二十四の瞳 デジタルリマスター版のレビュー・感想・評価
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二十四の瞳アッセンブル‼️
何度も映画化されている「青い山脈」や「伊豆の踊子」と同じく、やっぱり一番最初の作品が一番名作‼️木下恵介監督作品としても持ち味である抒情性が一番よく出てる作品ですよね‼️香川県小豆島を舞台にした女性教師と子供たちの交流の物語‼️オープニングの水面の画面に「仰げば尊し」が流れるだけで涙腺が緩んでしまう‼️やっぱり我々日本人のDNAに刻まれてますよね、「仰げば尊し」‼️高峰秀子さんの颯爽とした大石先生も大変魅力的‼️一年生が8キロ歩いて大石先生の見舞いに来るなど、子供たちとの触れ合いの描写も素晴らしい‼️後半は貧困や戦争で夢破れていく子供たちの成長が描かれ、悲劇的なんですけど、それを感じさせず、爽やかなんですよ‼️いつか、必ず小豆島に一度は行かねば・・・‼️
素晴らしかった
何度目かの劇場鑑賞だがこの修復版は初見で、映像の綺麗なことに驚愕。
歳を重ねて再見すればする程、この作品に対する感情の抑えが効きづらくなっている。パブロフの犬状態で、今回はついに序盤の出席点呼シーンから嗚咽を止められない事態となった。完全に不審者レベルだ。
まさに今こそ、多くの人に見られなければならない映画だと思う。ただ、今の人に見てもらうには字幕が必要だと思った。
擬似ループに込められた二重性
瀬戸内海に浮かぶ小さな島。18年を跨ぐ愛と悲しみの往還。激動の社会情勢に揉まれながら、教師の大石先生は生徒たちの壮大な旅路をヒューマニスティックに見守り続ける。
見守り続けることはある意味で見捨てることよりも辛い。二十四の瞳、すなわち12人の教え子たちは時代の変遷とともに一人、また一人とその数を減じていく。貧困、戦争、家庭の都合と事情は様々だが、そこに「良心」なるものの入り込む隙がないことだけは確かだ。大石先生は悲嘆にくれる生徒に、せいぜい花柄の入った弁当箱を買ってやるくらいのことしかできない。
生徒を支え導く立場を自称しながら、彼らの人生を実質的に左右する経済や政治といった根本的地層には決して切り込むことができないというもどかしさ。それはやがて「いち教師のとしての苦悩」の域を超え、「戦争は誰にも止められない」という戦時中の平民の普遍的な無力感へと拡大されていく。それによって大石先生という「個」と日本国民という「全体」はシームレスに接続され、大石先生のふとした所作や言葉の一つ一つが平民の総意の代弁かのような重みとリアリティを帯びる。
大石先生が「自分の息子が戦争に行くのが嫌だと言うような母親はどこにもいない」と息子に言われたとき、「何と言われてもお母さんはあんたたちの命が惜しい、本当はみんなそう思ってるはずだよ」と答えるシーンは印象深い。どれだけ無力であっても、どれだけ理想論であっても、ひたすらに平穏を願い続けること。それはたとえ経済的、政治的には何一つ寄与できなくとも生徒たちを見守り続ける教師としての彼女の使命とも相即する。
終戦後、大石先生は再び一年生のクラスを担当することになる。そこにはかつての教え子たちの面影を湛えている生徒がたくさんいた。昔を思い出し人目も憚らないで涙を流した大石先生に、生徒たちは「泣きみそ先生」というあだ名をつける。ちょうどかつての教え子たちに「小石先生」とあだ名をつけられたように。
時期を同じくして、小石先生は墓地で偶然再会したかつての教え子から同窓会に誘われる。同窓会は楽しげではあったものの、そこにははっきりと幾人かの生徒の不在が刻印されていた。二十四の瞳は18年の激動の末にここまで減ってしまった。しかし物語は感傷によって過去を振り返ることはしない。大石先生は生徒からのプレゼントとして自転車を贈られる。それは彼女が赴任してきたばかりの平和だった頃に、彼女が使っていたものだった。戦争は終わり、平和は戻ってきた。そのアレゴリーとして、彼女は再び自転車を手に入れる。
彼女が18年ぶりに1年生のクラスを受け持ったことや自転車を手に入れたことからもわかるように、ここへきて物語は擬似的なループ構造を取り始めている。そこには二重の意味が込められているように思う。一つは「一周目」で失ってしまったものが再び目の前に現れる、つまり復興が成し遂げられつつあるという肯定的な意味。もう一つは、物語が無反省のまま「一周目」とまったく同様の道を辿るならば、それは必然的に戦争あるいは喪失へと行き着いてしまうだろうという警鐘的な意味だ。
綺麗な二十四の瞳を汚しちゃいけない
小豆島を舞台に一人の女先生と12人の生徒たちが成長と共に戦争や貧しい家の事情に翻弄されていく姿を描いた話。
反戦映画でもあり、原作者壺井栄さんが女性なので女性映画でもあり、幼いあの頃を思い出すノスタルジー映画でもあるエモい映画だった。全編にわたって子供達が誰もが1度は音楽の授業で歌ったであろう童謡を歌ったり、「ふるさと」が何度もBGMで流れてくる。
特に分教校時代(小学校低学年)に先生と歌いながら小豆島の自然の中ではしゃぐ姿は、カメラがその様子を遠景で映してるから遠い昔のあの頃感をより際立たせてエモい。(まぁ私は都会っ子なんでクーラーの効いた涼しい部屋でしか歌ってなかったですけどね笑)
戦争に行かなければいけない男の運命だけでなく、跡継ぎじゃないからこそ、家庭の事情で売られたりどこかの家の息子と結婚させられる運命にある女の悲しみも同時に描かれる。「男に生まれれば家族のために稼いで役に立てたかもしれない」と嘆く少女の言葉は、戦争がない今でも女の苦しみとしてあることなんじゃないかなと思った。
ただ、子役がこの時代だから一般の子で棒読みかつ、方言で昔の話言葉で概ね何言ってるか分からない(笑)小説片手に見るのをおすすめする。
アシタカがモロに言った台詞を思い出す
個人評価:4.2
弱虫だから弱い人の気持ちがわかる。救う事は出来ないが、一緒に泣く事は出来る。泣き虫先生のその人柄が、もののけ姫でアシタカがモロに言った台詞を思い出す。救う事は出来ないが、共に生きる事が出来る。
24の瞳の子供たちと、共に生きた泣き虫先生の物語。本当にココロに染みる。
名作は見た人それぞれの心に多くのことを刻んでくれますね。高峰秀子さ...
名作は見た人それぞれの心に多くのことを刻んでくれますね。高峰秀子さんがほんとに素晴らしい。一つ一つの場面、一つ一つの表情に心打たれました。こんな先生に自分も出会いたかった、と誰もが思うのではないでしょうか。
前半、セリフが聞き取りづらいところもありましたが、原作を読んだら全てわかりました。終戦記念日の時期にこの映画をスクリーンで観ることができて良かったです。
後日、原作を読みました。戦争に翻弄された先生と子供たち。日本が貧しかった時代。小石先生が急激に老けてしまう理由もわかりました。
ナメてました! 心に刺さる名作!
戦闘シーンは無いのに、戦争の悲惨さがヒシヒシと伝わる素晴らしい作品。
1954年に作られていることもあり、戦時下の貧しい日常や、プロパガンダによって正しい判断が出来なくなってしまう状況がとてもリアルに描かれており、非常に興味深い。
ってか、酷すぎるぞ!戦争!
戦争の裏では、一般人の平穏な日常が奪われている。そういった事実を突きつけられる。見ていて心が痛い。
一億総国民の記憶
高峰さんが素晴らしい。
20代から40代。台詞のテンポ、背筋で年齢が変わっていくことを見せる。
はつらつとしていた20代からいろいろなことを経験した、年を重ねたうえでの表情の違い。
こんな演じ分けができる役者。
しかも、極論を言ってしまえば、初任のはつらつさを除けば、思っていることを言えないで怒っている顔と、教え子の去就に涙を流している場面がほとんどなのに、目が離せない。初めは、特に美人とは思えない顔に魅せられ、いつまでもあの眼差しに包まれていたくなる。
同級生の去就。
当時はあるあるネタが満載で、当時の鑑賞者にとってもどこかしら、自身の記憶と重なる場面がオンパレードだったのではないだろうか。
18年間を走馬灯のように映し出す。
兄弟とか、似た子ども・大人までの、主に3つの年代をクローズアップしてつないだキャスティング。その労に感嘆する。とはいえ、有名俳優ではない、ほとんど素人の役者ばかりなので、初見では正直、人を追うことで頭が混乱する。しかも12人。誰が誰だか。
そんな大勢のエピソードも見事に切り取り見せてくれる。多少、説明じみた会話、もしくは説明不足になってしまうが、久しぶりの再会で、近況を確かめ合う台詞にまとめて、相手はほとんど素人の役者なのに、涙を誘われる場面となる。
そんな18年間に、彩を添えるのは、音楽。
誰もが、一度以上は口ずさんだことがあろういくつかの童謡が繰り返し、出てくる。
同じ歌でも、曲調・場面によって、その醸し出す雰囲気が違い、込められた思いを訴えてくる。
これらの歌によって、人生の初期に育んだ師弟の絆が永遠のものになる。
音楽担当は木下監督の弟さん。不朽の名作。
声高ではない反戦映画。
でも、戦争を知らない世代でも、「あんな師弟関係を結べたら」と、そこに理想郷を見てしまう。
永遠の名作。
〈蛇足〉
大石先生のお婿さんて、『仮面ライダーシリーズ(昭和)』の死神博士だよね。『麻雀放浪記』でも、インパクトのある役だった。この映画ではちょっとしか活躍しないけれど。
名子役として、ほとんど学校に通えなかったという高峰さんが、学校の先生というのも不思議。
瞳を翳らすものへの怒りと平和への願い
Blu-ray(デジタルリマスター2007)で2回目の鑑賞。
原作(角川文庫版)は既読。
原作は成人してから読みました。本当は10代の時に読むべきだったかもしれません。それでも、素朴な文体に秘められた力強いメッセージに、深く心を打たれました。
おなご先生(高峰秀子)と子供たちの交流が心暖まるものなので、その後に待ち受ける不況や戦争がもたらす悲しみとやり切れなさが、余計に胸に響いて来ました。
暗い時代の波は小豆島にも押し寄せ、教え子たちも否応無しに飲み込まれてしまいました。その理不尽さたるや。子供たちの歌う平和な唱歌が軍歌へと置き変わっていく。
貧困のために学校に来ることもままならず、家の手伝いのために勉強も出来ない。子供たちを取り巻く状況に、歯痒さを噛み締めるおなご先生の表情に胸が痛くなりました。
キラキラとした美しさを湛え、希望に満ち溢れていた瞳が次第に翳っていき、戦争によって無惨に踏みにじられてしまう彼ら彼女らの命に、心が締めつけられました。
戦争への怒りと平和への願いを弱者の目線を通して痛切に訴え、瀬戸内の素晴らしい風景と共に叙情的に描くことで、普遍的な暮らしが破壊されてしまう理不尽を浮かび上がらせた名作だと云うことを改めて感じました。
このようなことが二度と繰り返されてはならない。何よりもいちばんあってはならないのは、子供から夢も希望も奪い去ってしまう世の中をつくってしまうこと。それを防ぐのが大人の役目であり責任であると痛感しました。
[余談]
高峰秀子の演技が素晴らしい。
まさに名女優だと思いました。
※修正(2024/05/17)
「こいしせんせー!」しんみりした名作。
学生の頃行った四国で、それまで小豆島自体知らなかったのにたまたま知って渡ってみた小豆島で、たまたま知ったこの作品。古いし長いんでずっと敬遠していたのですが、やっと観る機会に恵まれました。いやー、良かった。確かに名作。戦後9年目に公開されているみたいなので、当時は同じような経験をした方が観ていたのではないかと思われます。そう思うと今観るより感動もスゴかっただろうなぁ。
見始めは古くて、何言ってるかわからなくって、ちょっと観るのがしんどいかもっと思ったのですが、いつの間にかどっぷり浸ってました。長い映画には長いだけの理由があるものですよね。子供の成長、戦争があったゆえの悲劇を十分に描くにはこれだけの上映時間が必要だったのかなと思います。ゆっくりと時間をかけているからラストの大きくなった子供達と会うシーンは余計に感動的です。個人的にはラストが今まで淡々と積み重ねて来たものがブワァァっときて一番泣けました。
正直、高峰秀子さんは初めて観たのですが、若い頃から歳をとった演技まで上手いですね。不思議なのは20代前半で先生になったとして、そこから20年経ったとしても40代前半のはずなのですが、最後の方はもう60歳ぐらいに見えてしまいます。歳取らせ過ぎではなかろうか?
1954年のキネマ旬報ベストテンで「七人の侍」を抑えて一位になったのも納得です。もし誰かに古い映画紹介してと言われたら「七人の侍」よりこちらを勧めます。
素晴らしい空と海、小豆島。壷井栄先生の作品が大好きで、訪れた時のこ...
素晴らしい空と海、小豆島。壷井栄先生の作品が大好きで、訪れた時のことを思い出しました。日本の原風景がそこにはあります。
そんな日本の昔を、実に誠実に忠実にこの映画は描写してくれています。知らないくせになぜか懐かしい気分になります。全編に流れる音楽も郷愁を誘います。
教育の原点もこの映画には描かれています。教師は子どもを導き愛す。子どもは教師を敬い慕う。ただそれだけ。歌い、走る子どもたちが素晴らしいです。
後半の展開は、胸が痛いですが、改めて平和の尊さを感じることができました。
二十四の瞳、この素晴らしい作品を誰もが知る国民文学にしてくれたのは、この映画あったればこそということがわかりました。
昭和初期の光と影
こんなに長い時間を描く映画とは知らなかった。
最初1年生だった子供たちが大人になるまでを描くなんて。
小学1年生→5年生に成長した姿は別の子が演じてるらしいけど、似すぎで分からなかった!ものすごく時間かけて成長するの待って撮ったのかと思った。
昭和初期ならではの、近所付き合いや先生と生徒の関係など温かさを感じる一方、戦争の影や、貧困で教育を受けられない子供たち、女性が自転車に乗ったくらいで騒がれる閉鎖的なところなど、当時の暗い部分も描かれていた。
現代に撮影された昭和初期を舞台にした作品よりも、よりリアルだと感じた。
言葉遣いとか顔とか。
何だかんだで今撮ったものは、メイクとか今風だもんね。
ただ、やっぱり古い映画を見慣れてないのでちょっと途中退屈だなぁと感じたとこもありました(^^;;
昔の事
撮影は一年ほどでされたそうだが、一年生、六年生、成人と成長していく子供たちはまるで同一人物かのようにソックリ。よくこんな似た兄弟を12組も集めたもんだ。見事なキャスティング。
主役の高峰秀子は娘時代から熟年まで演じる。放浪記とか他の作品でもそうだが、娘役と老役の演じ分けがうまい。ちょっとした仕草や喋り方で自然に老けた感じになるのが凄い。
脚本は原作に忠実。台詞も殆ど同じ。傑作小説を最高のキャストで撮ったんだから、面白いに決まってる。
何度もリメイクされてるが、このキャストを越えるのは無理だろう。
最高に美しい一本
3本の畑の畦を子供たちの列が順番に通り過ぎていく。
低木の桜の林を先生を先頭にした子供たちの列車が巡る。
いずれのシーンも音楽的なリズムを伴う息をのむような美しいシーンである。
フレームインから画面を横切ってフレームアウトする被写体。
映画の描こうとする世界は被写体となる人々の行く先だ。
なんの損得も関係なく人を思う心がスクリーンに満ち溢れる。
人生のたった少しの短い期間でもよいから、このような純粋な思いを人と通わせることができたなら。このように思わずにはいられない。
最高に美しい映画だ。
不朽の名作
自分が生まれる10年も前の作品なのに全く色褪せることのない作品だ。
今回は映画『はじまりのみち』の予習を兼ねて、WOWOWで放映された木下恵介作品の中から『陸軍』『二十四の瞳』『喜びも悲しみも幾歳月』『楢山節考』の4作を観賞。
特に『陸軍』の長いラストには本当に心打たれた。
そしてなんと言っても本作『二十四の瞳』
以前観たときには若かったせいもあってか、どちらかというと先生と生徒の話くらいにしか思っていなかったが、今回観てみてより強く戦争というものを考えさせられた。
常に人の心情を見つめ、人々の生活を通して
又その目線で戦争というものを伝えている。
最近ヒットした戦争を題材にした映画を絶賛していた人達に是非観て欲しいと痛切に思った次第だ。
本当のことが言えず、正しいことが行えず、国中がクレージーだったことが良く分かる。
後世に残したい一本である。
もう残ってますね…。
素晴らしい瀬戸内の景色
モノクロのフィルムに焼き付いた瀬戸内の景色はまるで色がついているように見える。
空がまるで青く澄んでいるかのように見える。
本当にフィルムの魅力とはこういうところだ。
この鮮やかさは今のデジタル映画では表現し切れない。
そして、ほかの作品を見ていても思ったことだが、木下恵介はその自然の景色をものすごく活かそうとする。
木下恵介ならではの手法だと思った。
高峰秀子という人も素晴らしい。
私は、高峰秀子も田中絹代も好きなタイプだが、この役の人がカルメンをやったとは到底思えない。
よく見ないと別人だと思ってしまう。すごい演技力だ。
この人の凄さは本当にその人生にも顕れている。
ストーリーなんてどうでもいい。ここに息づく人たちの景色を見て欲しいとせつに願う。
なかなかの感動作でした
総合85点 ( ストーリー:85点|キャスト:80点|演出:80点|ビジュアル:60点|音楽:75点 )
映画が始まってすぐの場面、村人と生徒の科白の棒読み具合が酷いし映像も音声も質が低くて、最初の印象は良くなかった。だけど物語が進むにつれてだんだんと話に引き込まれていく。
昔ながらの風景とやたらと流れる童謡が戦前の情景を映し出して郷愁感を醸し出す。原作にもあったが、この当時は女性が自転車に乗るだけで白い眼で見られ異端視されたという。そんな田舎の閉塞感を感じて窮屈で仕方がないが、それでも美しい素朴な日本を感じ取れるし、当時の人々の生活のいい部分も悪い部分もよくわかる。映画の中では、「この映画が製作されたのは物語のはじめは今から20年もまえのこと云々」という文が冒頭に出てくるが、21世紀から見ればわずか20年程度後のまだ戦後間もない時に制作されているわけだから、この時代の情景がひしひしと伝わってくる。製作者と出演者の多くがこの激動の時代を実際に生き抜いた人々だからだろうか、いかにも現代の俳優が昔を演じていますという感触がなくて、場面場面に登場する人物の様子や所作が自然だった。
そして何よりも教師と生徒との触れ合いが優しく悲しい。子供の教育は社会情勢と家庭事情により二の次にされざるえない時代の村で、幸せな時間を共有し自分を慕ってくれる生徒たちが、現代日本とは全く異なる道を歩まざるを得ない姿を目の当たりにした。そして高峰秀子演じる先生と同様に、彼らを心配してのめり込んだ。そして追い打ちをかけるように戦争が家族と生徒を奪っていく。よく反戦映画とも言われるが実際はそれだけにとどまらず、その時代の抱える社会問題を含んでいる。そしてなんといっても一人の教師の半生と彼女と生徒との間の繋がりが感情豊かに描かれている。
古い映画だし観る前はあまり期待していなかったのだが、この年のキネマ旬報ベスト・テンで「七人の侍」を抑えて第一位に選ばれたそうである。「七人の侍」ほど著名ではないが、いい意味で最初の期待に反して、これはなかなかの秀作であった。
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