「人生はいつも夢舞台」ホーリー・モーターズ ロロ・トマシさんの映画レビュー(感想・評価)
人生はいつも夢舞台
観る側、観せられる側、舞台を用意する側、用意される側、お互いが相互に了承済み了解済みの元に行われるタイプの『トゥルーマン・ショー』といった趣ですね。
あらゆるタイプの役柄を数件クライアントから要求され、それを即興で演じ切ってしまう男の奇妙な一日に密着、的な映画です。まあ仮想密着ドキュメンタリーですね。
ていうかぶっちゃけ犯罪ですよね、これ。
彼の演じる役柄の本気加減というかその没入度がハンパないので怪我人続出するし死人も普通に出るという。
ここら辺の急激な展開見せられて、もうなんというか、演劇ごっこやお遊戯レベルの世界ではないんだなっていう事実をこっちは突き付けられる訳です。
そのリアル度が狂気の側面を孕みだすんですよ。というか狂気の側面しか孕まないというね。
ああこれガチンコ演技なんだって。デ・ニーロアプローチどころじゃないっていう。人殺しとる訳だからね。
そっちへ一旦物語が転がり出すと、序盤の眠たい展開からこっちも本腰入れて観ざるを得なくなるという。
でね、そんなことやってれば自分だってナイフで刺されるしピストルで蜂の巣にされる訳ですよ、主人公だって。そんなもんね。そうなります。自分だけ無敵状態は有り得ない。
すると、何故か瀕死の状態でセーブポイントに戻るとリセットされて体が元に戻っちゃってて、あれ?これファンタジーじゃん。ファンタジーだったのかよ?というリアル演技と肉体復活のダブルショック。
そんでいよいよ物語の訳が分からなくなる。
で、この手の映画ってポーンと観客を放り投げる構造ってお決まりのセオリーじゃないですか。カラックスだし。
だもんで、その役を演じて誰が得するのか、何故に彼がその仕事にここまでのめり込んでいるのか、等の詳しいことは一切語られません。片鱗は出るけど推測の域を出ないというか。
まあ本当よく分からん映画でした。面白かったですけど。
人生はいつも夢舞台ってことで。
ラストの蛇足感がなければもっと評価高かったんだけどなあ。。。