劇場公開日 2013年2月22日

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世界にひとつのプレイブック : 映画評論・批評

2013年2月12日更新

2013年2月22日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー

痛くておかしく、カオスを恐れぬコメディ

黒いゴミ袋を、主人公のパット(ブラッドリー・クーパー)はポンチョのようにかぶる。袋の底と両脇に穴を開け、頭からすっぽりとかぶるのだ。家の近所を走りまわるとき、彼はかならずこの恰好をしている。

その恰好がなぜかよく似合う。減量のためでしょ、などと真面目な顔でいわないでいただきたい。汗取りだけなら、ほかに手がある。

パットは、8カ月入っていた精神病院からたったいま出てきた。妻の浮気現場を目撃し、大暴れして入院させられたのだ。妻に対する未練は深い。躁鬱の波も大きい。

そんな彼がティファニー(ジェニファー・ローレンス)に出会う。ティファニーは妻の友人の妹だ。こちらもちょっと危ない。夫が事故死したショックの反動で、会社の同僚11人と寝てしまった過去がある。パットは、妻宛ての手紙をティファニーに託す。するとティファニーがいう。ね、ダンス・コンテストの相棒になってくれない?

ああ、その手の話か、と思わせつつ、「世界にひとつのプレイブック」は通常のロマンティック・コメディの関節を外していく。もちろん、定石は押えている。ふたりの男女の突飛な性格と強力な化学反応。彼らを支えるカラフルな脇役とストーリー展開。監督のデビッド・O・ラッセルに手ぬかりはない。

ユニークなのは、主人公を躁鬱病に設定したことだ。これはリスクが大きい。「一期は夢よ、ただ狂え」の大混乱が生じた場合、収拾がつかなくなるからだ。が、ラッセルはギャンブルを恐れなかった。佳作「アメリカの災難」もそうだったが、彼はカオスの取り扱いに長けている。この映画も嵐のなかに飛び込む。ヒステリアは暴発寸前にまで沸騰する。が、ラッセルは踏みとどまる。尻餅をつかず、希望を絶やさず、崖っぷちできわどいステップを踏んでみせる。痛くておかしいコメディは、彼の十八番になりつつあるようだ。

芝山幹郎

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