劇場公開日 2013年11月23日

「かぐや姫=メッセンジャー(?)」かぐや姫の物語 カラテキックさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0かぐや姫=メッセンジャー(?)

2013年11月29日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

映画を見た時、最後の方で「罪と罰」を語るかぐや姫に全く魅力を感じませんでした。

生きる喜びと生きているがゆえの悲しみをクライマックス直前まで人一倍その身に感じながら生きるかぐや姫に共感しながら見ていただけに、一気に興醒めした感じだ。何かを語る時、我々は証言者ではあっても真理を語る者ではない。作品の核心に乗せていきなり哲学的なことをベラベラと喋りだしたので、かぐや姫の姿と自前の思想を伝えようとする監督の顔が重なった。この主人公に魅力を感じるには、後光を背中一杯に湛えた天上人の、権威者としての姿を見なければなるまい。もはやそこに共感は存在しない。

しかし、である。月時代のことを思い出したかぐや姫は〈この地で生きたい〉と願い、〈もしも…だったらあなたと一緒に幸せになれていた〉と夢見る未練がましい生娘ですらある。生きる意味を悟った瞬間、自分が異邦人であることも同時に悟ったのではないか。家に帰って、「月世界の一人の人間」としてのかぐや姫の立場を思った時、天上人・かぐや姫の悲しみも分かる気がした。

ともあれ、この地球で生きることを称え、「穢れてなどいない」と語るかぐや姫の言葉は、共同体を自ら去った古代ギリシャの伝説の人・ソロンが故郷に残した法のように、ひとつの権威であって良いのではないか。
だから、この作品とクライマックスのかぐや姫の科白は『かぐや姫の物語』の作者からのメッセージではなく、「かぐや姫の物語」に固執し続けた人のひとつの証言なのだ。

ただ、サスペンス性がないので面白味に欠ける。主にアニメーションの美しさを楽しむ作品です。

カラテキック