「三池作品のおいしい味が巧くでているなぁ~!」藁の楯 わらのたて Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
三池作品のおいしい味が巧くでているなぁ~!
この映画は娯楽作品として充分に楽しめる作品だった。
現在同様に公開中の邦画アクションヒット作「図書館戦争」と比較しても、断然こちらの作品が良い!
この2作品は、共に現実には絶対に起こり得ないエピソードのフィクション作品だ。
となると、それをどこまで、シラケさせずに観客の気持ちを引っ張る事が出来るかで、映画の良し悪しが決定する。監督の腕の見せどころだと思う。
正直、私は、三池監督作品は、極道やら、喧嘩で殴り合いのアクションが沢山出て来る映画のイメージがあったので、これまでちょっと苦手意識があって敬遠していた。
それが「一命」で説得力の有る良い作品も撮る監督である事を知った。そしてその後彼に期待した。しかしまた「愛と誠」だ。三池監督には悪いのだが、自分には全く肌が合わず駄目な作品で、「愛と誠」は珍しく映画を最後まで観られなかった。
余談だが、最後まで映画を見ないのは、私の映画鑑賞歴の中でもかなり珍しい事だ。
暴力的な画面は苦手なタイプの私なのだが、しかし逆に考えれば、本作は最も三池監督が得意とするアクションシーンの展開が可能な、迫力の有る画作りや、スピード感が全面に出る作品でもある。音楽も巧く効果的に使われていた作品だと思う。
主役の大沢たかおの存在感及び、彼の芝居は文句無くカッコイイし、巧いと思う。
今回の作品で最も驚かされたのは、永山君の存在だ。「ふがいない僕は空を見た」のあの青年とはまるで別人。この人こんなに違うキャラを演じ分けて、イメージの固定しない芝居をするチャレンジャー俳優である事を知った。もしかすると「ふがいない~」の方が冒険していたのかも知れない。
そして、トメは何と言っても山崎努だから、彼の事は言う迄もなく、映画全体を引き上げる底力だよね。この人が出ているだけで画面に緊張感が出るし、評価がアップするのは当たり前だ。彼は俳優座や、文学座を経て50年以上のキャリアを持つ大ベテランだ。
映画では伊丹作品で常連さんだった。最近伊丹監督作品にまたスポットが当り、彼の作品の良さを再評価する声が出ている。この事は、伊丹監督が好きな自分にはとっても嬉しい。
そしてもう一つ忘れてならないのは、この映画の悪役清丸を演じた藤原君の怪演も見ものです!変質者である犯人のそのキャラクターとしての、掴み処の無い恐さ、不気味さを巧く演じていたよね。SPも刑事達も、結果的には精神的に、彼の連発する予測不能の言動に翻弄されてしまう。犯罪者とは、一般人には理解出来ないマインドを持っているが故に、逆に善人の理性を狂わせ、侵食して行く恐さを巧く清丸が演じていた。
そんな異常者を演じる事が出来た彼は、きっと俳優としても面白い仕事が出来て良かっただろうと思う。
パトカーなどが沢山破壊されるカーチェイスも、「図書館戦争」より数段上をいく。
やはりこう言った、アクションや、殴り合いシーンに於ける、迫力とテンポのある作品を撮るのは、三池監督にお任せで間違いはないですね!今最もクールでホットな邦画と言ったら、この映画をお薦めですね!