「コントロール・フリークになる前に」ルビー・スパークス arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)
コントロール・フリークになる前に
19歳で出版したデビュー作が絶賛され天才作家ともてはやされたカルヴィンの創作上の行き詰まりはまたかれのプライベート・ライフの行き詰まりと重なる。
有名になってしまったことの代償なのか、それともカルヴィンの性格的なものなのか、ともかく彼は他人と関係を築くのが上手いとはお世辞にも言えない、極めて不器用な青年だ。
彼にもその自覚はあるが、相手に対するこうして欲しい、こうあって欲しいという期待ばかり大きくて、それが叶えられなかった時の失望に上手く対処出来ない。
執着が大きければ大きいほど相手に対する期待も大きくなり、失望もまた大きくなる。
しかし、そんな彼の前に夢で見た理想の恋人ルビーが現実に現れる。
そして、タイプライターひとつで彼女を自由に動かすことが出来るのだ。
誰かの思い通りにコントロールされること、誰かの言うなりになることを歓迎する人はいない。
自分の理想を相手に求めても、それは相手を追い詰めることにしかならない。
お互いがありのままのお互いを受け入れることでしか関係を継続することは出来ない。
肝要なのは、譲り合い、あるいは妥協。
相手あるいは自分を徹底的に追い詰めてしまう前にそもそも誰かをコントロールすることの馬鹿馬鹿しさ無意味さに気付かなければその先にあるのは孤独だけなのだ。
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