「この姿をあと何度観れるだろう」人生の特等席 harukitaさんの映画レビュー(感想・評価)
この姿をあと何度観れるだろう
クラシックな作りの映画。安心して観れると思います。やはりイーストウッドの存在が大きいですね。
話の主体は3つです。
1つ目は年老いた野球スカウトマンのガスの話。
昨年公開した「マネーボール」の真逆の立場です。マネーボール理論に共感出来なかった人には良いのではないでしょうか。
2つ目はガスとミッキーの父娘の問題です。
ここで面白かったのは「食べ物」のシーンです。
いわゆる「フード理論」ですが、福田里香さんが以前ラジオで「フード理論」というものを話しているのを聴いてから、劇中の食のシーンに注目するようになったのですが、本作でもガスとミッキー父娘の心の距離を上手く示していました。肉を焼いているガスがミッキーに「お前も食うか?」と言うとミッキーはそれを取り上げ流しに置いてしまいます。とりつく島がない感じです。
次のシーンは球場でミッキーがホットドッグを2つ買います。1つは貰えると思ったガスにミッキーは「2個とも自分が食べる」と言います。ミッキーがまだ心を開いていないことを表しています。
次は朝食のシーンです。2人でテーブルに座ってガスは食べていますが、ミッキーは食べ物をいじっているだけで口には入れません。フード理論的にはミッキーはまだ腹の底を見せていないといったところでしょう。しかし2人でテーブルに着いただけでも2人の距離は縮まったと言えるでしょう。
そしてラスト。父娘の問題を乗り越えた時ガスが言います。「ランチでも行こう」と…ミッキーも快諾して2人で歩き出します。実際には2人の食事のシーンは出て来ませんが、2人の心が打ち解けたことを表すシーンです。
こう観ていくと、また違った見方ができて楽しいですね。
福田里香さんに感謝です。
そして3つ目はミッキーの恋愛です。
この3つのテーマがラストに集約されていきます。
なんかホッとすると言うか、いいなあって感じる映画でした。イーストウッドの姿をスクリーンで観るだけでも価値があるんですけどね。