笑える映画だろう、とお気楽な気持ちで観始めたら…まさかの急展開。いつしか背筋が寒くなり、ずっしりと重たい気持ちで席を立つことになった。こんな体験をするなんて!予想もしなかった映画との出会いだった。
今回初めて知った「泡沫候補」という言葉。選挙のたびに必ず登場するあの「ヘンな人」たちは、泡ぶくだったのか…。本作は、大阪府知事選に立候補した人々を追う。前半、彼ら(というか、マック氏)は、泡とは思えぬふてぶてしさを見せる。やっぱりヘン、というかさむい。痛々しい。呆れるというか見ていられないというか…よくやるなあ、やっぱり何考えてるか分からない人たちだなあ…と、ここまでは十分想定内、だった。
そんな視界が一変したのは、いわゆる主要候補である現役政治家たちが登場したときからだ。彼らが共に並ぶと、政治家たちのうすっぺらさ、不誠実さが俄然際立つ。同じ立場であるはずの候補者を明らかに見下し、理解しようとしない、存在さえ黙殺するような言動…。そんな彼らを見ていると、泡沫とされているマック氏の方が、よっぽどまともに見えてくる。「踊っていると人だかりになるのに、まともなことを話し出した途端に飽きられる」というぼやきが、言い訳ではなく悲痛に響く。
いわゆる主要候補に群がる人々は、何のためにその場へ集うのか。有名人を見てみたいという好奇心ではなく、話を聴き、政策を理解するためだと言いきれるだろうか。立候補せずに傍観を決め込む、気楽で無責任な側にいる私たちは、泡沫候補とされる人々についてあれこれ言えるのか。…少なくとも私は、本作に登場した彼らのおかげで、現役政治家の薄っぺらさを初めて思い知ることができた。泡沫候補に対する政治家の眼差しは、結局は有権者へ向けられるもの。「あなたはまだ、負けてすらいない」というコピーを、今も反芻している。
そしてラストの、無責任な怒号とはためく日の丸の不気味さ。どうにも忘れがたい。