「【自分達を捨てた臨終近い父の写真を撮りに行くという、重くなりそうなテーマを中野量太監督が撮ると、アーラ不思議、家族の絆を描いた作品になるんだなあ。】」チチを撮りに NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【自分達を捨てた臨終近い父の写真を撮りに行くという、重くなりそうなテーマを中野量太監督が撮ると、アーラ不思議、家族の絆を描いた作品になるんだなあ。】
ー ご存じのように、中野量太監督は、オリジナル脚本と家族というテーマに拘って、良作を発表している邦画界では、稀有な存在である。
この、劇場用長編デビュー作でもブレはないのである。-
■父親が家を出ていって以来母親(渡辺真起子)と3人暮らしのハヅキとコハル。ある日、二人は母からタバコの吸い過ぎで死期の迫った父に会いに行き、顔写真を撮ってきてほしいと頼まれる。
二人は父のいる田舎に向かうが、父は亡くなったばかりで出棺を待つだけだった。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・レビュータイトルに記した通り、重くなりがちなテーマであるのに、何故かクスリと笑えるシーンが多い作品である。
・出迎えに来た、初めて会う父の遺した幼い息子チヒロとの何気ない会話。
父の弟の叔父(滝藤賢一)が二人の成長に驚き、普通に迎える姿。目の見えない祖母も同じである。
・叔父の妻だけが、財産分与を恐れ、相続放棄の署名を二人にさせる所なども、血が繋がっていない程、死んだ人の金に執着する人あるあるである。
■可笑しいのは、コハルが焼き場から出て来た父の骨と、骨を拾う人たちに向けて”ハイ・チーズ”と写真を撮る所と、ハヅキがコッソリ父の”右手のどっかの”骨を万引きして、出迎えた母に渡すシーンである。
更に可笑しいのは、母はその骨を川に投げ込んで”これで、墓参りにわざわざ行かなくても良いね。”とニッコリ笑った後に、その骨をコハルと父が好きだったマグロがザバッと川から飛び出て食べるシーンである。
そんな、バカな!と思いつつ、笑ってしまったシーンである。
<自分達を置いて家を出ても、父は父なのである。そして家族の絆とはと、変な所で繋がっているのである。
今作は、商業デビュー前の、中野量太監督らしさが前面に出た作品だと思います。>