「無用なパトロール警官の毎日の現場でのエピソードの数々が多すぎて、なかなか本筋が見えてこない作品」エンド・オブ・ウォッチ 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
無用なパトロール警官の毎日の現場でのエピソードの数々が多すぎて、なかなか本筋が見えてこない作品
最近多くなったモキュメンタリーの手法に近い作品。モキュメンタリーとは、架空の人物や団体、虚構の事件や出来事に基づいて作られるドキュメンタリー風表現手法のことです。『アポロ18』などがこれに当たります。本作でも臨場感を重視するあまりに、白人巡査テイラーが自分たちロサンゼルス市警の巡査の日常を自分のカメラで収録していく形式で物語が進んでいきます。
テイラーたちが担当するサウス・セントラル地区は、5分に1回の割合で凶悪事件が発生する無法地帯。テイラーが廻し続けるカメラも、相棒との下ネタ談義も終わらぬうち、次々と発生する事件現場に向けられるのでした。
ということで、常にテイラーによるカメラ目線が凄い臨場感を感じますが、何分パトロール中に慌ただしく発生する事件・事故を丹念に追っかけてしまうので、なかなか本筋の麻薬組織に命を狙われる本筋に行き着かないところが、この作品をつまらなくさせています。もちろん、日々のパトロール風景でも、麻薬を隠し持っている密売人と格闘するシーンや火事で燃える家に飛び込んで子供を救出するシーンはそれなりの迫力ではあるのですが、本筋との関わりがなかったり、弱かったりするシーンが続くので、散漫に見えてしまうところが惜しいのです。もちろん麻薬組織の怒りを買うことになる動機としての伏線で描かれるパトロールのシーンもキチンとは描かれてはいます。しかし、従来の起承転結がきちっと演出されたポリスアクション作品と比べるとモキュメンタリー手法に近い本作は、どうしても無用なパトロール警官の毎日の現場でのエピソードの数々が多すぎるというのが正直な感想です。
それと、テイラーによるカメラ映像とは別に、彼らの行動を映し出す作品としてのカメラとかランダムに入り交じっていて、どっちのカメラ目線なのか分かりづらいというのも疑問に感じたところです。登場人物を4台のカメラで360度ぐるりと捉えるカメラアングルは斬新だとは思えましたが。
ただ本作は殺伐としたパトロールのシーンばかりではありません。彼らも生身の人間。任務が終われば、愛すべき家族や恋人と甘い時間を過ごしたりします。本作でも、テイラーの恋人との出会いから結婚するラブシーンや、身重だったザヴァラの妻が出産するシーンなど、任務から離れたプライベートのシーンが映し出され、感動するところもありました。こういうのは緊張が続くシーンの中で、いい息抜きとなりますね。
ところで『エンド・オブ・ウォッチ』タイトル自体が、テイラーとザヴァラの巡査コンビの運命を語っているネタバレなんですね。チラシに書いてある範囲でネタバレしますと、『End Of Watch』とは、作品の中でも出てくる毎日の任務終了時に提出する業務日誌の末尾に書くことになっている決り文句。必ず“E O W(任務時間終了)”の三文字と終了時間を書くことになっているそうなのです。けれども、不幸にも二度と家に帰ることが出来なくなった場合、“E O W”の三文字は殉職を意味する警察内部の隠語となっているようです。
そんなタイトルがつけられている以上、チラシに書かれている以下の結末は推測がついてしまいそうです。それは麻薬組織から暗殺指令を受けたメキシカンギャングたちが、二人の立ち寄り先に待ち伏せして急襲し、荒らしのようにマシンガンを二人に目がけて降り注ぐというラストなんです。
しかし、それで安直に殉職しては、映画になりません(^^ゞ雨あられのような弾丸をかいくぐって、警官コンビは決死の反撃を開始します。誰もがアレレと思う、意外な結末はぜひ劇場でご確認ください。