君と歩く世界のレビュー・感想・評価
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オーディアールの意地悪と優しさが好きだ
見始めて、思っていたより後ろくらく、シーンが急に変わるなと感じていた。
フランス映画はこんなだったかなと考え始めた時、思い出した。ジャック・オーディアール監督作品だった。
オーディアールだから観たかったのだ。オーディアールだから観ているのだった。
オーディアール監督の編集は少々不親切。理解が追い付くギリギリくらいに分かりにくい。しかしそれが良い。
物語が始まって、徐々に沈んでいき、エンディングでふわっと浮かび上がる。これが好きだ。
唐突に優しさで包まれる感じなのだが、そこに至るまでにしっかりと必要な描写を積み重ねているので、完全な理解は出来なくとも納得できる曖昧さも良い。
最初の設定から受ける印象と全然違う方向に物語が進むのも面白い。しかしこれはダメな人も多いだろう。予想を裏切る展開と期待を裏切る展開は同じことだが意味が異なる。
さて本作はどうだろうか。
アリという男は面白いキャラクターだ。単なる粗野な男にも見えるが人並みの優しさも持ち合わせている。
彼にとってはあらゆることが特別ではない。姉、仕事、両足を失ったステファニー。
ステファニーは自分に哀れみを見せないところにひかれていくのだが、逆に言えばアリにとって特別な存在になれないことも意味する。
原題は「錆と骨」
錆は傷という意味合いもあるらしい。多分その解釈でいいだろう。
骨は、エンディングでアリが語る言葉そのままだろう。折れた骨は元通りにはならないが治る。元より強くなることもある。人にも同じことが言える。
自分本位だった二人が傷つくことでお互いの必要性に気付く物語。
オーディアール監督らしく、荒々しい力強さがあるのに繊細で、時々、目を見張るシーンがある。
傑作とまではいかないけれど、良い作品だった。
二時間で人の成長をしっかりと描けるオーディアールはやっぱり好きだ。
好きだと断言できる数少ない映画監督の一人。
【ある男女の再生と希望の物語。心と身体に深い傷を負ったヒロインを演じるマリオン・コティヤールと彼女を不器用に支えアリの姿が印象的な作品。今作には確かなる希望があるのである。】
■シャチ調教師として働くステファニー(マリオン・コティヤール)は、ある日事故で両足を失う大けがを負ってしまう。
過酷なハンディキャップを抱え、生きる希望さえ失っていく日々。
そんな彼女の心を開かせたのは、不器用だが真っ直ぐなシングルファーザー・アリ(マティアス・スーナールツ)だった。
■個人的な話で恐縮であるが、マリオン・コティヤールさんは、ガル・ガドットさんとゴルシフテ・ファラハニさんとともに、とても好きな女優さんである。
それは、外見の美しさだけでなく内面の強さも感じるからである。
◆感想
・今作は、二人の何の所縁もなかった男女の再生の物語である。映画の王道テーマであるが、今作品はそれをてらいなく見せている。
・事故により膝下を失ったステファニーに対し、アリは憐憫の言葉を掛ける訳でもなく、普通に接する。
彼女を、ごく自然に海に誘い、泳がせる。
- これは、身障者の方から良く聞く事だが、”普通に接してくれることが一番嬉しい”という言葉を思い出す。-
・故に、彼女は彼に身体を委ねるのである。
<アリは不器用な性格により、彼を助けた姉の職を失わせるが、彼は自身の格闘技の高いスキルにより、新たなる一歩を踏み出すのである。
勿論、彼の傍にはステファニーが居るのである。
繰り返すが、今作は二人の何の所縁もなかった男女の再生の物語なのである。
今作には確かなる希望があるのである。>
ラース・フォン・トリアーを思い出した
イルカの調教師がファイターのマネージャーに
マティアス・スーナールツの演技の幅
メソッド皆無。ショック療法の効果、技あり。シャチ可愛くて叫ぶ。
マリオン・コティヤールの
出演作を続けてチョイスしました。
この女(ひと)って、絶体絶命の人生を演らせたら天下一品かも。
「サンドラの週末」も見ものですよ。
それらマリオンの出演作は
仄(ほの)明るい、あるいは仄暗いとも言える独特な“ハッピーエンド・ストーリー”なので。
これはきっと、フランス映画ならではだろうなぁ。
ハリウッドではこの味は出せない。
怪我人のマリオンをば、寄り添うとか理解して励ますとか じゃなくて、ただのセフレとして付き合うアリ。
こういうのアリ?(笑)
粗野で、乱暴で、荒くれ男の
・泳ぐシーン
・ベッドシーン
おいおい!ちょっとちょっとー!
なんともKY で無遠慮なアリの“介護”で、マリオンが俄然息を吹き返していくあの光景は、ちょっと新しい世界を見せてもらえて震えました。僕の体得していた方法とは異次元のものだったからです。
(あそこで流れるアレクサンドル・デスペラとか!反則だ)。
アリが殴れば殴るほど、マリオンは鬱憤を晴らして充電していく。
【一緒に歩くつもりなどない男の無関心が、マリオンを立たせる】。
そこがなんとも面白い。
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「エンドロール」
ん? れれれ?
文字列が変でしょ?
スペルの間隔がおかしいの気付きましたか?
「27個ある人間の手の骨の数」の、「折れて砕けた骨」を表しているね。ハッと気がつきました。
あれは抜群のエンドロールでしたねー。
そういえば原題は「錆と骨」でした。
獣にはならず
大雑把で極めてデリカシーもない、薄情さが逆に正直にも取れる、そんな男の行動が勝手気ままに思えるが、天然な優しさから一人の女性を救う形で、息子に対する気持ち含めて彼の人間性は物語も終盤に連れて理解が出来てくる。
男を必要としながらも微妙な関係性からのパートナーへと恋愛映画とも違う、成り上がり格闘技モノでもありながらリアルな現実の生活や痛々しい暴力の雰囲気も漂う危うさを微妙に散りばめながら。
辺り一面に氷を張った湖での大惨事、氷を殴り叩き割る痛々しい場面と最悪な展開を想像してヒヤヒヤしながらも事なき終えての一安心。
男は単に生活する為に動物的本能のまま生き抜く術を力強く時には逞しく、人間としての当たり前を立派にやり遂げる父親としても。
シャチ
気遣いが痛い時もある。 そういった意味でこの邦題も痛い。
原題が「De rouille et d'os(錆と骨)」
短絡的に言えば、笑いはないが愛とセックスのある、
「最強のふたり」でしょうか。
わたしは、本作の方が好きです。
ポスターのキャッチコピーに騙されて、感動秘話的に観ると大怪我する。
あくまで「錆」と「骨」なんです。
人は支えあわなきゃ^^
マリオン・コティヤールの演技と美しさに異論は無いが…
「エディット・ピアフ 愛の讃歌」でオスカーを受賞してからハリウッドで活躍していたマリオン・コティヤールが、久々に本国フランスに戻って出演した意欲作。
シャチの調教師のステファニーは、ショーの最中の事故で両脚を失う。絶望するステファニーに再び生きる希望を見出しのは、シングルファーザーのアリとの出会いだった…。
タイトルやあらすじだけ聞くと、感動作のように思えるが(感動作ではあるのだが)、話は意外とシリアスで重い。
また、主人公二人に感情移入出来るかどうかで評価も分かれる。
男手一つで息子を育てているアリだが、職を転々とする風来坊。性格は粗野。殴り合いの試合で金を稼ぐ事も。
息子を愛してはいるが、時に辛く当たる事もあり、あるシーンなど不愉快にすら感じた。
ステファニーも決して好感の持てる人物像ではない。
初めてアリに出会った時は大して相手にしていなかったくせに、両脚を失ってから助けを求める。
どのタイミングで二人が惹かれ合うようになったのか、ちょっと曖昧。
高潔な人物の再起の物語を描くよりかは、少しトゲや陰のある人物の再起の物語を描いた方が、映画としては深みはある。
それは分かるが、今回に限っては、なかなか共感し難かった。
また、フランス映画なので、万人受けする分かり易い内容ではなく、見た人それぞれに感じさせるタイプの映画。
上質なドラマではあるが、これも好き嫌い分かれそう。
だけど、マリオン・コティヤールの熱演と美しさには異論は無い。
彼女も、そして渡辺謙もジャッキー・チェンもそうだが、本国に戻ってこそ、本来の実力を発揮出来る。
共感し安堵し、そして我が身を考える。
爽やかで力強い作品でした
これまた鑑賞前のイメージと違っていた・・・
マリオン・コティアールが主演で、涙ボロボロを期待して観に行ったのに肩すかしを食った感じ。プログラムに寄れば、同じ作家の短編二つを一つの映画にしたとのこと。マリオン演じるステファニーの話も重要なパートに違いないが、あくまで主人公はシングル・ファーザーのアリだと思う。冒頭もアリの描写から始まるしね。アリに関わる人の一人がステファニーなのにすぎない。育児放棄気味の大人になりきれない男が主人公なのだ。共感されることを拒否しているような人物で、観ているこちらも何を考えて生きているのか理解できなかった。子どもは可愛くないわけではないが、いつも面倒をみることまではできず、自分の欲望に走ってしまう父親。結局監督は何を描きたかったのだろうか? 私にはわからなかった。ステファニーの話だったら、挫折からの再生でわかりやすかったと思うのだが・・・
ある意味、予想どうり…
贔屓目に見てもつまらない、駄作
すごく難しいテーマなのは分かる。
だからといって最後の投げたような終わり方含め、
脚本の稚拙さにただただ驚いた。
登場人物の心理描写も行き当たりばったりで、
特に主人公にとにかく感情移入できない。
ただただ長いセリフと意味深げなカットも邪魔だがまだ我慢出来る。
だが一つだけ、
脚本、ふざけるな。
この作品の中で唯一見るべき点、
障がい者としてのハンディキャップと向き合った点は評価に値すると思います。
ただそれ以外の主人公の言動には何の成長もない。
人の好き嫌いが別れる個性的な映画というのは確かにあると思います。
だがこの作品はそもそもそのレベルまでいっていない。
低評価のレビューを見て、それでも面白い点もあるかと思いましたが、
それでも本当につまらなかったです。
まだ見ていないなら他の作品を見ることをお勧めします。
マリオン・コティヤール、あらためて素晴らしい
失意のどん底で生きる希望をなくしているところへ、あるひとりの人間が現れて、その人のお陰で立ち直っていく話はよくある。だが、この手の話に現れる人物は決まって献身的な手を差し伸べるものが多い。
ところが今作では、両脚を失った女性ステファニーの前に現れるアリという男性は、ステファニーに対して同情のかけらも見せない。
看護師たちは、脚を失くした身体を人前に晒したくないステファニーに、閉じこもっていてはダメだと諭す。要は肉体的にも精神的にも不健康だという理屈だ。
これに対し、アリは単純に「なぜ外に出ないのか?」というもっともな疑問をステファニーに投げつける。外は明るくて楽しいぞという理屈だ。
健常者か否かに関係なく、人は行きたいところに行きたいときに行く、そんなあたりまえのことに誘い出すアリの行動パターンが話の軸になる。
そんなアリの、ときに短絡的な思考に走る姿や、何ものにもとらわれない奔放でマイペースな行動に翻弄されながらも、どん底から這い上がっていくステファニーに演技力があるマリオン・コティヤールがぴったり重なる。
愚かなところもあるが、底に優しさを秘めたアリのマティアス・スーナーツも野性的な雰囲気がいい。
思いがけない展開からのラストもいいが、ステファニーが車椅子でシャチへの合図を繰り返すシーンにグッとくる。
ステファニーが徐々に義足の露出度を上げていく演出も効果的。
ただ、語り口がやや冗長だ。その割に端折られたカットや唐突な展開が目立つ。
なんだかもの足りない・・・
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