「新旧の相互理解。」県庁おもてなし課 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
新旧の相互理解。
原作は未読。
劇中に出てくる観光特使を依頼される小説家って、おそらく
ご本人の有川浩なんだろうなと思ったら、やはりそうだった。
実際に依頼されてからこの小説を書いたのだそうだ。
こういう身近なネタから着想を得て、一般人にお役所体質の
批判や皮肉を交えながら解説してくれるのは非常に面白い^^;
そもそも役所で働いている方々に民間感覚を持て。と言った
ところで、実際に民間で働いてみないと分からないことだし、
逆に民間人に役所の事情を理解しろ。といわれても予算関係
から総てに至るまで、その筋の苦労は分からない^^;
だからこんな風に例え小説ではあっても、裏事情というのは
描いてくれないと伝わりゃしないのだ。観光振興という事業も、
口でいうほど簡単なはずはなく、決めたは決めたけど、発足は
したけど、さてどうしましょうか、この予算で…?なんだろうな。
掛水という名前(錦戸)だけに、水を掛けられた時には笑った。
まさかいきなりあんなことはしないだろうに?と思いながら、
その後の佐和(関)の態度が一貫してああいう女の子だったので
それはそれで納得^^;
まぁ明神(堀北)から見れば、なんて女だ!となるところだけど、
意外と男ってああいう女の子に弱かったりする(まさに謎だけど)
今作の監督&脚本(三宅&岡田)コンビは「阪急電車」でも同じく、
女性心理の描き方が巧い。なぜそこまで女ごころが分かるの!?
と思うくらい、いじらしい女の子の気持ちが満遍なく再現される。
おそらく男性陣から見れば、分からないことだらけだろう(爆)
(なんでそこで不機嫌になる?とか、なぜそこで車降りる?とか)
女の子の気持ちの深層は推して計るべし。
偉そうな小説家・吉門(高良)だって、な~んも分かっちゃいないし。
いわゆるKYな男性陣、お役所体質、に代わって、
有意義な意見を発するのが若手女性だ、ということで採用される
明神ではあったが、このご時世、たかがアルバイトで有能な人材が
苦戦していることもよく描けていた。この仕事を失ってしまったら、
次はどうしよう?仕事がしたいのに、もっと必要とされたいのに、と
これは高知県だけでなく今の若者の総声だと思う。若者が仕事を
得られない現状が、まず何とかならないといけないと思うのだが…
少し前のとあるドラマでも高知県が取り上げられていた。
観光面だけでなく、地域産業や老人福祉などにも若者勢がどんどん
入り込んでは、頑張っている様子が活き活きと描かれていたけれど、
そんなこと簡単にできるワケないだろう、幾らかかると思ってんだ?
なんていう、古い古い気質体質を根本から覆していかないと、時代は
次代を築いていかれない。今作にも描かれるように、奇抜な発想
(パンダ招致とか)は例えムリでも宣伝する価値あるんでは?と思う。
首都圏でも下町を盛り上げるために、地元商店街とか地域振興会が
こぞって若者(大学生など)を誘致し、再興のお手伝いをしてもらって
いる…なんていうニュースがよく流れている。これこそ一石二鳥。
最近、自分にも増えてきた言葉なんだけど^^;
できない、行けない、めんどくさい、疲れた、…ばかりだと反省。
中高年、気力だけは十分でもパワーは若者の方が絶大なんだから。
頼れるところは大いに頼り、新旧の相互理解に努めなければ。
おもてなし。とは、する側はもちろん、される側にも気概が必要。
歓待の心は、それを積極的に楽しもうとする気持ちに反映される。
高級感を出し演出に拘り一切の失礼がないように、だけではない。
おもてなし課の仕事が大胆にクローズアップされるかと思いきや、
ベタなラブストーリーが大半を占める作りにはなっているものの、
ゆったりと心癒される景色の素晴らしさに、これだね!と思える。
(KYを久々に聞いたけど、ああいう頓珍漢ぶりがまたリアルで楽しい)