「いい勉強させてもらうトホホ映画」鑑定士と顔のない依頼人 雨丘もびりさんの映画レビュー(感想・評価)
いい勉強させてもらうトホホ映画
女を避け仕事一辺倒な人生を生きてきた初老の美術鑑定士(ジェフリー=ラッシュ)が、いい勉強させてもらうトホホ映画。
主人公が宙ぶらりんなまま放り出されて終劇したのが監督の狙い通りならば、「完璧な仕事人よりも、恋に翻弄されボロボロになる人生を生きた方が、人間らしい」という主張にも解釈できる。
いともたやすく偽装される愛情/友情に翻弄されるのが人生の苦さ、
機械人形(作り物の人間像)に真実を幻視しちゃうのが人生の情けなさ。
えーそーですとも(泣)
騙され裏切られながらも、伴侶を待ち続ける。C'est la vie。
ンッン~、オトナなテイスト♪
ただ、結末の裏切りがエゲツナすぎて・・・(^^;)映画らしい救いが少しばかり欲しいところ。
限りなく高い美意識で実装された絵作り、役者さんたちの迫真の演技、話運びの巧みさにため息が出る。
名俳優ジェフリー=ラッシュは言わずもがな、
主人公を声色だけで翻弄するシルヴィア=フークスのパフォーマンスは鳥肌モノ。
(仕事モード/不安/癇癪/相愛)
半面、2時間は長く感じる(^^;)。
観客にミステリ物かと誤読させておいて、正体不明の依頼人がさっさと姿を現してしまう展開があまり効果的でない。
ヒロインが主人公の気を引く手法が、キレる→謝る→キレる→謝るの一辺倒でちょっと芸がないかな。
そんな安易な振り回しに没頭し、仕事をおろそかにしてゆく主人公の「魅力」が削がれていくのは大きなマイナス。ユーモアを忘れず、でも仕事は敏腕、というところが素敵だったのに終盤ただのくっちゃくちゃなおじんになり果てる(^^;)。
組み上がっていく機械人形が「寓意」としてのみ意味を成し、ストーリー上の必然性を失っていくのも、なんか設定を活かし切れてなくて残念。