「命が虫けらの様に扱われるソ連軍による戦争の本質と、父娘の愛の美しさ・強さ」遥かなる勝利へ Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
命が虫けらの様に扱われるソ連軍による戦争の本質と、父娘の愛の美しさ・強さ
ニキータ・ミハルコフ監督による2011年製作のロシア映画。
主人公が娘を想う回想シーンのイエローがかった映像とノスタルジックな音楽がとても美しく心に響いた。ミハルコフ監督作品は初めてだが、凄さを感じた。
スターリンは主人公に囚人15000人を引き連れてのナチス要塞への銃器無しでの特攻を命じる。15000人玉砕というプロパガンダ、政治的目的の為に。事実関係は知らないものの、戦場から退却する兵士の銃殺隊に存在と共に、ソ連軍による戦争の本質を見せつけられた気がした。
ドイツ軍空爆の中、男たちばかりのトラックの上でレイブされた妊婦の出産シーンの迫力には圧倒された。年齢のいった男たちが出産を助け、臍の緒の切断シーンまである。あまりにリアルでどうやって撮影したのだろうか不思議。そして、生と死の鮮やかなコントラストを見事に映像で見せられ、ただただ感心。
中将に昇進した主人公が死んだと知らされていた妻が生きていることを知り、妻と親族達が暮らす自宅に戻るが、そこには何故か赤ん坊がいて(実は妻と主人公友人の子)、親族の誰も真実を語らずというシチュエーションが、何だか寅さん映画みたいに悲しいけど少し笑えるところもあり、興味深かった。
ミハルコフ監督による戦争ドラマ3部作のラスト作品。前2作を見ていないせいか、主人公とオレグ・メンシコクの関係性等、良く分からない部分が少なからずあった。何故、彼は手錠をかけた主人公を前にして泳ぐのか?そして、あの蚊、そして蝶々は何の象徴、死や神の使い?
最後、父を見つけ我を忘れた娘、その彼女救う主人公の強いおもいはやはり衝撃的。
製作はニキータ・ミハルコフ及びレオニド・ベレシュチャギン、脚本はニキータ・ミハルコフ、グレブ・パンフィーロフ、ルスタム・イブラギムベコフ、ヴラディミール・モイシエンコ、アレクサンドル・ノヴォトツキー、エドアルド・ヴォルダルスキー。撮影はウラジスラフ・オペリアンツ、音楽はエドゥアルド・アルテミエフ。
出演はニキータ・ミハルコフ、オレグ・メンシコフ、ナージャ・ミハルコフ、ヴィクトリア・トルストガノワ(妻役)、ウラジミール・イリン。