鑑定士と顔のない依頼人のレビュー・感想・評価
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予想外だった
皮肉のつもりなら
もっと捻って欲しいし、どんでん返しのつもりならもう少しなるほどーそう来たかーと思わせて欲しい。
目利きの鑑定士バージルが、古い屋敷にある骨董品の処分を依頼される。
ただ依頼主はなかなか目の前に現れず、電話でのみやり取りを進めていく。
依頼人の女性クレアは時に激昂し、また時には弱々しく激昂した時のやり取りを謝ったりと掴みどころのなさに翻弄されるバージル。
やがてクレアが対人恐怖症でずっと屋敷の一室に閉じこもった生活を何年も続けていることを知る。
そこから、少しずつバージルに心を開き始める。
バージルはバージルで、レストランでの食事の時でさえ手袋を外さない偏執的な潔癖だったりとちょっと人とは違う一面を持っていることで、老人と言っていいバージルとまだ若いクレアの歳の差カップルは少しずつ距離を縮めていくのだが。
これをネタバレなしでレビューするのはかなり難しいかなーと思いつつトライ。
終盤の一発の仕掛けのためにずーっと終盤まで引っ張って、はいドーンと来るわけだけど、正直なるほどーとはならず、あれが伏線やったかーとかここに仕掛けがあったなーなど振り返って納得できる感じは期待しない方がいい。種明かし的なプロットも特に無し。
その後のバージルもただただ右往左往。
バージルを演じたバルボッサはさすがの演技でシャキッとしたオークショニアから目利きの鑑定士、童貞拗らせおじいちゃんまで幅広く納得の演技。
ヒロインのクレアも綺麗で可愛い、しかもどこか狂気を孕んだ雰囲気がよく出ていてピッタリだった。
最初に彼女が姿を現した時の、いやめっちゃ綺麗やん!は前半のハイライト。
映像や音楽もいちいちオシャレで流石のイタリア映画感。少し暗めのトーンの風景が物語にマッチしていた。
それだけにこの終盤は一体何を言いたかったのかなーと悩んだ。イマイチテーマが掴めないまま、まさかこれで終わりじゃないだろうなーとハラハラしているうちに心の落ち着き場所を失ったまま終劇。
それならその先に何があったのか?とか別の視点から見ると?とか何かしらのインスピレーションを働かせるヒントが欲しかったかな。
いきなり背負い投げで投げ飛ばされて、痛ーと思いながら起き上がったらもう誰もおらんかったような終わり方だった。
いい勉強させてもらうトホホ映画
女を避け仕事一辺倒な人生を生きてきた初老の美術鑑定士(ジェフリー=ラッシュ)が、いい勉強させてもらうトホホ映画。
主人公が宙ぶらりんなまま放り出されて終劇したのが監督の狙い通りならば、「完璧な仕事人よりも、恋に翻弄されボロボロになる人生を生きた方が、人間らしい」という主張にも解釈できる。
いともたやすく偽装される愛情/友情に翻弄されるのが人生の苦さ、
機械人形(作り物の人間像)に真実を幻視しちゃうのが人生の情けなさ。
えーそーですとも(泣)
騙され裏切られながらも、伴侶を待ち続ける。C'est la vie。
ンッン~、オトナなテイスト♪
ただ、結末の裏切りがエゲツナすぎて・・・(^^;)映画らしい救いが少しばかり欲しいところ。
限りなく高い美意識で実装された絵作り、役者さんたちの迫真の演技、話運びの巧みさにため息が出る。
名俳優ジェフリー=ラッシュは言わずもがな、
主人公を声色だけで翻弄するシルヴィア=フークスのパフォーマンスは鳥肌モノ。
(仕事モード/不安/癇癪/相愛)
半面、2時間は長く感じる(^^;)。
観客にミステリ物かと誤読させておいて、正体不明の依頼人がさっさと姿を現してしまう展開があまり効果的でない。
ヒロインが主人公の気を引く手法が、キレる→謝る→キレる→謝るの一辺倒でちょっと芸がないかな。
そんな安易な振り回しに没頭し、仕事をおろそかにしてゆく主人公の「魅力」が削がれていくのは大きなマイナス。ユーモアを忘れず、でも仕事は敏腕、というところが素敵だったのに終盤ただのくっちゃくちゃなおじんになり果てる(^^;)。
組み上がっていく機械人形が「寓意」としてのみ意味を成し、ストーリー上の必然性を失っていくのも、なんか設定を活かし切れてなくて残念。
ミステリー好きはぜひ観て
美術品の天才鑑定士・ヴァージルの下に両親が遺した美術品を鑑定してもらい、売りたいと依頼が入る。
奇妙なことに依頼人は何かと理由をつけて、対面の約束をすっぽかし、一向に顔を見せない。
次第に明らかになる依頼人の素性、その奇妙な状況に堅物・短気なヴァージルの心も少し揺れ動く。
結末までの持っていき方が巧妙で、こんなオチかな?いやこうかな?と考えながら最後まで楽しめて観れた。
ちょっとその仕打ちは酷くない?と思わなくもないが、因果応報と言うべきなのか…
観る人によってヴァージルにどんな感情を抱くか変わるだろうから、
そこもこの映画のだいご味。
私はラストのシーンがほんのり切なくて、少し肩入れしたくなった。
映画本筋とは別に、『ニュー・シネマ・パラダイス』のトルナトーレ監督作だったのね!ってことを観終わってから知る。
(観たいと思った映画はその瞬間から何も情報を入れなくなるタイプなので、よくあること)
音楽もモリコーネだし、なんだかトルナトーレ監督作を一気に観たい気持ちになった。
びっくり!
恋愛、ミステリー、最後はサスペンス
壮大な嘘に無理がある
始めから不思議な雰囲気がただよう。 美術鑑定士である独身で人間嫌い...
心優しき人にはお勧めしません
どんでん返しで有名な作品ですから、何かが起きる事は十分わかって鑑賞されると思いますが...
心が不安定な人、登場人物に感情が引っ張られ、長引く人にはお勧めしません。
私の中では最高のイヤミス、とタグをつけました。
ただ、ミステリーとしては面白い。
なので、この評価です。
これをただの胸糞映画と捉えるか否か
何が”贋”で、何が”本物”なのか?
偽物の中にも本当がというけれど…痛い。
愛を知らない寂しさと、愛を知ったからこそ味わう寂しさと、本人にとってはどちらが痛いのだろう。
予告を見て、贋作がらみのサスペンスなのかと思って鑑賞したら、かなりハードな、人間ドラマでした。
途中の筋が下に記したようにご都合主義的でちょっと唖然と・中だるみしたけれど、終盤、オチが示されてからのラッシュ氏の演技に胸が痛い。『シャイン』『英国王のスピーチ』『バルボッサ』と数ある名演の中でもさらに秀逸。
他にも、さすがのサザーランド氏も、下の<ネタバレ>に書いたように神レベル。
と、役者の力で魅せる映画ですが、予告を見てもわかる通り、映像美・音楽で作り出す世界観にも酔いしれます。美術品を扱っているんだから当たり前と言われるかもしれないけれど、屋敷のインテリアが凝りに凝っている。そのくせヴィラは見事な屋敷なんだけれど、庭とかがただの草地で掘っ立て小屋みたい。あれほど、精巧な機械類に囲まれていたのに、出来上がったオートマタの醜いこと。すべてが、監督の想いを物語っているようです。
邦題は、なんのこっちゃと興味を抱かせるにはいいのかもしれないが、原題・英語題の方が含蓄あります。
予告に「結末を知ると、物語の構図は一転する」とありますが、結末を知ってから見直すと、登場人物の言動への理解が幾通りにも広がり、サスペンス以外の映画にも見えてきます。
鑑賞者の価値観・人生観によって評価が変わる。
ある意味、ヴァージルの成長譚にも見え、ビターなハッピーエンド。
同時に、人生の悲哀を見る痛切なるバッドエンド。
ある人に目線を移せば、複雑な心情の中での復讐劇。
オートマター肖像画ー顔を見せない依頼人…そして主人公の職業・世間的評価。
真贋とは何なのか。価値とは何なのか。
人生とは何なのか。成りたいものー成れるものー今の自分。
自分を取り巻く人々との関係。あの時、ちょっと彼らと話をしていれば…。己への過信。無意識の侮蔑。
心の中がぐるぐる回る。ラストのオールドマンが心の中から消えない。
★ ★ ★
<以下ネタバレ>
★ ★ ★
セキュリティを盗んだのは女だけれど、筋書きを描いたのはあの機械工、でもって裏で糸ひいていたのはビリー。
でなければ、女の母とされている女性の絵の作者がビリーであるはずないし、
オートマタがあそこに残されているわけがない。
「愛すら偽れる(思い出し引用)」
ビリーを演じたサザーランド氏が、これまた神。偽りの関係の中に、ヴァージルに向けた本当の気持ちをにじませ、腐れ縁的な”仲間”としてのいつもと変りないやり取りの中に、”虚”を醸し出す。
この大仕掛けを成功させるべく仕組んでいるのに、いろいろなところで「気づけ」とばかりのサインを散りばめる。それもオチを知った後に鑑賞しなおすと「ああ」と気づく感じ。この怪演があるからこそ、この映画に深みが出る。
ロバートが、あとで見返すとただの詐欺師にしか見えない(友達の振りして裏切る)のと好対照。
この対照も狙っての演出なんだろう。
ビリーの絵をもっとちゃんと見ていれば、あの絵の作者がビリーだってわかって、なんかおかしいぞって気が付いたのに。
あの屋敷のことを、あそこにたむろしていた人に聞いていれば、なんかおかしいぞって気づいたのに。
心づくしのケーキすら袖にする、秘書が結婚しているかも知らない、他人にはまったく興味を示さない男が、人間性を取り戻した物語かと思っていると…。
なんであんな情緒不安定女に、あんなに翻弄されるのかと不思議だったけれど、やっぱり…。脚本のご都合主義にも見えるけれど、オールドマンの女の好みを知り尽くしているビリーが組んでいるのならね、と(ちょっと無理やり)納得。
「あなたなら高く売ってくれる…」オークションに出される品物に対する評価が上がることだと思っていた。TVの何でも鑑定団の方々に鑑定していただくと箔がつくように。本当の落札主が代理人を雇って落札することはあるらしいから、オールドマンの代わりにビリーが落札するのはありなんだろう。けれども、主催者が代理人を雇っているのがばれたら、落札価格を不当に引き上げる行為とみられてしまう。実際に法に触れるのかはわからないけれど、信用はがた落ちだろう。だから、この言葉でも引っかかっていいはずだけれども、”箔がつく”の方と思ったんだろう。
私は気が付かなかったけれど、真贋評価を胡麻化して、秘密の小部屋の絵画たちを不当に安く手に入れていることをほのめかすシーンを指摘する方もいる。
ヴィラの物を勝手に持ち出すのだって”窃盗”だし。
警察に届けなかったのは…。いろいろな推測ができるし、そのすべてが絡んでいるのだろう。
ビリーを踏みつけにした代償。
ビリーの恨みに対して、やったことがひどいというレビューも見受けられるが、ビリーにしたら、ヴァージルに人生をつぶされたようなもの。”画家”としての生涯をつぶされ、「共犯」でさえない=単なる作業員としてしかの価値しかないとされ…。機械工にはプライベートを相談するのに、長年組んだビリーには相談しない。人としてすら認めてもらえていない。ならばと、同じように人生かけたものを奪い取り、自分の”共犯”の証を、本来の価値を認める人々の手に渡してなかったことにしようとしたのか。
オートマタの真贋も、思い上がりへのおちょくり?
とビリーの立場に立てば、これまでヴァージルが周りにまき散らした人害の代償なのだけれど、生い立ちから人と心を通わすことができない男が、人と心を交わすことができたと思った瞬間と思うとやるせない。恋をした相手だけでなく、プライベートを話した友人みたいな機械工にすら裏切られる。
ラッシュ氏の演技にズドーンと胸を締め付けられてしまう。
唯一の救いが、執事。自分の仕事を着々とこなすことに誇りを持っていらっしゃるのだろうか。
そして、プラハでの思い出のお店が実在していたこと。否、本当に実在していたのか?オートマタに似たあの変な店。
印象的なラストです。永遠にあの時にとらわれるんだろうな。
美意識に反する❗
予想外の展開
最後言葉が出なくなる
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