劇場公開日 2013年5月31日

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イノセント・ガーデン : 映画評論・批評

2013年5月22日更新

2013年5月31日よりTOHOシネマズシャンテ、新宿シネマカリテほかにてロードショー

宿命と意志がきわどくせめぎ合う、パク・チャヌクの揺るぎない世界

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“復讐3部作”や「渇き」を撮ったパク・チャヌクであれば、ハリウッドという不慣れな環境でも、自身の脚本ではないとしても健闘するだろうとは思っていたが、細部まで徹底的にこだわり抜いた揺るぎない世界を作り上げているのには驚かされた。もちろんパク監督の右腕ともいうべきチョン・ジョンフンが撮影監督を務めていることは大きいが、決してそれだけではない。

パク監督の作品では、独自の美学に貫かれた造形や暴力描写が際立つが、過去も同様に重要な位置を占めている。主人公が向き合う過去には冷酷な罠や秘密が隠され、そんな過去と現在のねじれが主人公の人生を大きく変えていく。新作も例外ではない。

この映画のプロローグで印象に残るのは、「花は自分の色を選べない」という言葉だ。18歳の誕生日を迎えるヒロインはまだ自分の色を知らないが、最初の誕生日からその答えに触れていたともいえる。彼女は毎年贈られるサドル・シューズを履いている。そして、18歳の誕生日には、クロコダイルのハイヒールが用意されている(この誕生日の贈り物はパク監督のアイデアだという)。

ヒロインを暗黙のうちに呪縛している靴は宿命を象徴しているが、彼女は贈り主が期待しているような「友達」にはならない。亡き父親に手ほどきを受けた狩猟の生々しい記憶は、彼女がどこかですでに覚醒していたことを示唆している。

映画のエピローグでは、プロローグに見られた花が別の色に染まる。ヒロインはただ色を受け入れるのではなく、選んでいるようにも見える。そんな宿命と意志がきわどくせめぎ合い、目眩すらもよおすところにパク・チャヌクならではの魅力がある。

大場正明

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