「接続詞」アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン こっこさんの映画レビュー(感想・評価)
接続詞
解釈のメモ書きです。
前作アベンジャーズでスタークタワーの看板がAだけになっていたのは、今作への布石でしたね。
ただのエンディングと思わせつつなところがにくい。
キャプテンアメリカ-ウインターソルジャーにてシールドは解散に追い込まれ、アベンジャーズは独立した存在となり、その運営はスタークが賄うということを示唆していたことになります。
であればアイアンマン3のラストはどうなのかと気になりますが、あれはアイアンマンを辞めるのではなく、アイアンマンに頼ることを止めるという意思だったということのようです。
それを証明するのが序盤からの総力戦。
あくまで戦うのはアベンジャーズチーム、ボットであるアイアン部隊は市民の避難のために使われます。この辺りにアイアンマン3のラストの解釈が込められています。
またこの序盤の総力戦は、前作アベンジャーズのエンドロール前に差し込まれたヒドラ残党が作り出したであろう謎の男女の登場の為に用意された舞台です。
謎の男女は、今作で新たにアベンジャーズに加わるクイックシルバーとスカーレットウィッチ(コミックに忠実にいくならマグニートの子供)。
コミックファンならクイックシルバーが死ぬとか超もったいないぐらい大切なキャラクターなんですけどね。序盤の総力戦では、この他にハルクとブラックウィドウの意外な関係性や、ジャーヴィスの衛星システムと対ハルク防衛システムのベロニカを紹介しつつ、ヒドラを倒すという、情報過多としか言いようのない盛りだくさんな幕開けでした。
全体的には、いろいろ批判されてますがバックグラウンドをオープンにしたホークアイや、その他の作品の広がりを感じるにはとてもいい作品だったと思います。
シリーズ物の2作目は、こういう布石に徹することが多いため仕方ないところもあると思います。
アベンジャーズ3作目(パート1、2)というクライマックスとMCU次回作のキャプテンアメリカ-シヴィルウォーへの接続詞といっても過言ではありません。
なので見る人にとっては、詰め込み過ぎに感じ、置いてけぼりを喰らい、その辺りの事情を知ってる人にとっては、この映画の意味合いを納得しながら観ることになります。
本作を初心者にもわかるように作ってあったと評する人もいるようですが、そんなところはこれっぽっちも見当たりませんでした。
今まで見てきて、やっぱりそうなるだろうなぁという展開しかありませんでした。
MCU初心者にも優しいというシリーズ2作目とは、真反対にある映画です。
DVDでの販売も大きな映画の収益源となっている昨今、初心者向けにシリーズ2作目を作ることのメリットは、見当たりません。
SNSを中心に、前作見とかないとわからない、という評価が走り回るだけで前作のDVDも動くような時代です。限られた時間の中で、初心者への配慮など入れられる余地があるはずもない。特に本作のような接続詞映画には。
なので随所にシリーズ(エージェント・オブ・シールドも含む)を観ている人にだけわかるトークネタや、カメオ出演がちりばめられています。初心者は楽しめないから、正直、観ない方がいいかもしれません。
内容が無いというか、薄いのは当たり前だと理解すれば、本作は、1作だけでなくMCU全体への接続詞という大役を最初から最後まで余すことなく全うしたことを評価したくなるでしょう。
ジョス・ウェドン監督の力技に天晴れです。他の監督もありがたくバトンを受け取ったはずです。
中盤にあるスカーレットウィッチの幻覚催眠によって自制が効かなくなったハルクとぶつかるハルクバスターの戦いの場面。
これは、ファンサービスでありながら、接続詞の役割から解放されたという意味で、ラストを除いた唯一見せ場的なセクションです。
だからこそ、その迫力や熱の入れようは半端ありませんでした。まさに見応え充分。思いっきり暴れてくれています。
ここからは、本作の敵を考察してみましょう。
ウインターソルジャーにて、人工知能による治安プログラムの在り方を一切否定してみせたMCUシリーズが、続く今作の敵に、なぜウルトロンという似たようなものをぶつけてきたのか。
スカーレットウィッチによる幻覚から深層心理にある恐怖の観念を再び呼び起こされてしまったスタークがキャプテンの制止も聞かずに、ウルトロン製作を進めてしまったことによるものです。もともと協調性の高い人物ではないですし、キャプテンともそれほど仲良しではないですから、仕方ないことでしょう。
それより、やはり精神の根底にまで植え付けられてしまった恐怖は、克服するのが難しいということを思い知らされます。
この恐怖を別の角度から見ると違った意味を垣間見ることができます。
幻覚の中で、アベンジャーズの仲間たちが全滅しているシーンが映し出されますが、そこでキャプテンが「お前が最善を尽くしていれば」と最後の一声を振り絞り息絶えるという、仲間の死を目の当たりにするだけでも辛いのに、それが自分のせいだというのです。これほど、辛いことはありません。
このことからウルトロン作成にスタークを駆り立てたのは、個人的な恐怖という身勝手なものだけでなく、仲間を守りたいという使命感、アベンジャーズを率いる責任感から来るものだったとも理解できます。
傲慢だったスタークの成長を感じさせるとともに、だからこそキャプテンの制止が意味を持たなかったことがわかります。
これらのようにスカーレットウィッチの幻覚催眠は恐ろしい攻撃でありながら、各キャラクターのウィークポイントや生い立ち、抱える不安(ソーに関しては次回作ソー-ラグナロクの伏線とインフィニティジェムの存在を映画に盛り込むためのきっかけでした)を浮き彫りにし、みなが凡人ではなく超人であるからこその葛藤や孤独を持って、人類を救うために戦っていることを教えてくれました。
最近のヒーロー物にはなくてはならないダークナイト的な悩めるスーパーヒーロー演出ですが、ヒーローも決して無敵ではないのだと思い知らされます。
このように幻覚催眠は、ヒーローアイデンティティーを知るための重要な設定に仕上がっているのです。
少し話を戻して、本作の肝心要の敵であるウルトロンが弱いという評価に対して、考察してみます。
そもそも彼はプログラムが実体を手にすることが可能なのだという証拠という役割からは離れられません。そういう敵は、シリーズでも初登場になる上、スタークとバナー博士という天才2人が苦労して作りあげるほど、プログラムが体を手に入れること自体がとても難しいことなのです。
こうした、できるかどうかもわからない実験的な環境下で生まれた敵です。悲しいかな、これでは弱いに決まっています。アイアンマンだってmark??まで改良を重ねまくって強くなりましたからね。許してあげてください。それでもコミックから考えるとウルトロンは、もっとどうしようもない強敵に違いなかったのは事実ですが。
このウルトロン誕生は、この後登場するスタークのお父さんの代からスターク家の名執事として活躍してきたジャーヴィスの名を受け継ぎスタークを始め、アベンジャーズの戦いをサポートしてきたプログラムであるジャーヴィスが、ウルトロンと同じ形で実体を手に入れることができるというエビデンスでしかありません。だから弱いのです。強いはずがない。
しかしながらウルトロン。ボスキャラです。手強さだってしっかり備えています。
まず、体の素材がキャプテンアメリカの盾の原材料であるヴィブラニウムであること。その頑丈さは、シリーズを観ていればもうおわかりですよね。なのでとにかくダメージを与えられない!そして実体は、プログラムなのでネットワーク上に容易に逃げることができ、瞬間的に実体だけどこにでも移動できてしまうのです。これは戦うものにしたら、厄介以外の何者でもありません。強いというより手強いという意味では、ちゃんとボスキャラが成立しています。他にもボスキャラとして相応しいのは、平和のために、平和を脅かす人類を滅亡させてしまおうという極論に走るその思考。これも冷静に思えばとても恐ろしい。人工知能の暴走は昔からよくある敵の設定ですが、iPhoneのSiriや、テスラモーターズやグーグルの自動運転車など人工知能が現実にて身近になった現代だからこそ、敵としての不気味さを重く感じます。
ワカンダ共和国にて手に入れた大量のヴィブラニウムを街に流し込み、大きな塊にしてしまうウルトロン。これを地球に隕石のように衝突させることで人類を滅亡させるという計画。ウルトロンは弱いかもしれませんが、やっぱりボスです。考えることが恐ろしい。
もし計画がうまくいけば、地球はストーンエイジならぬウルトロンエイジに突入です。アンドロイドのみが生き残る地球となってしまうのです。
この怖さ、ウルトロンは充分手強いのです。戦闘には、弱いかもしれませんが。
最後にアベンジャーズが散り散りになり、新メンバーでのアベンジャーズの始まりをキャプテンが「アベンジャーズ!アッセンブル!」と告げる途中のところで終わります。このセリフはコミックファンなら、絶対に早く聞きたいセリフです。
新メンバーの小粒感は否めませんが、またみんな帰って来てくれるでしょう。
さて、次回作はキャプテンアメリカと書いてしまいましたが本当は違います。本当はアントマン!
アントマンは個人的に興味がありません。ポール・ラッドも好きではありません。
なので個人的に次はキャプテンアメリカ-シヴィルウォーに期待しています。
なんせここからスパイダーマン合流ですからね。新スパイダーマン役には、インポッシブルのトム・ホランドが決定したようです。ソニーピクチャーズのエイミー・パスカルも「スパイダーマンをMCUの世界へと連れて行くための、この上ない配役だ」と語っています。ここまで来れば、無くならない話ですよね。信じて待ちましょう。
さぁここからベネディクト・カンバーバッジ演じるDr.ストレンジ、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー2、ソー3、スパイダーマン、ブラックパンサーなどなどに続き、エンドロール前にインフィニティガントレットを装着して動き始めた最後の敵サノス。彼との戦いを描くアベンジャーズ3につながっていきます。
待ち続ける日々が始まります。
3を見る頃まで生きてるかなぁ。
がんばらないとな。