劇場公開日 2013年7月20日

「表現意図と表現の形のチグハグ」風立ちぬ トモトモさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0表現意図と表現の形のチグハグ

2013年7月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

難しい

千と千尋の神隠し以降明確なストーリーラインを持たなくなったと思うが、この作品でその表現意図が明確になったと思う。ストーリーではなく宮崎さんの心のうちの心象風景のような詩を表現したいんじゃないか。

ところが表現の形はナウシカ以来の明確な線と色でバッチリ決めている。こういう描き方は明確なストーリーラインがある場合はそれを説明するのに有効な表現で上手ければ上手いほどいいと思う。

だけど表現したいことが物語から詩へ移ったならば表現形式ももっと観客の想像力をかきたてるような余白を持った映像詩に変更があってもいいとおもうのだ。それをびっちりした明確な線と色が出てくると観客はそこで起こる事に注目せざるおえない、だけど何も起こらない。余白が無いから想像力も参加しずらい。想像力で補完出来ないから見終わった後にあれこれ考える事になる。

だけど本来は作品の中で共にお客さんと歩んでいるわけだからエンディングと同時にお客さんの中の作品も同時に完成するのが作品鑑賞ではないだろうか。

このような表現意図と表現形式のチグハグが千と千尋以降の宮崎さんのアニメにはあると思う。

むしろ予告で流れた高畑さんの抑えた色と水墨画のようなワイルドな線のかぐや姫の方に表現の余白と詩情を感じた。

しかし真摯でひたむきな作り手の姿勢には心からの拍手を送りたい。みんな凄い人たちだ。

トモトモ