劇場公開日 2013年11月23日

「これは高畑監督の最高傑作だ!」かぐや姫の物語 CAMAさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0これは高畑監督の最高傑作だ!

2013年12月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

スタジオジブリの高畑勲監督が8年の歳月をかけて制作した「かぐや姫の物語」。14:50からの上映はほぼ満員。子供連れの姿も多かった。高畑監督といえば、僕のような古いアニメファンの中では、宮崎駿監督と並んで神のような人だが、最近の作品はどうも外してるなーと言うものが多かったのも事実。でも、僕にとっては、親子で初めて連れて行ってもらった映画が「アルプスの少女ハイジ」だったし(生まれて初めての映画を見ての号泣体験)、その後も「母を訪ねて三千里」とか(多分この作品が、僕にとってのアルゼンチンを意識させた初めての作品)、「未来少年コナン」(言わずもがなの、宮崎駿との名コンビ作品。アニメシリーズは何度見たことか)、さらには「じゃりん子チエ」など、高畑さんの作品に実は僕の人生は結構影響を受けている。しかし、ここのところ、どうも不発感が否めないので、今度の「かぐや姫」も少し不安はあった。本当は宮崎駿の「風立ちぬ」と同時上映という話だっただけに、単体作品としてどこまでいけるのか、しかも題材がそんな古典だし、どうなっちゃうのかなーという不安もあった。

しかし、そんなことはまったくの思い過ごしだった。神様はやっぱり神様だった。高畑さんはやっぱり高畑さんだった。それどころか、こんな作品を作ったら、もう高畑さんは死んじゃうんじゃないかと思うくらい、高畑さんの考える美学がいっぱいに詰め込まれた作品だった。このデジタル時代にあって、あんなアニメーションを作れる人はもう出ないだろう。その最後の作家こそ高畑勲という人だったと後で思われるだろう。僕は、宮崎さんの「風立ちぬ」以上に、この「かぐや姫」こそが、高畑さんの遺作のように思えてならなかった。それだけに、一瞬たりとも、その高畑さんの「魂」とでも言っていい絵を見逃してなるものかとスクリーンを見つめ続けた。奇しくも、この作品は、地井武男さんの遺作となってしまった作品でもある。地井さんの演技も本当にすばらしく、そのほかの声優(この作品の場合、俳優といったほうがいい)の演技も本当にすばらしかった。アニメという枠を超え、何か、生の芝居を見ているような迫真の演技。そこに、細かく緻密に描かれた(おそらく恐ろしいほどの手間がかかった)、筆描きのようなアニメーションが躍動する。なにかもうそれだけで、僕などは感無量になってしまって、この人は何というものを作ったのかとひたすら圧倒されっぱなしだった。ストーリー的に泣くことはなかったが、最後のエンドロールが流れてきて、実に多くのアニメーターがこの作品に関わっていたんだなーということを見るにつけ、胸にグッとこみ上げてくるものがあって、他の人と多分違うところで感極まってしまったりもした。とにかく、すごい作品だし、これはもう芸術と言っていい域の、国民の宝であるとさえ言っていいくらいの作品だと思う。必見です!

CAMA