「わかりきったこと言うなよ!親父」世界にひとつのプレイブック kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
わかりきったこと言うなよ!親父
ますますジェニファー・ローレンスを好きになった映画。妻の浮気と相手の男を殴り倒したおかげで刑務所と精神病院。とにかくNY州の標語である“EXCELSIOR(より高く)”という言葉を前面に出した内容でもあった。
躁うつ病となってから言動もおかしくなるが、退院できるようになったパット。近所のガキんちょにはそれをカメラに収めてからかったりするし、接近禁止令を守らせようとする警官も邪魔でしょうがないのだが、家族や友人は彼の病気を温かく見守ってくれるところがいい。ただただ妻との復縁を願うパットだったが、ロニー(ジョン・オーティス)とヴェロニカ(ジュリア・スタイルズ)の夫婦のところでディナーに誘われ、ヴェロニカの妹ティファニー(ローレンス)と出会う。彼女の過激な発言や、叱咤激励にも似ているやりとりによって日常生活も振り回されることになるのだ。
病気は治ったんだから体力をつけるだけ、とゴミ袋を着てランニングするパット。それをストーキングのようにくっついて走るティファニー。彼女も警官の夫を亡くし、心が病んでいることもよくわかるが、会社内で11人もの相手と寝てクビになったという強烈な過去も知らされる。「アバズレ、尻軽だったのは過去の話」と言われてもなぁ。最初の晩からセックスに誘われたことも無視できないし・・・。想像するに、パットは精神薬のせいでEDになってたのだろう。やっぱり心が通わなきゃその気になれない。
パットの父親(デ・ニーロ)はすぐに暴力を振るうため、スタジアムは出入り禁止になっているが、アメフトの賭博が大好き。ノミ屋をやっているというが、多分友人ランディのみが賭博の相手。その大きな賭けがパットの前進のきっかけにもなるのだが・・・。
笑える部分も多いけど、破天荒な性格のキャラが多かった。ティファニーもまたその一人なのだが、一緒に心の病を克服しようと親身になってくれて、経験のないダンスで吹っ切れよう計画するのだった。中には嘘も必要で、パットが手紙を妻に渡して欲しいと頼んだら、渡すから今はダンスに励みましょうといった感じで、手紙の返事はティファニー自身がタイプするのだ。
傷を舐めあうことだけが完治に向かうわけじゃない。互いに一つの目標を共有して前進するということが非常に重要だともわかる。そして、物語はデ・ニーロの一大博打へと発展するというクレイジーなもの。イーグルスが勝った上にダンス大会で5点以上取れば倍のレートで勝負するというパット父とランディ。素人の二人には5点もきついってのに・・・
クライマックスはそのダンス大会。パットをその気にさせるには「ニッキも観に来る」と嘘を言うしかないティファニー。しかし、本当にニッキが観戦しにくる展開となり、このままだと二人がよりを戻してしまうんじゃないかと心配になり試合直前にウォッカを浴びるように飲むのだ。痛いほどよくわかるティファニーの気持ち。それでも最後まで踊りぬくんだという葛藤が・・・。
涙なしでは見られない終盤。いつしか二人は愛し合ってしまったのだ。引き引きの押せ押せで、逃げる追いかけるの男女の心理。二人ともほとんど病状はなくなっているし、理性と駆け引きが見事に作用した。「好きになったのはいつ頃?」という恋愛モノには欠かせない要素もちゃんと入ってるし、薬の副作用もあったのだろうけど純愛を貫き通したところが偉い!残念な部分もあるにはあるけど、些細なことは後回しにして“より高く”前向きに生きていこうという勇気をもらった気がする。