劇場公開日 2014年8月30日

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「どうしてこうなった?」TOKYO TRIBE kenMaxさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0どうしてこうなった?

2015年5月27日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

テレビで鈴木亮平の告知を見て、出演者や雰囲気が良さそうだったので期待していましたが、なかなかに期待を裏切ってくれる映画でした。

一言で言って”駄作”だと思います。

とりあえず良い所から

『良い所』

⚫︎鈴木亮平、染谷将太、窪塚洋介の演技力
主演の鈴木亮平は、男性俳優陣の中では一番気合が入っていました。裸を見せることが多い役柄なのですが、鍛え上げた肉体を見せてくれます。役を理解する力はなかなかだと思いました。体が大きいこともあって、アクションにも迫力があります。
リズム感も悪く無く、動きと表情でキャラクターを上手く表現しています。

染谷将太は、主に語り部的なポジションです。物語の進行と状況の説明をラップで語ります。思ったよりリズム感があって驚きました。
この作品では表情と仕草が上手いです。気怠さや憂鬱感、楽しさや友情などを空気感として出しています。

窪塚洋介は、俳優陣の中では雰囲気的に一番ヒップホップっぽいですが、ラップが下手です。
ですが、普通の台詞の部分が上手いです。話し方や間の取り方、対振る舞いなど、作品とキャラをよく理解していると思います。もっと突っ込んだキャラでもやれたと思います。

⚫︎清野菜名、坂口茉琴のアクション
二人とも初めて見ました。
清野菜名は、正統派のアクションという感じで、型通りではありますが結構力強いアクションをしています。女性でこのぐらい動ける俳優は日本にあまりいないかもしれないです。
胸を出したりパンチラしたりと、なかなか身体も張って頑張っています。

坂口茉琴は、作中で男の子として描かれているようですが、観ているとなんとなく女性だろうなと分かります。
こちらはアクロバティックなアクションです。ダンスや体操に近い感覚です。動きが軽やかなので、清野菜名との組み合わせは面白いと思いました。

⚫︎YOUNG DAISのリズム感
演技は素人ですが、この人はラッパーなんでしょうか?
出演陣の中で一番リズム感があります。唯一まともかなと思います。
正義側の役で、正義感や清潔感を感じさてくれる雰囲気を持っています。

さて、良い部分はほとんど俳優陣の頑張りということで、ここからは悪い部分になります。

『悪い所』

⚫︎日本語でヒップホップ
いきなり根本的な事ですが、日本語でヒップホップは無いです。
私は日頃、ヒップホップは聴きません。なので日本のヒップホップシーンがどうなっているのかは分かりません。作中には多分本業の人達が出演しているのだと思いますが、酷いです。
一度、スヌープ・ドッグやウィズ・カリファを聞いてみれば言っていることが分かってもらえると思います。映画だとエミネムの”8mile”の楽曲なんか分かりやすいと思います。その差に愕然とします。

日本語は一音一音を切って発音しますが、英語などは流れるように発音できます。これが決定的な差です。特に歌に感情を乗せて韻を踏むラップでは言葉は楽器と同じだと感じます。見た目のスタイルや詩の意味が重要なんだと思っている人もいるかもしれませんが、海外のヒップホップは音としての捉え方が違うと思います。流れや繋がり、強弱の使い分けとリズムを崩さない言葉や言い回しの選択をしています。ヒップホップをやるなら最低でも英語でお願いします。

⚫︎園子温監督の荒さ
園子温監督の作品は、”冷たい熱帯魚”だけ観た事がありますが、とても良い作品でした。その監督とは思えない作りの悪さです。たぶん、”冷たい熱帯魚”の時に感じた良い意味での荒さが完全に裏目に出ています。

カメラワークが悪くて折角頑張っている俳優のアクションが平坦に見えますし、効果音の使い方もチープ。美術は奇抜さと色合い重視で質感とセンスゼロな上にセット感が凄い。小道具もオモチャ(特に刀は爆笑もの)。エロさはただ下品なだけの安物。グロさやサイコ感はコメディー以下。殺しも当たり前なギャングの抗争にもリンクするヒップホップを題材にしながらダーク感も残虐性も学芸会レベル。共通の悪役集団登場で抗争相手のみんなと協力して正義ごっこ。

どうしてこうなった?

役者の頑張りに救われている部分が多々あるので、逆に役者が可哀想です。

この監督は使い所の難しい人です。
どんな作品でも完璧に理解して昇華させるタイプでは無く、作品との相性によって最高と最低に別れてしまうタイプです。良くも悪くも自分の色を出し過ぎます。

次の作品は、相性の良いものと出会ってくれると信じています。

kenMax