劇場公開日 2007年3月3日

「一億総国民の記憶」二十四の瞳 デジタルリマスター版 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0一億総国民の記憶

2019年9月10日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

萌える

高峰さんが素晴らしい。
 20代から40代。台詞のテンポ、背筋で年齢が変わっていくことを見せる。
 はつらつとしていた20代からいろいろなことを経験した、年を重ねたうえでの表情の違い。
 こんな演じ分けができる役者。
 しかも、極論を言ってしまえば、初任のはつらつさを除けば、思っていることを言えないで怒っている顔と、教え子の去就に涙を流している場面がほとんどなのに、目が離せない。初めは、特に美人とは思えない顔に魅せられ、いつまでもあの眼差しに包まれていたくなる。

同級生の去就。
 当時はあるあるネタが満載で、当時の鑑賞者にとってもどこかしら、自身の記憶と重なる場面がオンパレードだったのではないだろうか。

18年間を走馬灯のように映し出す。
 兄弟とか、似た子ども・大人までの、主に3つの年代をクローズアップしてつないだキャスティング。その労に感嘆する。とはいえ、有名俳優ではない、ほとんど素人の役者ばかりなので、初見では正直、人を追うことで頭が混乱する。しかも12人。誰が誰だか。
 そんな大勢のエピソードも見事に切り取り見せてくれる。多少、説明じみた会話、もしくは説明不足になってしまうが、久しぶりの再会で、近況を確かめ合う台詞にまとめて、相手はほとんど素人の役者なのに、涙を誘われる場面となる。

そんな18年間に、彩を添えるのは、音楽。
 誰もが、一度以上は口ずさんだことがあろういくつかの童謡が繰り返し、出てくる。
 同じ歌でも、曲調・場面によって、その醸し出す雰囲気が違い、込められた思いを訴えてくる。
 これらの歌によって、人生の初期に育んだ師弟の絆が永遠のものになる。
 音楽担当は木下監督の弟さん。不朽の名作。

声高ではない反戦映画。
でも、戦争を知らない世代でも、「あんな師弟関係を結べたら」と、そこに理想郷を見てしまう。
永遠の名作。

〈蛇足〉
大石先生のお婿さんて、『仮面ライダーシリーズ(昭和)』の死神博士だよね。『麻雀放浪記』でも、インパクトのある役だった。この映画ではちょっとしか活躍しないけれど。
 名子役として、ほとんど学校に通えなかったという高峰さんが、学校の先生というのも不思議。

とみいじょん