小さいおうちのレビュー・感想・評価
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山田洋次は寅さんだけじゃないのね。
いい映画でした。
黒木華の出演作は何作か見ましたが、ここでの演技が秀逸ですね。当たり役というのか、はまり役というのか。訛りも良かったですね。温かみあります。
まず戦前や戦時中の事柄はだんだん風化していきます。私も女中の視点から書いた映画なんて初めて見ましたし、戦時中の世相を映像化し、語りついでいく必要性はありますね。
そしていつの時代も恋愛、人のこころは変わらない。不倫とかって事はあるんですが、なかなか自分の好きな人と結ばれにくかった世の中もあいなって、これは純愛以外の何ものでもない恋話でした。
健史とタキ(おばあちゃんと呼ぶ)の関係性がよくわからないまま見てましたが。
健史が、タキ(親類)の自叙伝から、彼女の人生に触れ、最後に彼女が死ぬまで持っていた平井時子の書いた手紙を、平井家の坊っちゃんに手渡す。生きていて良かった。板倉も生きてたら、なお良かったけど。
長い年月をかけたけれど、ひきつがれた、タキの想い。タキを理解し泣く健史、タキの想いをおしはかり泣いた坊っちゃん、私も涙が溢れました。
妻夫木聡は大好きな俳優です。
ほんとに温かみがありましたよ。
脇を固める俳優陣が豪華。
名キャストでした。
山田洋次のムッツリが溢れている。だから良い。
湿度ある松たか子の淫欲を執拗に撮りつつも、
寧ろ本作が描き出すのは画面の端の初心な処女、黒木華の内部の性の萌芽なのだ。
本人はその胸騒ぎを性のそれとは気付かぬ塩梅。
これに目を凝らす山田のムッツリが素晴らしく良い。
山田洋次は失われた日本人の美徳だ反戦だと説教したくて大真面目に映画を撮っているのに、
彼独自の正統メイド萌えや湿り気ある百合的エロが図らずも?ダバダバ溢れ落ちてしまっている感、を愉しんだ。のだと思う。
ふしだらな恋も美しく魅せる魔力、昭和と共に移り行く秘密の行方は
恐ろしい雰囲気の映画だと身構えていたのだが、蓋を開ければ、湾曲しているはずの恋が美化され、ありありと山田洋次監督のパワーを見せられた作品だった。
都会に上京したタキは、橙の屋根が特徴的なおうちの女中として働く。時子が起こした恋の事件が60年の時を経て解かれる…。不思議なのが、時子の危険な恋を描いているにもかかわらず、美しく、儚く描かれているのだ。人知れずに同じ人に恋心を抱きながらも、主人を慕うが故の葛藤をしている。離れて観れば、エキセントリックな話であるが、美しく描き出されているのだ。それは、戦争と共鳴するからである。可笑しな関係が、昭和風情の不貞と時代の変化と重なり、クライマックスへと持っていく様は恐ろしい。
赤い屋根の小さな家。
引き続き黒木華の作品を観た。
黒木華だけが自然な感じがした。
タキ(黒木華)の女中をしていた頃の自叙伝を紐解いていく。
主人公がタキなので思い出される人達が舞台の劇のように感じた。(多分演出)
一生独身で過ごした。なぜ?
長く生き過ぎた。って。どうゆうことだろう。
凄く気になった。
タキにとってはあの赤い屋根の小さな家で過ごした日々が一番幸せに感じたられた時だったのかな。と思った。
最後の板倉さんから平井さんの子供が生きていることがわかって妻夫木が会ってタキの苦しみを知って💧した。
黒木華は素敵な俳優さんです。
女中さんは大変だ?
全体的に暖かくふわっとした感じ。
終盤の展開が唐突で、どこに注目して観ればいいのか分からなくなった。加えて風景描写が曖昧だったり、「おうち」のセット感が強烈だったりと、いまいち入り込めず。
GYAO!
久石譲の音楽はなぜすぐに久石譲だとわかるんだろ・・・
坂の上の赤い屋根の小さな家。あ、自分の家もそんな感じだなどと思いながら、関東大震災直後に建てられたモダンな家は裕福な家庭の象徴みたいな存在にも思えた。玩具メーカーの常務である平井雅樹。その妻・時子(松たか子)は誰もが美人だと認めるほど美しい。5歳になる息子・恭一が小児麻痺に罹り、女中タキ(黒木華)の献身もあって入学が遅れたものの後遺症も残らず普通の暮らしをできるまでになった。
平和な一家であっても戦争の影が忍び寄る。おもちゃの会社は金属を使えなくなり、多くの社員が兵役に取られる。平井家に通うようになった独身の板倉(吉岡秀隆)には縁談話がいっぱい舞い込むのだ。
やがて、板倉に恋するようになった時子。同時にタキもひそかに恋心を寄せているが女中の身であるため、何もできない切り出せない。世間は狭いもので、板倉の下宿先に碁を打ちに来る男が平井家出入りの酒屋さんだったりするので、噂も徐々に広まるといった具合だ。
こうしたストーリーは、現代のタキ(倍賞千恵子)が自叙伝を書き連ねて、それを大甥の荒井健史(妻夫木)が校正することで明らかになっていく。そのタキも亡くなり、親戚が彼女の部屋を片付けているときに、一通の未開封の手紙を見つけるのだった。
『家族はつらいよ』のメンバーが多数出演しているので、混乱しがちな家族関係。橋爪功や吉行和子、中嶋朋子、林家正蔵、夏川結衣、妻夫木聡を見てるだけでほっこりさせらる(西村まさ彦は仲間外れか?)。
そんなほのぼのとした雰囲気も戦争が壊してゆく。そして倍賞千恵子が言う「私長く生きすぎたの」という台詞に、残された者の悲哀が伝わってくるのだ。そこには隠された罪悪感もあり、一生独身だったということも悲しさを増している。さらに、召集令状を受け取った板倉の生涯も彼女と似たような人生だったことに泣けてくる。そもそも不倫が発端でもあるが、見合い話の候補者の中になぜタキを入れないんだ?と、身分の違いがそうさせたのか、あるいは三角関係にも繋がる時子の嫉妬心も理由のひとつか?今よりもずっと身分の違いが重かった時代。結局は板倉の恋も実ることがなかったじゃないか!と、腹立たしい部分もあった。
しかし、板倉の個展を偶然見つけ、恭一の足取りもわかり、怒涛のラストは涙ちょちょぎれ状態になりました。あぁ、恥ずかしい。
小さいお家の中の小さな秘密
黒木華さんが日本アカデミー賞で最優秀助演女優賞
をとった本作。期待してみたら、なんでこれで最優
秀なの?と、過去の栄光にクエスチョンと意味の
ない事をしてしまいましたが、よく分からない。
演技は良かったし、役にもあっていたけれど、、、
お話も、演出も派手ではなく、ある家族の普通の
日常が描かれていた。ただ、そこに秘密の恋愛が
絡んできて、、、時代は昭和前半。
第二次世界大戦へと進んでいく様子が描かれている。
印象的だったのは、板倉(吉岡秀隆さん)が招集
令状を受け取り、平井家へそれを伝えにきたシーン。
なんとも悲しい気持ちになった。
「お国に尽くすなら、君など兵隊より、
絵を描いたり、漫画を描いたりした方が
よっぽど役に立つと思うけどね。
一番つまらない使い方だな」
と、美大を出たデザイナーの板倉へ平井の旦那が
掛けた言葉。
本当にその通りだと思った。
"使い方"というところがグッときた。
そうなんですよね。
国にとっては所詮国民は使われてしまうのです。
一人一人の人生が、戦争によって強制的に道を
変えられ、夢や家族や幸せを奪われてしまう。
本当に悲しい。
当時の人達の気持ちにはとてもじゃないが自分は
同じ気持ちになることは無理だが、映画を通して
いろんな立場の人の気持ちが表現されていることで
少しくらいは分かったつもりになれる。
二度と同じ事が起こらぬよう祈るばかり。
変なストーリーを成立させる山田洋次は恐るべき力技のアンチェインです
戦時中の不倫願望のマダムの話で、漱石の小説を昼メロか韓流に下品に味付けしたようなはしたない映画です。
でも、松たか子と黒木華を使いながら芸術性が有るかのようにペテンにかける山田洋次は凄い、これでも褒めているので。
ハリウッド流に対する宣戦布告
登場人物はごく少数、美術にもコストは掛かっていない……のですが、なんとなんと少数精鋭の俳優たちの上手いこと上手いこと。
これって、ハリウッド流に対する反骨っていうか、「CG使えばなんだって大作にできちゃうぜウヒヒヒ精神」の対極を行く、本物の映画人による、本物のドラマ、本物の演技の力を心地よく堪能できる映画でした。
ハリウッド流では、エンドロールに出てくる映像って、NG集だったりしますよね。
でもこちらは、エンドロールに出てくる映像こそ、珠玉のように大切で、力を入れて撮影した、まさにストーリーの肝となる、しかも未見のシーンばかりなんですよ。
これを見て、私は確信したわけです。
これは山田監督による、ハリウッド流に対する宣戦布告なんだな、とね。
黒木華さんがエンドロールで初めて2階に登った時の、視線の配り方。
もう、それだけでメッセージが観る側に伝わってくるのです。
これぞ映像の力!
ほんとうにていねいな作りの、素晴らしい作品でした。
とてもよかった
現代劇だと思ってスルーしたのだが、おばあちゃんが青春時代を回想する時代劇だった。女中さんがあまり人間扱いされていないというか、一段低く扱われている。吉岡秀隆本人も黒木華を好いているのだけど、女中だから結婚を申し込むようなことはない。当時は家柄で身分制度みたいなのがあって、農村の出は身分が低いような描かれ方だ。それが言葉で示されていないので、見ていてもやもやする。黒木華も低い立場で当たり前のようにいる。今なら女中でもなんでも、若いしかわいいと言って身分の高いブスよりずっといいじゃんと思う。
黒木華もいいけど、松たか子もすごくよかった。
小さい秘密に隠された女性の本心
東京のある中流階級の女中の目を通して描かれた、太平洋戦争前の市井の生活。穏やかで幸せな時代と回想する大叔母タキに対して、戦後教育そのままに否定する健史とのやり取りが物語を進める。そこで浮かび上がる奉公先の時子夫人と板倉の不倫劇。山田監督らしからぬ題材をどう描写するか興味深く観ることが出来た。
タキと時子の関係は、ルネ・クレマン監督の「太陽がいっぱい」の女性編になるのか、貧しい生まれから都会生活の安らぎに変わり、若く美しい時子に憧憬と好意を強く抱くタキのたった一度の裏切り。映画としては、些細な出来事だが、一生時子に仕えたいと言っていたタキにとっては許しがたい後悔の念に駆られる。その後独身を通して時子への愛を貫いたと視れば、彼女の純真さが想像できる。
ただ、タキと時子と板倉の三角関係は、曖昧なままで説明不足。時子の幸せを常に願うタキが板倉に対してどう思っていたのかの描写が抜け落ちている。そのためラストの板倉の絵、息子恭一の登場という映画的なクライマックスが最良の効果を生んでいない。
演技面では、主演の松たか子と黒木華が素晴らしい。女盛りの欲望に抗えない時子の感情の行方を丁寧に演じる松たか子に、女中の仕事に献身的に尽くす一途さを体現する黒木華の演技力。このふたりの評価で、この映画の良さの殆どを占める。残念なのは、板倉にキャスティングされた吉岡秀隆の俳優の色が全く合っていないことだ。徴兵検査で丙種合格の後ろめたさを彼なりに演じているものの、松たか子との不貞の相手の危うさのイメージは持ち合わせていない。健史役の妻夫木聡は、「永遠のゼロ」の三浦春馬と同じくステレオタイプの好青年の特徴のない人物像で何の個性も感じられない。脚本の問題だが、教科書通りの歴史観を述べるだけでは教養がない。実際に経験した人間の証言に対しての想像力が欠落した青年で片付けられる。その他男優にも特筆すべき演技がなく、女優優位の作品である。
戦前の幸せな時代を生きた一人の女性の生涯を描く作品の意図は、賠償千恵子が晩年のタキを演じたことで理解できる。戦争がなければタキの一生も全く違うものになっていただろうということに、山田監督の創作意欲が刺激されたのだと想像する。
松たか子と黒木華の演技力が光る!
タキおばあちゃんが死んだ。自叙伝を遺して…。
昭和初期、山形から上京してきたタキは、赤い屋根の小さな家に女中として奉公する。そこで繰り広げられるドラマを回想するかのように、ストーリーが進む。
時子奥さまの優雅で華やかな暮らしは、現代の我々から見ても羨ましい!迫りくる戦争の波、板倉との許されるざる恋…自叙伝をきっかけに、タキが隠し続けた秘密が解き明かされる。
見事な脚本と豪華俳優の演技力で、原作を知っている私も
クライマックスにかけて、引きつけられた!
月並みな言葉ですが
家々の灯りの数だけ物語がある
そんなことを思いました
繋がれる思いと
繋がれない思い
人生を振り返った時
思い出される時間は
もう過ぎ去ったのか
これからなのか
戦争という
あまりに大きな時代のうねりの中の
小さなおうちそれぞれに物語があり
日常がある
そのさらにちいさな人々の心の中に
人知れず抱えた思いがある
数多くの思いが時代の流れとともに
消えていく
その消えた思いがあることを
ふと気づかせてくれました
負ではない遺産。
小さな罪と人は言っても生涯背負うことになるのかも知れない
混沌とした時代のなかのひとつのいとなみ
戦争をこんな切り口で描いた作品に出会えたことに感謝します。
人を信じ、人を信じ
優しく優しく時は進み
私を真綿のように包み込み、そして押し出すようなメッセージ
はっきりはわからないくらいの心の動きに感動
出版された頃に本を読んで、それから今日初めて映画鑑賞。黒木華がとてもいいとは聞いてたけど本当によかった。黒木華も松たか子もすごくいい。かすかなでもゆらゆらする感情の動きに、感情移入ができて世界に入り込んでられる映画だった。相手に対しての感情ってひとつじゃないし一言でも言えない。自分の周りにいる人たちを大事にしたいと思えた作品だった。小さい赤い屋根のおうちに住みたいな。
【昭和初期を舞台にした気品溢れる作品。】
この作品のようなテイストを醸し出せる山田洋次監督の凄腕には敬服せざるを得ない。
又、この作品の上質感を支えているのは、観れば分かるが美術(出川三男)、衣装(松田和夫)という、山田映画を支える盤石のスタッフ陣と音楽(久石譲)である。
戦時中でも、気品ある夫人を演じた松たか子の姿と女中を演じる黒木華の姿は忘れ難い。黒木華はこの作品から山田監督作品の主要メンバーとなった事は周知の事実である。
<2014年1月25日 劇場にて鑑賞>
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