死霊館 : 映画評論・批評
2013年10月1日更新
2013年10月11日より新宿ピカデリーほかにてロードショー
実話に材を得て、古典的ホラーに原点回帰した濃密な恐怖劇
オカルト・ホラーとしては異例の全米大ヒットを記録したこの映画は、田舎の一軒家で悪霊に悩まされる家族を描いたゴーストストーリーであり、目新しさはまったくない。しかしホラーの古典に原点回帰した映像世界は異様なまでに演出レベルが高く、質量共に圧倒的な恐怖シーンを堪能できる。そのひとつが一家の母親と幼い末娘が“目隠し鬼”という遊びをする場面だ。鬼役の母親が目隠しをし、拍手の音をたどって家のどこかに隠れた娘を捜すわけだが、どこからともなく人間のものではない白い手がヌーッと伸びてくる。“幽霊の拍手”なる現象をシンプルかつ巧妙に映像化したこのシーンは、とてつもなく恐ろしい。
また本作の面白さは、実在の超常現象ハンター、ウォーレン夫妻の事件簿に基づいている点にある。一家に救いを求められるこの夫妻は心霊現象にまつわる映像や音声の収集家であり、テープレコーダー、サーモセンサー、カメラを駆使して幽霊屋敷の調査に乗り出す。パラノーマルな現象の数々が具体的な物証として記録されていく、そのリアリティにこだわった描写の何とスリリングなこと!
ちなみにウォーレン夫妻が関わった数千もの事件簿のうち、本作で語られるのは1971年にロードアイランド州ハリスビルで起こった心霊事件だが、その前段として描かれる1968年の“アナベル事件”に登場する呪いの人形がまた実に怖い。そしてラストシーンには「悪魔の棲む家」の元ネタになった“アミティビル事件”への言及も盛り込まれている。まさに、あふれ出る恐怖! 誰もがパート2の製作を期待せずにいられない超一級の出来ばえである。
(高橋諭治)