「トルナトーレ監督作品でなければ。。」鑑定士と顔のない依頼人 チャップさんの映画レビュー(感想・評価)
トルナトーレ監督作品でなければ。。
トルナトーレ監督ということで過度の期待をしていまったか。 それに「ニュー・シネマ・パラダイス」を生涯最高の映画と思っている私としては、ハートウォーミングなストーリーを期待していたので、がっかり。。
ただ監督でない方の映画で、単にミステリー作品として観たとして。。
最後のオチが分からない序盤では、何とも違和感のあるストーリー展開で感情移入ができないまま進んでいく。
何年も外に出たことがない人の対応、つまり突然主人公の前に現れたり、それからトントン拍子に話しが進み、恋愛感情まで展開することがどうみてもおかしい。 それで最後主人公の秘密の部屋に招待されて、喜んで抱きつく。。う~ん。
外に出られない人、常日頃グローブをして物・人に触れる嫌悪感を持っている、女性の肖像画をコレクションして一人で秘密の部屋でそれらに囲まれながらくつろぐ人、どっちも普通の人の感性では理解できない、何かがあるでしょう?って思ってしまう。
その深堀のほうが、よっぽどストーリーの深みが期待できた気がする。
だからそんな人生を歩んできた人物なら、仕草、表情、立ち振る舞いがもっと違うドロドロした根深いものがあるんじゃないかと思って止まなかったので、終始モヤモヤした気持ちで観ていました。
ただ最後クレアが全てを打ち明かしたシーンでは、そんなモヤモヤが一気に吹き飛び爽快でした。 ネタの仕込み方といい、タイミングといい、余計な説明がないスピード感といい、申し分なし。 その後、騙した彼らがどうなったのか?ビリーはどう絡んでたのか?なんてことはあれど、まあそれらはよいとして、ラストシーンの意味深な一言も含め、観たあと考えさせられる映画ってことで、自分としては全て許容内。 いいんじゃないかと。
それに映画全体の雰囲気は良かったです。 映像美、カメラワーク、絶妙な間、少量のユーモアも。 そして当然ながら音楽も、監督ならではの映画作りの拘りがあり、満足のいくものでした。