「風立ちぬを楽しく見るための6つのポイント」風立ちぬ ライダーさんの映画レビュー(感想・評価)
風立ちぬを楽しく見るための6つのポイント
この作品はジブリということもあり入口は広い。しかし、他のレビューを見るとかなり極端に評価が分かれているようだ。
私はとても楽しませてもらったので、これは何故なんだろうと考えてみた。
悪い評価の方の多くは、ジブリ作品が好きでそれに対しての自分なりの概念がしっかりと出来上がっている人が多いようだ。今回の作品は、今までのジブリ作品のように受け手の目線に合わせた表現方法を執っていない。そして淡々と物語りは進行していく。低い評価の方はそこに違和感を覚え拒絶してしまったのではないだろうか。
また、大正から昭和初期の風情を実写やCGよりある意味リアルに描き出している故、現代の社会を是とし過去は暗黒であるという考えの方もこの作品に良い評価を与えないだろう。その匂いだけで辟易し拒絶反応を起こしてしまうだろうから。
そして、これは主題にも絡んでくるので最も重要だと思うのだが、自分で夢を持ったことが無く、ゼロから何かを創り上げたことが無く、その楽しさと成功後の寂莫とした感覚を知らない人は、主人公に感情を移入することは難しいかもしれない。
そこで、これから見られる方にアドバイス。”風立ちぬを楽しく見るための6つのポイント”
1、見る前に、これから見るのは”ジブリのアニメ”ではなく単に”作品”という目で見ることを自分自身に言い聞かせましょう。
2、大正、昭和にかけての街の風情、匂い。障子の桟までぬくもりが感じられる実写を超えたリアルな感触を楽しみましょう。
3、他国の場面ではその国の においまで感じられます。その技術力と製作者の粋を楽しみましょう。
4、カプローニがでてくる夢は夢、そこに現実との空間的連続性を求めてはいけません。教条的象徴的意味合いを考えて見ましょう。
5、当時の家屋、道端の木々、草花、トタン屋根等の、これでもか!どうだ!というまで書き込まれたスタッフの方々の心意気美意識を感じましょう。
6、主役は堀越二郎です。彼に感情移入できるかできないかが非常に大きなポイントです。もしそれができれば、他の登場人物たちの立ち位置が芋づる式に理解できます。
以上。もっとあるかもしれないが、とりあえず今書ける事を書いてみた。
そして、変な色眼鏡をかけずに、まっすぐに、とりあえず見て、聞いて、感じてみれば、きっと感動して、泣いて、元気になれると思う。
商業的に成功するかしないかは、その作家活動の持続性に影響はするかもしれないが、その作品の本質とはまったく別の物であろう。
創造されたものの意義は、万人が理解できるかできないかに左右されるものではない。難解なものでも素晴らしく永久に賛美されるべきものはあるし、万人に理解されても陳腐な即座に消滅してしまうものもある。
そして、本当に感動したければ、感動できるような作品を感動できるように、自分自身に準備をさせるべきであろう。それが、作品を味わう作法である。
本来そこまで大上段に構えなくても、これは十分にやさしい作品なんだが....。
祭りの後の寂しさを知っている方、自分が書いている図面に涙の跡が付いた事がある方、世の理不尽さに涙しそれでも一歩でも前に進もうと気力を振り絞ったことがある方。
そんな方は、この作品をなにも意識しないで楽しめることと思う。