメージのバルデムをして性的トラウマに追い込んだディアスの車上大胆姿態だ。細部を想像するに恐ろしい。
ドラマの基本形は主要、脇を含め、長い対話(ダイアローグ)だが、その台詞が意味する予断、あるいは予想を超えた展開力、人が死ぬことの無造作、不条理感の緊張、その哲学の身振りを含めて、さすがマッカーシーとスコットのコンビは半端ない。躊躇なく、傑作誕生といっておこう。
(滝本誠)