「こんな魅力的なコミニケーションを私は体験したことがない。」ビフォア・ミッドナイト たがやすさんの映画レビュー(感想・評価)
こんな魅力的なコミニケーションを私は体験したことがない。
長いタイトルですが、下記の内容と繋がりはありません。すごく個人的な願望ですので、流してください(。-_-。)
この映画は1995年の「ビフォア・サンライズ 恋人までの距離」から2004年の「ビフォア・サンセット」、そして今回の「ビフォア・ミッドナイト」という9年ごとに製作されてきた恋物語である。
このタイトルの日本語訳が、『ビフォア』というのは『前』、『サンライズ』が『日の出』、『サンセット』は『日没』、そして『ミッドナイト』が『午前0時の真夜中』という意味だと思われる。
今回鑑賞した「ビフォア・ミッドナイト」を簡単に説明すると、1995年の「恋人までの距離」で出会った20代のアメリカ人男性ジェシーとフランス人女性セリーヌの二人はウィーンの町で一日過ごすことになる。そして2004年「ビフォア・サンライズ」で9年後に再会を果たすが、セリーヌは彼氏を、ジェシーは妻と4歳の子供がいるのだ。あの時のウィーンの一日の恋は夢に消えていくのか。そして今作、2013年の「ビフォア・ミッドナイト」ではジェシーとセリーヌの間に生まれた双子の娘を持ち、結婚していたジェシーの妻とは離婚していたのだ。
物語はジェシーとセリーヌと双子の娘が、ギリシャにある作家の友人の家に招かれて休暇の間そこでバカンスを楽しんでいる所から始まる。
という感じで、やっぱり前回と同じく今作もこのジェシーとセリーヌのコンビが本当の会話のようによく喋るよく喋る、その会話が都合よく進むわけでもなく、キャラクターの互いの心境を計算しつつ微妙にズレている。理解があるように見えるけど、ジェシーは本音の部分である亀裂をえぐらない。セリーヌは本音を聞きだそうとするが、ジェシーはこれを言ってしまうと相手を怒らせてしまう、と何とか本題から避けていく。この長年連れ添った夫婦の会話のリアリティーがこの映画の核になっている。
例えば2人がホテルに向かう途中でセリーヌが「この先56年も一緒なら、私の何を変えたい?」と聞く場面でジェシーは「俺の性格を変えようとするところ」と言う。ユーモアがあり、かつ本音を語っているのだ。
他にも、会話の中でジェシーは娘のりんごを食べて、「これは家族の助け合いを教えているのだ」と屁理屈を言ったり、ヘリウムガスを吸ったものまねをしてセリーヌを茶化したりと、41歳になってもどこか子供っぽさがぬけていないところがある。そしてセリーヌは馬鹿なシモネタを言ったり、馬鹿なフリをしてみんなを笑わせたりする。心の奥底に自分の賢い部分を隠してしまっているように見えるのだ。
しかしこれは互いが真面目な話し合いをすると、どうしても険悪な空気になってしまうからだと、長年の互いの経験で知ったからではないか。ジェシーは元妻との息子が14歳という複雑な年齢だからそばについててあげたいと思っている。しかし元妻とは裁判で戦っている途中のために、セリーヌと住んでいるパリに連れて行くことはできない。どうすればいいのかセリーヌに聞いてみると、「私はアメリカにはいかないわ」とセリーヌがパリから出ることを大反対する。それに対してジェシーは「アメリカに来てくれとは言っていない」と言う。その口論が始まると互いは本音で語り合い、自分の望みを打ち明けあい、その先には破局のにおいが漂っている。
ここで他の映画の話をして申し訳ないが、キューブリックの映画に「アイズ ワイド シャット」というタイトルの恋愛映画がある。このタイトルは「Keep your eyes wide open before marriage, half shut afterwards.」というアメリカの格言のもじりで、意味は「 結婚する前は目を大きく開けて彼(彼女)を見なさい、だけど結婚した後ならば目を半分閉じて彼(彼女)をみるのよ 」という。
私の解釈になりますが、この「ビフォア・ミッドナイト」の二人が愛を継続させるためには相手を変えようとするのではなく、時には間違っていても自分がどうあるべきかということだと思いました。
しかし、疑問に思うのが二人があまり双子の娘を愛していないように見える点ですかね、セリーヌは子供が生まれたとき「唖然としてしまったの」って言うし、ジェシーはベットシーンで「娘のことなんて心配じゃないよ」って言う。子供の存在ってこんなにも夫婦を苦しめるのかと思うと複雑。だけど夫婦の仲がよいことは子供たちが何より望むことだと考えると、親が子供を愛する場面よりジェシーとセリーヌが真実の愛を模索する場面のほうが重要なのかもしれない。
他にもみんなで食事をしながらの魅力的な会話についても書きたいですが長くなるので最後に、前作ではノミネートだったけど、今作のアカデミー脚本賞では受賞して欲しいと思います。
今回、一度見て書いた感想のため、登場人物のセリフが間違っていたり、変な解釈をしている事があります。その点についてはご了承くださいませ。