劇場公開日 2013年7月20日

「暗喩部分を自らが汲み取らないと真価を見出だせないアニメ」風立ちぬ rjmfさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0暗喩部分を自らが汲み取らないと真価を見出だせないアニメ

2013年7月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

寝られる

ジブリは、子どもが見ても楽しめ、かといって大人向けではないというわけではない。
その絶妙なバランスがジブリの魅力であると思います。

ただ、すべての作品がそうとは限りません。
もののけ姫や、火垂の墓など、
テーマそのものが重い内容のものもあります。

今回の風立ちぬは、まさにこれらと同じような部類になるでしょう。

まず、この作品を評価するにあたり、
・宮崎氏の作品だから
・ジブリだから

という先入観は捨てるべきと思います。

他のレビューで5点満点をつけられている方々がいます。
それらの方に問いたいです。
これが、宮崎氏ではなく、別の無名の集団が作って公開したとしたら、
本当に「5点」をつけますか?

逆に1点をつけられた方に問いたいです。
これがジブリ作品ではなく、あなたが最も注目する監督や、
アニメーション集団がこれを作ったとしたら、本当に「1点」をつけますか?

さて、話を内容に移します。

まず視聴対象ですが、日本語がそこそこ理解できれば、
別に大人でなくてもいいと思います。
難解な表現や言い回しを多用しているわけではないので、
別に小学生が見ても理解できないわけではないと思います。

ただ、描かれている「間」や「行間」を読み取れるかどうか、
暗喩されるメッセージをくみ取れるかどうか、だと思います。

トトロとか魔女の宅急便は、映画を見ながら行間を読まずとも、
キャラクターのセリフであったり、BGMが誘引するかたちで
視聴者の脳に伝えたいメッセージを自然と送り込みます。

ところが、本作については、それを自分でくみ取りに行かないといけません。
ぼけっと見る、あるいは、「目に見える部分、動いて見える部分」と「セリフ」
を、そっくりそのまま脳に伝達したとしても、
「へぇ、なるほど。意味やストーリーは理解した。それで?」と、その後が続きません。

賛否の声が両極端になるのはこのためだと思います。

「見た。内容は理解した。何とも感じない。0点」
これはアニメではなく、一般の書籍に近い感想なのではないでしょうか。
つまり、本作はアニメであるにも関わらず、アニメにしている意味そのものが問われる、ということです。

逆に、びっくりするくらい高い評価をしている人もいます。
そういった評価をする人は、ただ漠然と本作を見ていたのではなく、
キャラの動作やセリフ、感情、間、を自らくみ取りに行った上で、
「このときの彼の気持ちはこうなんだろうな」とか
「実際にはそう言ってるけど実は・・・」とか、
単純にアニメとして描写されているものの裏をきちんと読んで見た人なんだと思います。

ところが、残念なことに、映像作品はいかに自然体で脳内に
メッセージ性を効率よく伝達させるか否かで評価がされてしまいます。
今回、視聴者自らがメッセージ性をくみ取りに行かないと真価が見えてこないという点については
大きな失敗だったと思います。

以上が大きな内容となります。
あとは細かいところを書いていきます。

・起伏が少ない
→終始アクセントがない映画でした。これじゃ、眠くなる作品と言われてもしょうがないです。

・突然の描写チェンジに注意
→画面のフェードアウトも何もなしに、いきなりシチュエーションが変わります。
話をきちんと聞いていればすぐに分かりますが、混乱するという意見が多いのはこのためかと。

・意外だったキスの嵐
→家族でまじまじと見るとちょっと気まずいか

・非リアル(いつもの感じ)
→昨今のアニメ製作会社のリアル描写や細部の描写を見てしまうと、
ジブリ作品は画のつくりや書き込み度合は横ばいだなと感じざるを得ません。
手書きのよさが・・・・という意見もあると思いますが、そう感じられればそれはそれで幸せなことです。

コメントする
rjmf