「周到な男が見せる心の隙間。そこにつけ入る女。」鑑定士と顔のない依頼人 林檎さんの映画レビュー(感想・評価)
周到な男が見せる心の隙間。そこにつけ入る女。
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メンヘラ女と3次元女に免疫のないおじいさんが繰り広げる恋愛物語。
かと思いきや全然違う話だった。
とにかく美術品を盗むために持っていくためのフリが壮大、、、ではないか。恋愛なので身近な話ではあるんだけど、そこに一般的にはあまり理解できない広場恐怖症の女を主人公のバージルが好きになり、はじめは好奇心からだったのかもしれないが、どんどん彼女を理解して(まぁ錯覚だった訳だけど)深みにハマっていく様がとても面白い。
それはただただ、落ちていくことになっていたのだが。。。
まずラストに持っていくためのフリとなる恋愛が飽きさせない。メンヘラ女の、いやこんなことを言うと怒られそうだけど、Yesと言ったかと思うとNo、Noと言ったかと思うとYesなやり取りに免疫のない男は翻弄され、虜になっていく様、過程が見ていて飽きない。
そこからの盗み。
メンヘラ女クレア、機械屋ロバート、美術品収集共犯者ビリー、と、全ての役者がひっぱる物語にすっぽりと収まってしまう主人公バージル。
潔癖で偏屈、人の心をどこかに忘れたんじゃないかと思うようなバージルが一人の女を愛することで人の心を取り戻したかのように思えた矢先の出来事に、可哀想と言うよりも先に爽快感さえ感じてしまった。
スカッと騙されたあとも、まだ女の言葉を信じて店で待つラストなんかは哀愁を通り越して、悲壮感、いや虚しさ、そんなものを感じずにはいられない。
ま、そこが面白いところでもあるのだが。
そもそも、このバージル、そんなに「良い人」ではないので、そんな姿を見させられても楽しんで見られるのかもしれない。
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