タイピスト!のレビュー・感想・評価
全82件中、81~82件目を表示
当時の民俗、風俗を上手に描いたと言ったら言い過ぎ?
フランス映画祭2013の最高賞の観客賞を受賞。
舞台は1950年代のフランス。戦後と言う時代背景が上手く描かれています。先ず出て来るのは、当然、先の大戦の話。ルイがレジスタンスだったとか、ボブがアメリカの空挺隊員で、降下した先でマリー(ベレニス・ベジョ)に出会って結婚したとか。そりゃそうだよね。まだ10年くらいしか経っていないんだから。また、車のシーンが当然有るんですが、一台だけではなく、街ナカを走る車群のシーンも実現。よくあんな昔の車を集めたよなぁと思います。
さて、そんな当時の女性憧れの職業は秘書。これも、1950年代という時代を表していますね。まだまだ女性の社会進出の途上で、女性が就くことが出来る職業といえば、秘書位だったということを示しているんだと思います。それと合わせて興味深いのが、ローズの最初の下宿の女主人?寮監?寮母?の「真面目な(娘さん)」と言う言葉。まだまだ時代的には、女性に貞淑さとか、お淑やかさとかと求める時代で、(フランスですら)それが変では無かったということなんでしょう。
それと対比できるのが、ローズがルイの家族たちの前に“婚約者”として連れだされてきた時に、思わずルイの父親に対してローズが楯突くような事を言ってしまったこと。これは、上記の“真面目な”とか“貞淑さ”とか“お淑やかさ”とは、対極にあるような態度だし、行動。でもそれが、その後の時代にウーマン・リブやフェミニズムが巻き起こることを暗示すると言ってしまうと、言い過ぎでしょうか?あ、それと、この物語では、ローズの特訓のためではありますが、ルイが家事をしていることも、その後のダイバーシティを暗示しますよね。
ところで、この作品。タバコを吸う場面が、沢山出てきます。ジブリアニメに物言いを付けた某学会に言わせると、この映画は、どうなんでしょうかね?
とか何とか、時代背景がどうだとかこうだとか小難しいことを言ってしまいましたが、この1950年代の秘書たちの憧れの一つのタイプライター早打ち大会描いたのがこの作品なんですが、作中とはいえ、盛り上がりが凄いし、心理戦なんかもあって、まさに競技。中々興味深いですね。日本で言うと、そろばん大会みたいなものでしょうか?
しかし何と言っても、この作品は、デボラ・フランソワに尽きますね。フランスの片田舎から出てきたドジで間抜けな(いや、パクってないですよ)娘を非常に上手く演じています。ちなみに、デボラはローズを演じる為に、一日2~3時間ほどの訓練を3ヶ月ほど続けたそうです。
そのローズの雇い主で、タイプライター早打ち大会に向けて特訓する鬼コーチのルイ・エシャールを演じるのは、ロマン・デュリス。自分の心を隠して(って言うか、隠れてないけど)ローズに向かう様を上手く演じています。
不器用な男女の恋物語・・・ですかね。フランスの男も、チャラ男だけではないという事ですかね。
オチの見えるラブコメだけど、ファッションを見るだけでも見る価値はありそうな作品
フランス映画で以前大ヒットした『オーケストラ』と同じチームが取り組んだ作品だけに随所にコミカルなクスクスと笑いを催すシーンが満載で肩が凝らすことなく鑑賞できました。典型的なラブコメです。あり得ない出会いから、反発し合いながらも次第に恋仲となるけど、途中に喧嘩別れとなりながら、最後はハッピーエンドという王道をとっており、期待を裏切りません。そういう点では、この作品のラブストリーは始まってから、ラストの予想はだいたい想像がつくというものです。でも本作の楽しみ方は、そういう筋の奇抜さにあるのではありません。おとぎ話のようなファンタジックな恋物語ほど、我を忘れて感情移入してしまったりするものです。『ローマの休日』のように世知辛い現実を忘れるくらいの夢物語があっていいではありませんか。
ボッと出の田舎娘が都会に出きて就職し、そのボスとなる男が、超ハンサム。さらにはタイプライターの特訓を命じられて、いきなりそのボスの家で同居始まるなんて、本当に夢のようなお話しです。しかも親の遺産を受け継いだボスは、豪邸に住み、年代物のワインを飲み干すリッチな暮らしぶりときたら、世の中の女子は、すべからずうっとりすること必定の設定ではありませぬか。
それだけではないのですよ。フランス映画らしく、画面がとてもカラフルで、1950年代を感じさせるレトロな色調。そして主人公のローズが着るフリルのついたワンピースはどれも可愛くて、今でも流行りそうなオシャレなものときたら、無視できなくなるのではないでしょうか。ファッションを見るだけでも見る価値はありそうな作品でした。(試写会でも50年代のファッションショーが開催され、モデルにダレノガレ明美やKABA.ちゃんが登場しました。)
純粋に映画として評価した場合は、筋書きがちょっと強引。ローズを不採用としたのにも関わらず、上司ルイは一方的にタイプライター大会への出場を決めてしまうのですね。もちろんローズの才能を見抜いたとか、親友と大会への出場の結果予想で掛け金を張り合ったとか伏線は用意してありますけど、どうしても始めにタイプライター大会ありきという匂いがプンプンしました(^^ゞ
それに続く二人の微妙な同居生活。自分はタイプライター大会コーチ役だからと勝手に決め込んで、セクシーなローズに絶対手をつけないというルイの態度は、コミカルで可笑しいけれど、やはり男として不自然!反発しながらも、ツンデレよろしくルイに恋しているのがバレバレになってゆくローズが可哀想に思えるくらいストイックなんです。
ただ途中で、深紅のドレスを纏ったローズがルイの寝室にやってきたとき、「例外的対応」になってしまったのは多いに納得。何しろ、大きく胸をはだけたものすご~くセクシーな出立ちで、これにはルイもノックアウトされてしまったのです。
さて、それでやっとふたりの気持ちが通じたかと思いきや、タイプライター大会の国内大会で優勝した段階で、突然ルイはローズの元を去ってしまうのです。
かなり唐突な設定ですが、ルイにアメリカで開催される国際大会で優勝させるためには、自分が身を引いて集中させるしかないというルイの勝手な思い込みが、説明として語られてはいました。加えて、ルイの勝手な思い込みで別れてしまった昔の恋人のことも。ルイの恋人ととは、なんと今では親友の夫人に納まってしまっているひと。これも信じがたい設定ですが、その彼女とは当然しょっちゅう合うわけで、ある日ルイと昔話になって、にあなたという人は臆病な人間だとなじられるのですね。肝心な時に逃げてしまう人だと。そう言われると、なるほどローズと家族の前で婚約者だと紹介したのに、結婚が見えてきた段階で逃げてしまったのかなとも思えました。そのように、一応納得させるだけのエピソードは用意してあっても、何かが足りなくて筋書きの強引さが拭えないのです。
タイプライター競技についても同様の疑問を感じました。国内大会で優勝したローズは一躍アイドルに登り詰めるのですが、それほどにタイプライター競技というものが国民的な関心を集めるメジャーな競技だったのでしょうか。
まぁ、そういう突っ込みどころ満載ながらも、演出として優れているのは、単調なタイプライター競技を見事にショーアップして退屈せず見させてくれるところです。迫力すら感じさせてくれました。
面白いのは、タイプライター大会でしのぎを削り合う女の戦いぶりです。決勝戦は1対1の対面バトルになるのですが、闘志溢れる前年の優勝者は、ローズに向けて中指を立ててる“ファック・ユー”のボーズを見せ付けます。凄いライバル心です。こういうときの女の闘争心というのは、化けて出てきそうで、その怖さを窺い知ることができました(^^ゞ
主演のデボラ・フランソワは、とびきりキュートな笑顔と瞳のつぶらなさ、そしてコティッシュな男性の視線を惹き付ける力が凄いんです。あの強烈なオーラなら、モンローの再来とかランス版綾瀬はるかのようだと話題になるのも同然でしょうね。これからの活躍が楽しみです。
全82件中、81~82件目を表示