「おやたちの負債。」ぼくたちの家族 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
おやたちの負債。
およそチラシやポスターからは想像できない展開だった。
こういう窮地を味わったことのある家族、或いは親族なら
どこかしらにリアルをヒシヒシと感じとれたんじゃないか。
実は私の身近にも、これと同じような家族がいた。
なので観ている最中、長男と次男に思い入れ高じてしまった。
長男の嫁が言い放つ言葉、
「なんで私達の子供が計画性のない親達の犠牲になるの?」は、
確かにキツイ言葉ではあるが、私も言われて当然だと思った。
借金に喘ぐ人と喘がない人の暮らしぶりは、根本ですれ違う。
もし結婚を考えている人がいるのなら、親は元より、
その人の金銭感覚と価値観、将来への計画性、お金の使い方を
きっちり見ておいた方が無難だ。富豪か貧乏かというのでなく、
互いの考え方に大差があるかないか。結婚は日々生活なのだ。
やや不思議ちゃんのような母親が実は脳腫瘍だったことが判明、
ここ最近の極度なモノ忘れはそれによるものだったという。
余命(たったの)5日がヤマだと宣言された一家は、途方に暮れる。
まずは入院費とあれこれ探ると出てくる出てくる、実は火の車
だった実家の経済状況が露わに。父親は事業で莫大な借金があり、
母親はサラ金地獄、兄にはもうすぐ子供が生まれる状況、弟は
親のすねをかじる大学生、どこにも助け舟のない深刻な事態だ。
中学生の頃、引き籠りになったことで母親に迷惑をかけた兄は、
何とか打開案を練ろうと嫁に相談するが冷たく却下され、父親も
右往左往するばかりで頼りにならない。頼みの綱は弟なのだが、
この一見どうしようもなさそうな弟が、兄の依頼にけっこう働く。
二人で母親を受け容れてくれる病院探しを始める一方、金策にも
奔走する兄だったが、刻一刻と母親の余命期日が迫り…
まぁ何ともやりきれない…観ていて辛い・苦しい・情けない思いに
なってきてしまう。どこにも光の見えない状況下で、黙ったまま
耐える長男(妻夫木)に同情を禁じ得ない。いったいどこで爆発
しちゃうだろうかと…そればかり考えていた。お金の大切さって
こういう時にヒシヒシと感じる。冒頭で書いた私の知り合いは、
この物語でいうと弟にあたるのだけど、彼は独りでこの修羅場を
乗り切った。兄を早くに亡くし、相談できる親族も(傍に多くは)
いなかったはずだ。親の負債を子が背負う。保証人では仕方ない
としても、そこへ病気が重なってきては精神的に参ってしまう。
リアルに辛い状況となると、泣いたり喚いたりできないのが人間。
全く別映画になるが「常に備えよ」がスローガンになっていた作品。
私もせめて(その時の)危機管理だけは十分にしておくつもり。
もしもの時に遺族が背負うのが哀しみより借金なんてあんまりだ。
(妻夫木くんと池松くん、実生活では兄弟逆なんだって。巧かった)