劇場公開日 2013年12月13日

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鑑定士と顔のない依頼人のレビュー・感想・評価

全144件中、1~20件目を表示

3.5うまい話に騙させるな

2025年7月5日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

どんでん返し系との事でしたが、想像出来るエンディングだったかなぁ…
主人公のキャラクター設定に同情の余地はないしで、個人的にはそこまでの高評価とはならなかったですね。

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Iwarenkon

5.0面白かった

2025年6月29日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

なんとなく観るのを躊躇っていた作品だったが、面白かった。
この作品に感じる「余韻」を言葉で表現するのは難しい。
それは観方によって余韻が変化してしまうように思えるからだ。
加えて、原作と日本語版タイトルに感じる違和感と是非
「鑑定士と顔のない依頼人」と「The Best Offer」
鑑定士という観点にある「本物と偽物」
そして「愛と欺瞞」
その他あった対照的な言葉や二極性
これがこの物語のテーマだろうか?
鑑定士オールドマン
この苗字に込められた「老人」
この設定に映る人間味は、いったい誰(何)を象徴するのだろう?
それは、老い、孤独、記憶、そして人間の本質だろうか?
オークションと落札金額からのマージンによって財を成した。
孤児院で育った過去 そこで出会った鑑定士
彼の現在は大金持ちだが、潔癖症ともいえる徹底した排他的な性質は、食事をする際にも手袋を外さない。
オールドマンが言った「女性への敬意と恐怖」
彼のコレクションルームに飾られていたのはすべて女性の絵画
女性への憧れは絵画であれば見飽きることはないが、実物の女性には恐怖しか感じないのは、幼い時に亡くした母と「孤児院でやんちゃをして罰として一日中壁に向かって立たされた」ことによる孤独が関係しているようだ。
また、接触恐怖症の裏返しとして美術品に対する思い入れがあるのかもしれない。
彼が収集する女性の絵画は、触れることができない理想の女性を崇拝しているのかもしれない。
さて、
物語は本当にミステリーそのものだった。
オートマタ
その復元
18世紀の傑作品であり美術品
それにかかわるなんでも修理人のロバート
クレアとロバートとサラ、そしてビリーはグルだった。
そしておそらく首謀者こそビリーだったのだろう。
ただし彼の目的は金銭面ではなく、芸術家として認められなかったことへの復讐だった。
そして伏線は、サラがロバートとのことでわざわざオールドマンに相談しにやってきたこと。
ロバートがクレアに気があることを匂わせている。
オールドマンを襲った強盗はカフェでビリヤードをしていた男たちのような気がした。
おそらく金でやらせたのだろう。
ビリーの描いた絵
「贋作者はどうしても自分のサインを残したくなる」
そして、
この物語の壮大な詐欺
そもそもオークションで詐欺を繰り返していたオールドマン
この物語のひとつの観方が「天罰」
オールドマンは警察署に行こうとするが、そもそも自身が詐欺をしたことがバレてしまう。
オールドマンを騙したクレア
彼女はお金のためなら何でもする。
信用していたロバートの裏切り
クレアがヴィラから持ってきたと思っていた絵は、ビリーが書いたものだった。
同時にすべての絵画が消えていた。
車いすで介護されるようになったオールドマンの回想
クレアの話した旅行の足跡を辿ってみる。
本当にあったカフェ「ナイト アンド デイ」
時計仕掛けのカフェは、まるでオートマタの中にいるようだ。
「おひとりですか?」
「連れを待っている」
彼の心境が良く伝わってくる。
この「ナイト アンド デイ」もまた対照的な意味合いを持つ。
そしてオートマタを使ってオールドマンを嵌めることを思いついたのがロバートだったのだろう。
レンタルヴィラと数字女
彼女の名前 クレア
もしかしたらあのイギリスのパスポートは数字女のパスポートだったのかもしれない。
オールドマンに出した「目録」作りの依頼
安物ばかりというおかしな依頼に目を背けるために仕込んだオートマタ
そして「広場恐怖症」というクレアの設定
「似た者どうし」
ビリーはオールドマンをよく知る。
彼の性格を熟知していた。
サラの専門はもしかしたら心理学や精神医学かもしれない。
実際、オールドマンは強盗に襲われたが、あのシーンに描かれていたのが「彼ら4人」の人間性だったように感じた。
さて、、
クレアたちの詐欺計画
ビリーの長年の復讐心とそこに乗っかったお金目当ての3人
孤独で接触恐怖症の老人
彼は恋をしたことで接触恐怖症が治り、女性を経験し、夢を見た。
彼の人生で咲かせることのできた一瞬の花
騙されたことを知ってもなおクレアを探した。
彼が奪われたのは詐欺で競り落とした絵画だけ。
それよりも、彼は最も大きなものを失ったことに気づいたのだろう。
心に空いた大きな穴
これを埋める手段は、ない。
彼にとっては「触れられない理想の女性像」よりも、現実のクレアの方が価値が高いことを知った。
架空でしかなかったものが現実化したが、その現実は裏切られた。
虚構
虚構なのに遺恨のように残った心の傷
ずっと傷つかないように生きてきた男の最後
耐性のないオールドマンが受けた心の傷は致命的で、一瞬で老化したのだろう。
車いすを押されながら空虚な目で空間を見ている姿
でも彼は、人生でいい経験をしたんじゃないかなとも思った。
老人が27歳の娘と恋に落ちることなど、詐欺でもなければ経験できないだろう。
後遺症は残ったが、お金では買えない経験こそ人生なのだろう。
単なるブラックではなく、そう思わせてくれる作品だった。

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R41

どんでん返し

2025年5月18日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

どんでん返しなのかコレ?
老人をいじめるなよな。

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まっつん

3.5キッカケは謎だが、老人の末路に思いを寄せる、ひとつの甘く哀しい物語なのだと思う。

2025年5月17日
PCから投稿

鑑定士の男が何者かは、最初から4シーンで分かる。依頼人がどういう立ち位置に居るのか、しばらくしてから分かる。

鑑定士と依頼人の共通点に「視線」がある。そこをミステリーに仕立て、観客を巻き込む。観客の視線は常に鑑定士の目線と重なる。

中盤になると、おぼろげだが謎の筋道が見えて来る。後半近くになると、もっとハッキリ結末が見えて来る。それでも彼に成り切り、終わりを迎える事になる。最後の最後まで「彼」で居られる。

本物偽物は別として、美術品に興味がある人、インテリアが好きな人、古いお屋敷を見たいと思う人は、とても良い目の保養になる映画。

興味と愛は紙一重なのか。

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星組

3.5タイトルに期待しすぎた

2025年4月13日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

エックスのタイムラインで知り視聴
タイトルから序盤は謎めいていてワクワク
途中から意外とこんな感じなのね
だとすると
ラストは…
だよね。うんうん。

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きなこ

4.5The Best Offer

2025年3月18日
iPhoneアプリから投稿

なぜか分からないけど好きで何度か観てしまいます。
美しく、神秘的で、奇妙な雰囲気があります。
ヨーロッパを感じられます。

展開も好きですが。何よりジェフリーラッシュがとてもいい演技をしていると思います。

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SADNESS🌧

1.0ジュゼッペ・トルナトーレ監督も堕ちたもんだ。

2025年3月9日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

全然どんでん返しでも何でもない。本当につまらない駄作。時間の無駄だった。

ニューシネマパラダイスの監督も落ちたもんだ。

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ガッキー

3.5予想外だった

2024年8月24日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

情緒不安定なこんなタイプの人は大変だと思いながら観てた。魅かれていくのはわからないでもないけど、少しうまく行き過ぎだとは思った。
途中、主人公と一緒になって、亡くなった後は資産は彼女の物だとふわっと思ったけど、まさか‥
しかしあれくらいの絵画を売ることになれば、簡単に足が付きそう。難しそうだけどな。映画的なドンデン返しだけど、個人的には面白かった。
評価:3.6

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bigsuke

2.5皮肉のつもりなら

2024年6月10日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

もっと捻って欲しいし、どんでん返しのつもりならもう少しなるほどーそう来たかーと思わせて欲しい。

目利きの鑑定士バージルが、古い屋敷にある骨董品の処分を依頼される。
ただ依頼主はなかなか目の前に現れず、電話でのみやり取りを進めていく。

依頼人の女性クレアは時に激昂し、また時には弱々しく激昂した時のやり取りを謝ったりと掴みどころのなさに翻弄されるバージル。
やがてクレアが対人恐怖症でずっと屋敷の一室に閉じこもった生活を何年も続けていることを知る。

そこから、少しずつバージルに心を開き始める。

バージルはバージルで、レストランでの食事の時でさえ手袋を外さない偏執的な潔癖だったりとちょっと人とは違う一面を持っていることで、老人と言っていいバージルとまだ若いクレアの歳の差カップルは少しずつ距離を縮めていくのだが。

これをネタバレなしでレビューするのはかなり難しいかなーと思いつつトライ。

終盤の一発の仕掛けのためにずーっと終盤まで引っ張って、はいドーンと来るわけだけど、正直なるほどーとはならず、あれが伏線やったかーとかここに仕掛けがあったなーなど振り返って納得できる感じは期待しない方がいい。種明かし的なプロットも特に無し。
その後のバージルもただただ右往左往。

バージルを演じたバルボッサはさすがの演技でシャキッとしたオークショニアから目利きの鑑定士、童貞拗らせおじいちゃんまで幅広く納得の演技。
ヒロインのクレアも綺麗で可愛い、しかもどこか狂気を孕んだ雰囲気がよく出ていてピッタリだった。
最初に彼女が姿を現した時の、いやめっちゃ綺麗やん!は前半のハイライト。

映像や音楽もいちいちオシャレで流石のイタリア映画感。少し暗めのトーンの風景が物語にマッチしていた。

それだけにこの終盤は一体何を言いたかったのかなーと悩んだ。イマイチテーマが掴めないまま、まさかこれで終わりじゃないだろうなーとハラハラしているうちに心の落ち着き場所を失ったまま終劇。
それならその先に何があったのか?とか別の視点から見ると?とか何かしらのインスピレーションを働かせるヒントが欲しかったかな。

いきなり背負い投げで投げ飛ばされて、痛ーと思いながら起き上がったらもう誰もおらんかったような終わり方だった。

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ハルクマール

4.0うーん、理由がわからない

2023年12月11日
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知的

難しい

面白かったです。
けっこう難しかったので、
ネットのネタバレを読んで
納得。

ネタバレ読まなければ
主犯もわからなかった。

ただ、ちょっと無理があるかなとも思った

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seiyo

4.0全体的に美しい映像美

2023年12月11日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

楽しい

興奮

こんなことあるかい!
って思う内容だけど是非お勧めの映画。
映画美を感じます。
他にも見どころはしっかりあります。

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こーしっぺ

4.0ミステリー好きはぜひ観て

2023年2月20日
Androidアプリから投稿

美術品の天才鑑定士・ヴァージルの下に両親が遺した美術品を鑑定してもらい、売りたいと依頼が入る。
奇妙なことに依頼人は何かと理由をつけて、対面の約束をすっぽかし、一向に顔を見せない。
次第に明らかになる依頼人の素性、その奇妙な状況に堅物・短気なヴァージルの心も少し揺れ動く。

結末までの持っていき方が巧妙で、こんなオチかな?いやこうかな?と考えながら最後まで楽しめて観れた。

ちょっとその仕打ちは酷くない?と思わなくもないが、因果応報と言うべきなのか…
観る人によってヴァージルにどんな感情を抱くか変わるだろうから、
そこもこの映画のだいご味。
私はラストのシーンがほんのり切なくて、少し肩入れしたくなった。

映画本筋とは別に、『ニュー・シネマ・パラダイス』のトルナトーレ監督作だったのね!ってことを観終わってから知る。
(観たいと思った映画はその瞬間から何も情報を入れなくなるタイプなので、よくあること)
音楽もモリコーネだし、なんだかトルナトーレ監督作を一気に観たい気持ちになった。

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スクラ

4.0びっくり!

2022年10月20日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

前知識なく、たまたま見つけて期待せずに見た。
まあ、設定も話もわかるし登場人物も多くなく見てた。

が、、、すごいどんでん返し。

なんか最近は、見る映画でわけわからん、ひねりすぎたスパイものとかで「ハズレ」な気分を味わってただけに、この映画はたまたま見たにしては「当たり」だったかな、と。

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みけい

3.5恋愛、ミステリー、最後はサスペンス

2022年8月15日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

ラストタンゴインパリを見た後みたいな
感じもあり

マーロンブランドよりはだいぶマイルドだけどね

そうなるでしょうなーと思ってはいたけれど
案の定で、、、

せめてビリーは   でいて欲しかったけど
一番動機があったのも彼ってことよね

面白かった

クレアが最初顔を出した時の透明感が凄くて
子どものような危うさと妙な色気が
すごかったねミステリアスな美女です

最後全部つながるとなんとも言えない気持ちになります

さいしょの冒頭の高級レストランとラストカジュアルレストランでの彼との
対比

創造と生産と壊すこと
彼には何が残ったのか

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らら

3.0壮大な嘘に無理がある

2022年8月14日
Androidアプリから投稿

映画としての作り込みは評価するが、それ以前の仕込みにあまりに無理があり過ぎる。
カタログ本一冊分の、それなりの美術品をホイホイと容易に用意したり、修理店の経営を偽装したり、諸々の嘘満載が、せっかくの作り込みも安易なご都合主義作品にしかなりえない。

そもそも、そこまで手が込まなくとも、強盗で押入れば一日で終わること。
あれだけの作品をどこでどう捌くのか、仲間内での報酬をどうするのか?嘘に嘘で固めているから、脚本自体に無理があったとしか思えない。

キャスティングにしても、こんな老いぼれた爺さんに若く美しい女性が恋に落ちるなぞ、完璧な妄想。それならせめてそれなりの主役を持ってくるべき。

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武蔵ii

4.0始めから不思議な雰囲気がただよう。 美術鑑定士である独身で人間嫌い...

2022年6月24日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

興奮

始めから不思議な雰囲気がただよう。
美術鑑定士である独身で人間嫌いの主人公が、ある女性との出会いで愛を知り、変わっていき、ハッピーエンドになるのかなと思いきやどんでん返しのラストが…
騙されても彼女を愛したということ、その事実、その思いでラストのカフェで連れを待つという姿が切なかった。
ストーリー、心理的描写など良くできた映画だと思う。

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よっしー

3.0ナイト&デイ

2022年4月9日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:TV地上波

2022年4月9日
映画 #鑑定士と顔のない依頼人 (2013年)鑑賞

主人公がいい人ではないけど、そこまでやり込めなくてもと可哀想になっちゃいました

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とし

4.0心優しき人にはお勧めしません

2022年2月13日
iPhoneアプリから投稿

どんでん返しで有名な作品ですから、何かが起きる事は十分わかって鑑賞されると思いますが...
心が不安定な人、登場人物に感情が引っ張られ、長引く人にはお勧めしません。
私の中では最高のイヤミス、とタグをつけました。

ただ、ミステリーとしては面白い。
なので、この評価です。

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さくら

3.5これをただの胸糞映画と捉えるか否か

2021年11月19日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

まず、美術品が美しいです。
家具から家から絵画まで本当に綺麗。

胸糞映画としておすすめ出てきますが、ただの胸糞ではなく、人生とは現実こんなものだし、おそらく見ている側もいつの間にか主人公と同じ目線に立っているから面白いんだと思います。

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魅咲✝️

4.5何が”贋”で、何が”本物”なのか?

2021年10月31日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

知的

偽物の中にも本当がというけれど…痛い。

愛を知らない寂しさと、愛を知ったからこそ味わう寂しさと、本人にとってはどちらが痛いのだろう。

予告を見て、贋作がらみのサスペンスなのかと思って鑑賞したら、かなりハードな、人間ドラマでした。
 途中の筋が下に記したようにご都合主義的でちょっと唖然と・中だるみしたけれど、終盤、オチが示されてからのラッシュ氏の演技に胸が痛い。『シャイン』『英国王のスピーチ』『バルボッサ』と数ある名演の中でもさらに秀逸。
 他にも、さすがのサザーランド氏も、下の<ネタバレ>に書いたように神レベル。
 と、役者の力で魅せる映画ですが、予告を見てもわかる通り、映像美・音楽で作り出す世界観にも酔いしれます。美術品を扱っているんだから当たり前と言われるかもしれないけれど、屋敷のインテリアが凝りに凝っている。そのくせヴィラは見事な屋敷なんだけれど、庭とかがただの草地で掘っ立て小屋みたい。あれほど、精巧な機械類に囲まれていたのに、出来上がったオートマタの醜いこと。すべてが、監督の想いを物語っているようです。

邦題は、なんのこっちゃと興味を抱かせるにはいいのかもしれないが、原題・英語題の方が含蓄あります。

予告に「結末を知ると、物語の構図は一転する」とありますが、結末を知ってから見直すと、登場人物の言動への理解が幾通りにも広がり、サスペンス以外の映画にも見えてきます。

鑑賞者の価値観・人生観によって評価が変わる。
 ある意味、ヴァージルの成長譚にも見え、ビターなハッピーエンド。
 同時に、人生の悲哀を見る痛切なるバッドエンド。
 ある人に目線を移せば、複雑な心情の中での復讐劇。

 オートマター肖像画ー顔を見せない依頼人…そして主人公の職業・世間的評価。
 真贋とは何なのか。価値とは何なのか。
 人生とは何なのか。成りたいものー成れるものー今の自分。
 自分を取り巻く人々との関係。あの時、ちょっと彼らと話をしていれば…。己への過信。無意識の侮蔑。
 心の中がぐるぐる回る。ラストのオールドマンが心の中から消えない。

★   ★   ★

<以下ネタバレ>

★  ★  ★

 セキュリティを盗んだのは女だけれど、筋書きを描いたのはあの機械工、でもって裏で糸ひいていたのはビリー。
 でなければ、女の母とされている女性の絵の作者がビリーであるはずないし、
 オートマタがあそこに残されているわけがない。

「愛すら偽れる(思い出し引用)」
 ビリーを演じたサザーランド氏が、これまた神。偽りの関係の中に、ヴァージルに向けた本当の気持ちをにじませ、腐れ縁的な”仲間”としてのいつもと変りないやり取りの中に、”虚”を醸し出す。
 この大仕掛けを成功させるべく仕組んでいるのに、いろいろなところで「気づけ」とばかりのサインを散りばめる。それもオチを知った後に鑑賞しなおすと「ああ」と気づく感じ。この怪演があるからこそ、この映画に深みが出る。
 ロバートが、あとで見返すとただの詐欺師にしか見えない(友達の振りして裏切る)のと好対照。
 この対照も狙っての演出なんだろう。

 ビリーの絵をもっとちゃんと見ていれば、あの絵の作者がビリーだってわかって、なんかおかしいぞって気が付いたのに。
 あの屋敷のことを、あそこにたむろしていた人に聞いていれば、なんかおかしいぞって気づいたのに。
 心づくしのケーキすら袖にする、秘書が結婚しているかも知らない、他人にはまったく興味を示さない男が、人間性を取り戻した物語かと思っていると…。
 なんであんな情緒不安定女に、あんなに翻弄されるのかと不思議だったけれど、やっぱり…。脚本のご都合主義にも見えるけれど、オールドマンの女の好みを知り尽くしているビリーが組んでいるのならね、と(ちょっと無理やり)納得。
 「あなたなら高く売ってくれる…」オークションに出される品物に対する評価が上がることだと思っていた。TVの何でも鑑定団の方々に鑑定していただくと箔がつくように。本当の落札主が代理人を雇って落札することはあるらしいから、オールドマンの代わりにビリーが落札するのはありなんだろう。けれども、主催者が代理人を雇っているのがばれたら、落札価格を不当に引き上げる行為とみられてしまう。実際に法に触れるのかはわからないけれど、信用はがた落ちだろう。だから、この言葉でも引っかかっていいはずだけれども、”箔がつく”の方と思ったんだろう。
 私は気が付かなかったけれど、真贋評価を胡麻化して、秘密の小部屋の絵画たちを不当に安く手に入れていることをほのめかすシーンを指摘する方もいる。
 ヴィラの物を勝手に持ち出すのだって”窃盗”だし。
 警察に届けなかったのは…。いろいろな推測ができるし、そのすべてが絡んでいるのだろう。

ビリーを踏みつけにした代償。
 ビリーの恨みに対して、やったことがひどいというレビューも見受けられるが、ビリーにしたら、ヴァージルに人生をつぶされたようなもの。”画家”としての生涯をつぶされ、「共犯」でさえない=単なる作業員としてしかの価値しかないとされ…。機械工にはプライベートを相談するのに、長年組んだビリーには相談しない。人としてすら認めてもらえていない。ならばと、同じように人生かけたものを奪い取り、自分の”共犯”の証を、本来の価値を認める人々の手に渡してなかったことにしようとしたのか。
 オートマタの真贋も、思い上がりへのおちょくり?
 とビリーの立場に立てば、これまでヴァージルが周りにまき散らした人害の代償なのだけれど、生い立ちから人と心を通わすことができない男が、人と心を交わすことができたと思った瞬間と思うとやるせない。恋をした相手だけでなく、プライベートを話した友人みたいな機械工にすら裏切られる。
 ラッシュ氏の演技にズドーンと胸を締め付けられてしまう。

唯一の救いが、執事。自分の仕事を着々とこなすことに誇りを持っていらっしゃるのだろうか。
そして、プラハでの思い出のお店が実在していたこと。否、本当に実在していたのか?オートマタに似たあの変な店。
印象的なラストです。永遠にあの時にとらわれるんだろうな。

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共感した! 4件)
とみいじょん
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