ブロークンシティ : 映画評論・批評
2013年10月15日更新
2013年10月19日より新宿バルト9ほかにてロードショー
ストーリーの枝葉が生気を放つ、2大スター競演の犯罪ドラマ
惚れてしまったのが、私立探偵ビリー・タガート(マーク・ウォールバーグ)の秘書の女性ケイティ・ブラッドショー(アロナ・タル)である。調査、決断力、ともに優れ、クール・ビューティ。側にいてくれると仕事がスムーズに進み、ありがたい、と誰もが思うだろう。というか、思ってしまいました。フィルム・ノワール(私立探偵系)の探偵+秘書とみえて、情報収集力では、時に主人公を凌駕する活躍を見せたりして頼もしく好ましい。
警官であったウォールバーグが取り立て屋まがいの私立探偵に身を落とさざるをえなかったのは、7年前のある事件=少女レイプ事件容疑者の射殺によってである。裁判で勝利するも辞職するように無理強いしたのは、ニューヨーク市長ニコラス・ホステラー(ラッセル・クロウ)であった。それが因縁の始まりである。
対立候補=ジャック・バリアント(バリー・ペッパー)との激しい選挙戦に突入、再選を狙うクロウはウォールバーグに依頼する。自分の妻キャサリン(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)がどうも浮気しているようだ、相手が誰か探ってくれ……。ここからは先のみえない怒濤の展開に映画は踏み込むわけだが、市長選にまつわるアレコレ(再開発問題他)という既視感に満ちたドラマ展開がそれでも飽きさせないのは、ウォールバーグと恋人の女優志願ナタリー・バレア(ナタリー・マルティネス)の関係、彼女の映画「キス・オブ・ライフ」、同性愛などなど、ストーリーの枝葉がそれぞれに生気を放つためである。そしてラスト、ウォールバーグ、クロウ双方が<切り札>を同時に切るという脚本(ブライアン・タッカー)の妙味!
監督は「フロム・ヘル」「ザ・ウォーカー」を手がけたヒューズ兄弟の弟アレン・ヒューズである。
(滝本誠)