「戦争のはじめ方」猿の惑星:新世紀(ライジング) kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争のはじめ方
冒頭では猿たちが巨大グリズリーに遭遇し、シーザーの息子がピンチに!その迫力の映像にはかなりまいった。どんなCG技術を使ってるんだ?!と最初はそんなことばかり考えてしまった。
コマーシャルの売り方は猿対人間の構図で、どちらを応援するか?などと単純な構えで見てしまいがちだが、とんでもない傑作であることが進むにつれてわかる。まずは最初の遭遇時に、片時も銃を手放せないダム技師が一匹の子ザルを撃ってしまう。しかしシーザーは即座に反撃するのではなく、あとから人間の居住区へ大挙押し寄せ「我らの家に来るな」と警告を発するだけであった。猿が人間の言葉を喋ることへ驚きを隠せない人間たち。しかも、動物的な攻撃を見せずに話し合いで解決しようとする知能の持ち主に敬意と畏怖を抱くのだった。
そんな前哨戦にもかかわらず、電力源を確保したい人間たち。マルコム(クラーク)を中心とする平和主義的なグループが交渉に赴く。しぶしぶ協力を承諾したシーザー。さらにテリトリーから早く出て行ってもらいたいためダムの修復を協力したりする。シーザーの人間への思いやりにいらだつ攻撃的なサブリーダー、コバ(トビー・ケベル)は捕らわれていた頃の人間への恨みもあり、探索に出かけた際に人間の武器庫を発見し、これを機に人間が戦争を始めようとしていることを吹聴する。そして、銃を奪ったコバは闇討ちのようにシーザーを撃ち、人間への仕返しとばかり仲間をシーザーの復讐と銘打ち戦闘準備するのだ。
ここまででも猿をモチーフにしてあるが実は人間社会の戦争の始め方を的確に皮肉っているのだ。なぜ銃を持つのか?銃に対しては銃で対抗するのか?そして多くの戦争のきっかけは自作自演の暗殺事件などという構図を見事に描いていた。平和主義者の猿に好戦的な猿・・・一方の人間コミュニティはその逆。
マルコムのシーザーへの期待。そしてシーザーも人間に世話になって信じる心を芽生えさせるという友情物語に泣けてくる。撃たれた瀕死のシーザーも人間によって救われたのだ。そしてシーザーの長男もコバに従ってはいたが、父が生きていたと知ると彼の手伝いをするように成長する。巨大な鉄塔に立て篭もった猿軍団だったが、地下では爆弾を仕掛けていたドレイファス(オールドマン)一派。壮絶なクライマックスも迫力あるのだが、そこまで行く着くまでに泣けてきたので、結末を静かに待つだけとなった。瀕死のシーザーを運んでいたマルコムたちがシーザーの生家(前作、ウィルの家。彼も死んでしまったに違いない)へと隠れ、そこで懐かしいビデオを見つめるシーザーの姿・・・。
銃社会への批判、戦争への批判、とにかく、これは猿と人間というドラマ以外に感じるところがてんこ盛りの作品だ。
【2014年9月映画館にて】