劇場公開日 2013年4月19日

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「リンカーンの人間的な魅力に溢れる作品。」リンカーン Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5リンカーンの人間的な魅力に溢れる作品。

2014年5月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

楽しい

知的

良かった。

アメリカ合衆国憲法第13条の修正が主題の本作。
リンカーンの政治家としての側面、家族の長としての側面が重点的に描かれているため、伝記上の人物を血の通った人物として感じられ、それだけで新鮮でした。

政治家の側面。
作中のリンカーンは語りかけ理解を求めるスタイル。
彼の経験、または歴史上の逸話を基に議論を整理し相手に理解させる。
主演のダニエル・デイ=ルイスは容貌が似ているだけでなく、話し方、間の取り方、そして身振り手振りが非常に上手く作中のリンカーンに惹き込まれます。
また、彼が理念の実現のために我々が持つイメージとは異なる政治的対応を採る姿は驚きであり新鮮でした。

そして家族の長の側面。
本作では妻、長男、四男が登場しますが、彼らはリンカーンの人間的な面を代理で表現する存在と言えます。

長年連れ添う妻は、彼が表面には出さない悲しみ、苦しみを代わりに表わす。
大学に通い離れて暮らしていた長男は、世間の評判に晒され身悶えする姿を代わりに表わす。
幼い四男は世間から隔離された存在として、彼が本来持つ家族への愛情や接し方を示す存在となっています。

リンカーン大統領を多面的に描く本作。
惜しむらくはアメリカ国民ならば当たり前のリンカーンに係る知識が不足していたこと。
リンカーンの経歴(特に南北戦争前後)や奴隷制度の現実を前知識として持っておくと更にグッとくるのでは、思います。
奴隷制度の現実を描いている作品としては、最近の作品であれば「ジャンゴ 繋がれざる者」、旧作であれば「マンディンゴ」や「ヤコペッティの残酷大陸」があるかと。

作中、自らが信じる大義のためとはいえリンカーンが踏み越えなかった一線を意識して観る見方もあり、色々な発見のある作品でした。
少なくとも作中の彼は自身の承認欲を満たすことが目的では無かったのは確かかと。

オススメです。

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Opportunity Cost