「稚拙な夢語り……重厚な前作から薄っぺらなアトラクションホラーに [加筆修正2]」サイレントヒル リベレーション3D 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
稚拙な夢語り……重厚な前作から薄っぺらなアトラクションホラーに [加筆修正2]
傑作ホラーゲーム『サイレントヒル』の映画版第2作が遂に登場!
今回はゲーム版『1』の直接の続編にあたる『3』がベースだ。
ハアアアッピバアアアスデエエイ、トゥウウイユウウウ。
(筆者はテンションが上がり過ぎて少々おかしくなっています。
ご了承下さい)
日本公開が待ちきれなかった為、海外出張の合間にBD購入&鑑賞。
が、結論としては……うううううむ、がっかりしたと言わざるを得ない。
手厳しい事を言うが、予算が前作の半分以下($5000万→2000万)
になった事は出来の悪さの完全な釈明にはならない。
(むしろ映像面だけ見れば、半分の予算にしては頑張っている方だと思う)
状況・心情の説明がとにかく拙いのだ。
しかも情感が宿るべきシーンで少しも心を動かされない。
例えば裏世界へ囚われたシャロンが帰還する場面。
夫婦間、そして親子間の愛情の深さが伝わるシーンの筈なのに、
雑な演出と余裕のない台詞回しで台無しになってしまっている。
前作の切ないラストも割とぶん投げちゃった形だし。
中盤、サイレントヒルの街の歴史から前作までの流れまでを
全て口頭で説明するシーンにも辟易。
クローディア/ヴィンセント/レナードの親子関係についても、
彼等の間には愛憎入り雑じる気持ちがあって然るべきなのに、
そういった面は殆ど描かれない。
特にクローディアに関しては、元々は単なる悪役ではくくれない
複雑なバックボーンを持つキャラなのだが、本作では映画前作の
クリスタベラを大量の水で薄めたような悪役に成り下がっている。
(まあ元を知らない方は気にも留めないだろうけど)
疑似親子的な関係にあるヘザーとダリアの対話も、
物語を進める為の機械的なやり取りに終止。
自分の娘の生まれ変わり相手に、何て味気ない会話……。
いや、役者陣は良いのだ。
主演A・クレメンスはスゴい美人ではないが魅力的。
その他も、キャリー・アン・モス、デボラ・カーラ・アンガー、
マルコム・マクダウェル、ショーン・ビーンそしてラダ・
ミッチェルと、実力も存在感もある豪華な役者が揃っている。
しかしながら記号的な役割しか与えられていない
彼らの存在感はことごとく薄い。
マクダウェル演じるレナードなんて狂気が滲んでいて
特に素晴らしいが、出番はほんの数十秒だ。
前作では絶望的なくらいに恐ろしかった“血と錆の世界”
の恐怖も大減衰。順応してる人間も多いし怪物たちを
利用しているシーンはあるしで、
(そもそもあの『治療』って何やるつもりだったの?)
容赦なく人間に危害を加えていた前作と同じ世界とはとても思えない。
表現自体も、不気味な男たちが人肉処理してるシーンを始めとして
全体的に『なんか違う』感が漂っている。
恐くはない。恐いと言うよりはシュール。
クリーチャーデザインも不満。
前作から続投の怪物や原作のフォルムを保っている怪物は良いが、
本作オリジナルの怪物からはおぞましさを殆ど感じない。
そもそも『サイレントヒル』の怪物というより
『ヘルレイザー』の出来の悪い真似事みたいだ。
特に“ミショナリー”を名乗る怪物の造形は、
物語の要所要所で登場するクセに、最悪レベルにチープだ。
終盤のクローディア変身シーン(オマエノ、シワザ、ダタノカー)や
三角頭VSミショナリーのバトルシーンに至っては、
原作ファンにもそうでない人にも???な展開だろう。
なんなのこの『取り敢えず最後に派手なシーン入れときゃ
何となく終わった感じになるんじゃね』みたいな締め方。
ポートランドのエピソードを映像化したり、トラック野郎
トラヴィスを登場させるあたりは原作ファンならではと思うけれど。
以上。前作・原作と比べても不満タラタラな出来。
神への愛。親子の愛。愛する事によってもたらされる
業の重さを情け容赦なく描いた前作とは比ぶるべくもない。
あの圧倒的な負のパワーは今回微塵も感じられず、
単なる薄っぺらなアトラクションホラーに成り下がってしまった。
映画単体の評価としては判定2.5くらいが妥当かと思うが、
いち原作ファンとしての個人的な目線を加味して2.0判定。
史上屈指の名シナリオである『2』の映画化も未だ熱望してはいるが
……2作目でこのクオリティだと……シリーズ継続は難しいだろうなあ。
<2013/3/10鑑賞>
追記:
3Dで劇場観賞後の感想。
大スクリーンで3D観賞すると臨場感が俄然アップ!
冒頭の灰舞う映像、無人の街や裏世界をさ迷う場面の美しさは◎だ。
上でボロクソ書いた後でナンなのだが、本作を最初に
3Dしかも劇場で観なかった事に後悔している。
やっぱり映画は大スクリーンで観るに限る。
ハリーとヘザーの生活が垣間見える序盤、レナード登場シーン、
最後に登場する『ゼロ』『ダウンプア』ネタなど、
ファンならニヤリのシーンだって少なくない。
前作/原作とは違い、ある程度エンタメ寄りの内容だと
腹をくくって観れば、本作は決して最悪の出来ではない。
これなら2.5~3.0くらいには判定上げても良いかなあ、と。
ところで字幕/吹替の両方を観賞したが、ヘザーの吹替を
担当したものまね芸人・福田彩乃が予想外に上手い。
絶叫シーンだけが今ひとつで残念だが、最後の吹替
スタッフロールが出るまで彼女が演ってたとは知らなんだ。
あと、GACKTが○○○○○役ってマジすか(笑)。
〈2013.7.13, 15鑑賞〉