劇場公開日 2015年7月4日

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アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン : インタビュー

2015年6月30日更新
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ジョス・ウェドン&エリザベス・オルセン、一大プロジェクトにもたらした新たなパワーと可能性

「日本よ、これが映画だ」というキャッチコピーを引っさげ大旋風を巻き起こした「アベンジャーズ」から3年。あのヒーロー集団が帰ってくる。シリーズ第2弾「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」で前作に続きメガホンをとったジョス・ウェドン監督と、シリーズ初参戦のエリザベス・オルセンが来日し、本作の魅力を掘り下げた。(取材・文/政氏裕香)

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マーベル・スタジオの人気ヒーローたちが再び一堂に会する本作では、アイアンマンことトニー・スタークが開発した平和維持プログラム“ウルトロン”が暴走し、人類は滅亡の危機にさらされる。アベンジャーズは愛する人を守るため、愛とは無縁の人工知能と壮絶な戦いを繰り広げるのだが、ストーリー展開を大きく左右するのが、オルセン演じるスカーレット・ウィッチことワンダ・マキシモフ。人の心を操り、最も恐れていることを見せる特殊能力は、力自慢のキャラクターたちの苦悩をあぶりだす。

「このキャラクターはいろいろな方向に展開する可能性があったからとてもワクワクしたの。マーベル映画に出演するということは、1本では終わらないということ。だから、本作でワンダの“起源”が描かれたのは、私にとって幸運だった。ワンダは両親を失い、国を失い、正義を求めて行動を起こす。失敗し、学び、成長していく。そういう物語になっているの。ワンダは自分のパワーを完ぺきにコントロールできていないし、どのくらい能力があるのかも把握しきれていない。そこが役者として演じ甲斐のあるところだったわ」(オルセン)

ワンダを語る上で欠かせないのが、双子の兄弟ピエトロの存在だ。オルセンは、米ドラマ「フルハウス」でおなじみのメアリー=ケイト&アシュリー・オルセン姉妹の妹だが、「プロモーションの段階まで、双子の姉たちがいることを特に意識していなかったから、質問されて初めて『そうだ!』って思ったわ」と屈託なく話す。「姉たちは、まるで鏡のようにお互いを映しあっているみたいなの。外見がそっくりなのは不気味だけどね」

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身内だからこその率直な意見を口にしたオルセンは、「双子はいろんな面でバランスをとり合っている」と言う。だが、今回は経験則に頼らずコミックスや映画の脚本にもとづき、ピエトロ/クイックシルバー役のアーロン・テイラー=ジョンソンとともに役作りをした。

「クイックシルバーは、高速で動き、衝動的でキレやすい。逆に私のキャラクターは、地に足が付いている。これは勝手に想像したんじゃなくて、過去も未来も見ることができるのは、大きな何かにつながっているからだと思うの。そういった意味でワンダは地に根ざしている。世界でたったふたりきり、常にお互いを守りあうという設定とかは、コミックスなどを参考にしたわ」

脚本も手がけたウェドン監督は、このキャラクターを作り上げる過程を「ステップ1、リジー(オルセンの愛称)をキャスティングすること。それで完了」と言ったが、洞察力と表現力に長けたオルセンの説明を聞けば納得がいく。クランクイン前に時間をかけて話し合い、できる限りの準備をしたが、撮影現場で生み出されるものも多かったそうだ。驚くことにワンダの見せ場へつながる重要なシーンは即興で作られたという。

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「イタリアで撮影をしていたんだけど、その場にいたのはワンダ(オルセン)とホークアイ(ジェレミー・レナー)だけ。他のキャストは別のシーンの撮影で忙しい。そこで、この2人の本当にすてきな関係性を描くことにしたんだ」

テレビドラマ出身で、脚本・撮影・編集を同時進行でこなす術を知るウェドン監督だからできたファインプレーだろう。撮影現場には、ロバート・ダウニー・Jr.クリス・ヘムズワースクリス・エバンススカーレット・ヨハンソンジェレミー・レナーマーク・ラファロらが集まるわけだが、ウェドン監督は一体どのように豪華スターたちをまとめあげたのか。

「う~ん、大声で一喝かな。これは冗談。みんながいいところを引き出し合い、お互いにインスパイアされて、よりよい演技をしてくれるし、楽しみながら仕事をしている。だから、団結させるのは難しいことじゃなかった。それどころか、仲がよすぎて、いつまでもゴシップ話をしていたりするから、『早く始めるぞ!』って。そっちのほうが大変だったよ」

キャストたちのきずなは、アベンジャーズの連帯感からも感じられる。今回、最強チームの前に立ちはだかるのが、完璧な平和を実現するために人類を一掃しようとする人工知能ウルトロンだ。この危険分子は、「アベンジャーズこそ平和を守る最後の砦」という信念を抱くキャプテン・アメリカと、「アベンジャーズがいなくても秩序が保たれる世界こそ平和だ」と考えるアイアンマンの相違を際立たせる。ところで、ウェドン監督とオルセンは、どちらの平和に対するアプローチを支持するのだろう。

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オルセン「てっきりウルトロンの話をするんだと思ったのに! 一番手っ取り早い解決法じゃない!!」

ウェドン監督「(笑)そうだよね。(ウルトロン風に)人類は全滅してしまえ」

その場にいた関係者の爆笑を誘った後、ウェドン監督は真摯にこう解説した。

「トニーの考え方は、非常に白黒ハッキリしていて、セクシーで、論理的・数学的だ。一方、キャプテン・アメリカは実際に戦争を経験した兵士だから、現実はそんなに割り切れるものではないと実感している。人間の世界は混とんとしていて、暴力や野心といったものも平和とは切り離せないことを理解している。トニーよりも現実的なんだ。だから、どちらの言い分も一長一短だね。ただ、前作を作っている時からトニーは混乱の元凶になりうると思っていたので、この男を悪役みたいに扱ったら面白いんじゃないかっていうのは念頭にあった」

前作で全世界興行収入ランキングの歴代3位の記録をたたき出し、本作も第5位(6月30日時点)に導いたウェドン監督だが、シリーズ第3弾&第4弾「アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー(原題)」の2部作では、「キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー」のアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟にメガホンを託す。大のコミックファンとして知られるウェドン監督にアベンジャーズとの5年間を振り返ってもらうと、ドライなジョークでこう切り出した。

「これ程のPTSD(心的外傷後ストレス障害)になるなんて……(笑)。とにかく、僕のキャリアの中で最も厳しく、最も奇妙な5年間だったけれど、子どもの頃に夢見ていたことが全て現実になった素晴らしい体験でもあった。必死でジャングルをかき分けて進んだ先に、黄金に光り輝く街を見つけたような気分だよ」

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一方、オルセンは来年全米公開予定の「キャプテン・アメリカ:シビル・ウォー(原題)」にも参戦する。すでに自身のパートの撮影は終えているそうで、言葉を慎重に選びながらこんなヒントをくれた。

「みんながスカーレット・ウィッチの面倒をよく見てくれて、私も自分のキャラクターの旅が気に入っている。だけど、内容はかなりダーク。超人たちの派閥が出来て、対立してしまい、何かがぼっ発したら……って恐ろしい状況が描かれるの」

アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」には、多彩なキャラクターたちが世界観を広げ、作品を重ねるごとに歴史を積み上げていく「アベンジャーズ」プロジェクトの魅力が凝縮されており、過去の作品を知らずとも見る価値は大アリ。そして、ウェドン監督とオルセンがもたらした新たなパワーと可能性は、ユニバースのさらなる拡大を確信させる。

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