劇場公開日 2013年9月21日

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「悪魔を見た」凶悪 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5悪魔を見た

2014年4月2日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

興奮

知的

雑誌ジャーナリストが死刑囚の告白を元に、未解決の殺人事件とその首謀者に迫るベストセラー・ノンフィクションの映画化。

衝撃サスペンスなら韓国、日本だったら「冷たい熱帯魚」の園子温が真っ先に頭に浮かぶが、まだまだ日本にこれほどの力作サスペンスを撮れる監督が居るとは!
長編監督作は本作で2作目、映画監督では若手の40歳。
若松考二の下で映画を学んだだけあって、白石和禰監督の演出は本物だ。

本作の最大の話題はあちこちで評判になっている通り、リリー・フランキーとピエール瀧の“凶悪”演技。やはりこれには触れずにはいられない。

まず、ピエール瀧。
事件の顛末を告白した、元ヤクザの幹部で死刑囚の須藤役。
オラフとは全然違う(当たり前だ!)、凄みのある演技。
穏やかに話していた面会中に突然ブチ切れ豹変するシーンには鳥肌すら立った。

そして、リリー・フランキー。
一連の事件の首謀者で、不動産ブローカーの木村役。
インテリで飄々とした雰囲気を感じさせつつ、ヒヤリとする恐ろしさを秘めた名演技。
同時期公開の「そして父になる」では優しい父親を演じ、まるで正反対の役柄には本当に驚かされる。

二人は軽やかな殺人トークをしながら手を下す。
死体を何かの粗大ゴミのように扱い、須藤は鶏でもさばくように死体を切り刻み、木村は楽しそうにその死体に火を放つ。
須藤は何の躊躇も無く老人を唐突に殴り、木村は愉快そうに老人に酒を飲ませスタンガンを当てショック死させようとする。
かと思えば、皆で賑やかにクリスマスを祝う。
人間はここまで二面性があるものなのか。身の毛がよだつと共に、劇中の池脇千鶴の台詞ではないが、高揚感すら感じるものがあった。

この二人の殺人犯は対称的でもある。
片や暴力的だが人情があり、片や穏やかだが冷血漢。
本当に恐ろしいのは…

そう、本当に恐ろしいのは、この二人ではないのかもしれない。
山田孝之演じるジャーナリストは、事件にのめり込み、家庭を不幸にしながら取り憑かれていく。
例えそれが熱い正義感からでも、一度ハマってしまった人間の心の暗部は底無し沼。

韓国映画で「悪魔を見た」があった。
この邦題は上手いと思った。
“悪魔”とは、チェ・ミンシク演じる怪物的犯人ではなく、イ・ビョンホン演じる主人公が見た自分の心に宿る暗部。
それは本作にも言える。

悪魔を見た。
人間の心の暗部に…。

近大
としぱぱさんのコメント
2014年9月17日

近代さん、こんにちわ。
コメントありがとうございます。
レビュー最高ですね。
お見事です。
邦画ではまれにみる衝撃的な作品でした。

最近文章が湧かずスランプ気味です(悲)

としぱぱ