「「大ごと」にしたわりに中身が無い」劇場版 SPEC 結(クローズ) 爻(コウ)ノ篇 しーぷまんさんの映画レビュー(感想・評価)
「大ごと」にしたわりに中身が無い
まず私は連続テレビドラマシリーズ、及び「零」についてはそこそこ楽しんだ…という前提のもとでレビューを書きます。
また、堤幸彦監督の名前とその評判はこの映画の観賞後に知る事となりました。
(堤監督の歴代監督作品「20世紀少年」「BECK」をリアルタイムで見た時も「酷いとは思わないけど…まあ、面白いとは言い切れないかな」程度の感想です)
この映画はとにかく退屈でした。
※長文になりますので、ご注意下さい。
陳腐なワードに陳腐な設定、なにか「裏で動いてますよ」感だけ出してる大きな影…とにかく大きくしたわりに後々活きてこない設定が多く、三章(+スペシャルドラマ1本)に分けた意味が感じられません。
紙のように薄っぺらく貼り付けた設定は途中で「何それ?」という感想と共にことごとく切り捨てられた結果、出来上がった物語は「ハリボテ」という始末。
「ソロモンの鍵」「パンドラの箱」「ファティマの予言」「ガイアの意志」…聞き飽きた言葉を並べたわりに、その言葉が持つ意味が物語の終盤にはどうでもいいと思えるちんまりした狭い舞台とガバガバ設定。
結局は「当麻を含めたスペックホルダーを利用して覇権を握ろうとする存在達に、当麻自らが仲間と共に立ち向かう」「スペックホルダーの中でも特異な存在であるが故に運命に翻弄された当麻を最後に導き、救うのは先人類でもなくガイアでもなく人間」って辺りがまあこのスペックの大筋のストーリーですが、
その為にドラマに4作も付け足すには長過ぎる。
そして要らない要素が多すぎる。(そのせいで作り手達も手に余ってどんどん捨てていく設定が多すぎ)
まず「御前会議」。
翔からその存在が出てきますが、大きな組織の割に何もできないし間抜けすぎ。
その後も「ダミーでした〜」と延命させたけどプロフェッサーJの操り人形になっただけ。
御前会議ではないですが卑弥呼の活躍する会議シーン含めて、
「そんな大きな組織を出し抜くことが出来る敵の存在」を強調したいのでしょうが、大きな組織がデカイだけでスペックホルダーに何ら対策もできてない上に、そのシーンの後のニノマエクローンや卑弥呼に大して見せ場もないためあっけなくやられておしまい。
(ニノマエクローンへの対策なんて同じ案の使い回し)
…いや、強キャラアピールしたなら最後まで強キャラらしく描いて下さい。もしくはさらなる強敵を。(そのはずだったセカイも、結局キレた時は小物だったし)
次に先人類側も「現人類を滅ぼして種族の復権」とかいうなら四人は少なすぎでしょう。
しかも潤は大した能力も見せずに私情に流され謀反起こして消される、一人は「ガイアの本当の意志はー」と今更真相を打ち明けて「実は主人公の味方」。
仮にも「種族の復権を上位体の意思として受け取った」なら何でこんなにバラバラになるのか?
もしくは卑弥呼はなんでこんな大ごとになるまで他の先人類に好き放題させてた?
公安零課も「未詳に表舞台の事件の対応に当たらせる、その影で暗躍する」って設定にはそれなりに説得力はあったけど、かなり自身に利があるスペックホルダーまで抹消したわりに、劇場版では強力なスペックホルダーには無力だし、その大将がいよいよ出てきたと思ったら普通に負けて死亡。
そして結では出番なし……御前会議にも出られる程優秀でスペックホルダーに対抗出来る存在じゃなかったの?
とにかく敵を含めた「何か巨大な陰謀を企てている組織」がどんだけすごい能力・権力を持ってようが、その組織の実態に厚みがないから「脅威」に見えない。
これはドラマシリーズ関係なく映画としての見せ方や話の運び方の問題でしょう。
さすがに最低でも1,800円×3回取られて良かったと思える満足度には遠かった。
最後に余談ですが、他人のレビューが気になって対抗意識ビンビンでレビュー書くくらいなら、
レビューなんて見ない方が良いでしょう。
私はここまで低評価を下しましたが、高評価にした方を蔑んだり見下したりしません。
同時に同じ低評価の方と意見が違うこともありますが、それを否定する気はありません。
「テレビシリーズと比べるな」とか、少なくともテレビシリーズから地続きの作品なんだから無理でしょう、程度には思いますが…
公序良俗に則った上でここは自由にその映画のレビューを書く場です。
他人のレビューが「自分と違うから」という安易な理由でレビューを書くなら、まず「レビューを見ない」ことをお勧めします。