舟を編むのレビュー・感想・評価
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あったか〜い気持ち
観てる間中ほっこりとあったかくて、ちょっと声出して笑っちゃう、そんなシアワセ。
映画の後こんなふうにホカホカした気持ちになれるって在りそうでなかなかないかもしれない。
それにしても松田龍平という役者は!
演じるのはいつもどこかヘンな人ばかり。
でも彼がスクリーンに現れると、どうしても気になる。そのキャラクターに最初に感じた嫌悪感が消えて、いつの間にか応援してしまう。
何でだろう?声なのか?たたずまいなのか?不思議な魅力を放つ俳優。
この映画でも
かぐや姫のように現れる宮崎あおいはホントに魅力的だけど
ひょろひょろと営業に廻る松田龍平はなんともキモい。
それが観てるうちにどんどん素敵に見えてくる。
何年もかけて辞書を作る、という地味で果てしない仕事も登場人物の成長とともに壮大なスケールとなり、観るものの心を沸き立たせる。
自分ももっと一所懸命に働いてみよう。
そんなふうに思えたのはこの映画のお陰です。
アスペな主人公ですが
アスペな主人公ですが、周りを含めてほぼすべての出演者が彼を温かく見守る善人なのが自分としては好きな部類です。
内容は延々辞書を一から作るという一見地味なストーリーなのにダレずに長時間見せるのは素晴らしいと思いました。
小道具などにも手を抜いてないので冷めることもなかったです。やはり映画でなくてはできないことなんでしょう。
少しだけ気になるところとしては、女性の扱いが・・・。
香具矢がなぜ光也が好きになるのかどうも理由が読めないのと、タケさんが亡くなるあっさり感。岸辺みどりのポジションというか伏線が無さすぎな気が。
あと、余計なことですが。昔の Excelでは 6万5千行までしか扱えなかったですよね。実際やるとしたら苦労しただろうなぁ。
地味を強みに変えた秀作
もともとボソボソしたセリフ回しの松田龍平が、役柄としてもモソモソしたしゃべり方をする役をやったらどうなるか。その回答が本作に出た!
結果的にユニークで魅力的なキャラクターになったと思う。言葉に生きがいを感じる辞書編集者・馬締光也の誕生である。
そして本作がすばらしいのは、辞書編集という地味がそのままイメージされる題材を使って派手さを極力控えめに映画作りできる環境を用意できた点。
だからこそ、鉛筆でメモする音、ページをめくる音、包丁を研ぐ音、煮物を食べる音など、日本映画独特の音による映像表現に成功したのだと思う。
バックにサウンドを使わず、映像と場面の音だけを頼りにキャストの感情伝わってくるところは、日本映画の美しいところ。
これが辞書作りのプロモーション的な部分に光を当ててしまったら映画『ハゲタカ』になってしまうし、働いている人そのものに着目してしまえば『沈まぬ太陽』になってしまい、日本映画が持ち合わせている叙情的な要素がカットされてしまっただろう。
音楽で緊迫感を与えたり、焦燥感をイメージさせたり、また極端な構図のカットが多用され、まるでアクション映画のような演出になったに違いない。
そんなポジションのオダギリジョー演じる西岡は存在する。確かにいるのだけど、そこをスルーせず取り込み、そしてメインはやっぱり地味に辞書編纂に向かうという筋立てがすばらしい。
宮崎あおいも、大河ドラマのツンケンした部分がどうも印象に残ってて不安だったのけど、そこはそれ。芯の強さはそのままに、純粋なハートの馬締に打ち抜かれる割烹美人の役を見事に演じきった。
個人的にはこっち路線をバシバシ出してくれたらと思う。根がキツい人なのか、勝負どころに立つような役どころは、強烈過ぎて引いてしまうのだよね。
その辺の適切なアクセントという点では、オダギリジョー&池脇千鶴のコンビもすばらしい。
会社のわざとらしいよそよそしさや、オフのときのラブラブな感じはリアリティをたっぷりと注ぎ込む。
メイク落とし真っ最中の池脇に足を絡めて愛情表現とか、なんかもう見てる方が気恥ずかしくなる愛情たっぷりの親しさ。こういうのがサイドで入ってくると、作品に情感がグッと増す。
そして何といっても馬締の住んでいる下宿がすごい。
舞台設定では1995~2010年にまたがる時代だというのに、こんなのあるかいなと言いたくなるような古ぼけた下宿を作り上げた。
いかにも安そうなタイル、刷りガラスの入った戸、階段、味のあるゼンマイ時計など、よくもまぁ、こんなアナログ住居を生み出したと感心するほど。
でも、それがまた馬締のアナログな時代感とよく合う。いささかやりすぎじゃないかと思うほどだ。
しかし本作で一番すばらしい点は、編集部の面々が語るセリフのはしばしに言葉への愛着に満ちている点。
これの大元は原作者三浦しをん女史によるのだと思うけれど、スクリーンを通して伝えてきたのは、主幹・松本朋佑を演じた加藤剛をはじめとする役者陣と石田裕也監督の実力だろう。
地味にしみてくる言葉への愛着。これは辞書作りをテーマにしている本作だからこそ、ウソっぽくなく伝わってくる。映画構成的にうまい仕掛けだ。
アクションやカット、バックサウンドに求めず、日本的な叙情表現を出し切った本作は、ひさびさに納得いく日本映画。
それもこれも地味な題材を扱った原作があって、その映画化だということで観客は妙な期待をせず、製作側ものびのびやれたのが功を奏したのではないだろうか。
「大渡海」という辞書作りをプロジェクトほにゃららにせず、じっくりカメラをすえたドラマに観客は引き込まれてしまうだろう。
では評価。
キャスティング:10(こんな豪華な役者陣でバランスの取れた配置がすばらしい)
ストーリー:7(骨子としては地味の極みなのに、退屈しない流れ)
映像・演出:9(最新カメラの美しい映像を使いながら、しかし役者そのものと音にこだわった演出は、とても日本的な叙情感にあふれている)
美術:8(編集部の雑然とした様子や「大渡海」のプロモ用ツールなど、リアリティかつ本気)
セリフ回し:9(ボソボソしているけれど伝わる。誇張していないのに響く。そんな言葉遣いがたくさん)
というわけで総合評価は50点満点中43点。
映画は好きだけど邦画に絶望している人にこそオススメ。
きちんとした日本映画をひさびさに楽しむチャンス。
買って読みたい「大渡海」
「右」と言う字の、馬締君の語釈が何ともおかしな雰囲気であったが、とある辞書には「北を向いて東の方」と書いてある。馬締君の独自解釈ではなく、辞書の語釈を思い出していたのか。
本作で扱われる辞書の「大渡海(だいとかい)」
「ら」抜き言葉や「憮然」等の誤用への言及もあり、誤用でも誤用として注釈をつけて語釈する編集方針。また、現代用語を取り入れて・・・とあるが、ちょっと、どうなのかなとも思う。収まりきるのだろうか。
作中、ファッション誌からやってきた女性編集者がファッション関係の語釈のチェックなどを任されて、採取された語句を見て「いつの時代?」などと言っているあたり、時代の篩(ふるい)にかかっていない語句を取り込むのは、いささかの不安を感じた。入手したい気持ちも湧くのだが・・・
語釈について、堂々巡りになっている語句も紹介されていたりするが、観客へのサービスだろうか。堂々巡りにならないようにするのは語釈の基本にも思えるので。また、辞書に使う紙の質感について言及しているのは、辞書好きとしては、ほほえましいエピソード。電子辞書になく、紙の辞書で特長的なのはパラパラと無意識的にめくりながら見られるところ。紙の厚さ、質感は辞書選びのかなり重要な部分と思えるので、「辞書作り」の映画としては外せないところだろう。これも編集者に言われるまでもなく、製紙業者なら分かって然るべきところかもしれないが。
原作未読
言葉に対する造詣は深そうだが、実際に言葉を使って他人とコミュニケーションを図るのが苦手な馬締君。言葉は達者だが辞書編集部としては言葉に対する知識が浅そうな西岡が対照的。馬締君は実際にいると馬鹿にされそうな人物だが、出版社にいてなぜ最初から配置されなかったのか不思議なくらいにハマる。映画的展開とも言えそうだ。
香具矢を娶るのは予定調和的に感ずるものの、周りが盛り立てていてほほえましい。特に香具矢のいる店が分かった途端に予約を入れる早業が面白かった。
監修の先生が志半ばで倒れるのは残念だったが、あまり湿っぽさもなく良かったと思う。初版発表なるも、さっそく改訂作業に取り掛かろうとするのが、辞書編纂の使命だろうか。ラストは余韻のある終わり方を期待したが、安直に「子供ができたの」的な終わり方ではないので、良かったようにも思う。
古い下宿屋と辞書編集室(こちらも旧社屋?)で書物に囲まれながらのドラマで、全編が余韻と言うべきか。
助演男優賞は加藤剛さんで!
淡々と流れるようなストーリー。
原作未読。
あまり期待していなかったのですが、ほんのりと笑わされじんわり泣かされ予想を裏切られました。
松田龍平演じる馬締くんの、不器用で真っ直ぐなところがとっても可愛かったです。
大家のおばあちゃんに「言葉を扱う仕事してんだから、喋んなきゃ!」と言われて、勇気を出して西岡とコミュニケーションを取ろうとしたり、
(気持ちを伝えるなら)手紙がいいんじゃない?と言われて、果たし状のような恋文を書く馬締くん。見ててニヤニヤしてしまいました。
どもりながら話すときの、なんとも言えない手の動きも、何だかリアルですごく良かった。
脇を固める加藤剛さん、小林薫さんの名演技が光っていました。
加藤剛さんの「言葉の意味を知りたいと思うのは、その人の発言の意味を正確に知りたいと思うこと。それは、その人と繋がりたいということ」(詳細失念)という台詞が強く印象に残っています。
活字好きには心地よい映画
辞書を作る話で2時間以上かけて何を描くのかと思っていたら、これが予想に反して大変面白かった。客の入りはあまり良いとは言えなかったが、これを観に来る人は自分と同じ活字中毒とまではいかなくとも、本を読むのは好きなのだろうなと勝手に思い込んで、同じタイミングで起こる笑い声を聞きながら、久々に客席の一体感を感じて心地良い時間を過ごすことができた。
ただ正直に言って光也と香具矢が相思相愛になるのは少し唐突な感じがする。以前から時々タケさんの所へ来ていて顔見知りというならともかく、この点はもう少し丁寧に描いてもよかったのではないだろうか。
辞書作りは根気というだけに止まらず、言葉に対する愛着(執着)がないと務まらないことがよく実感できた。それに10年以上も利益を生まない事業を続けさせてもらえる環境も必要だ。実際に今の出版社にとって辞書部門は経営的な旨味はないのかも知れないが、商売だけでは割り切れない文化事業として、今後も存続してもらいたいと願う。
魅力的な人たち
辞書を作るという気が遠くなるなるほど時間がかかり、地味で根気のいる作業を題材にしたこの映画、ヘタをすると退屈で眠たい作品になっていたかもしれない。
しかしそうさせなかった作り手たちは素晴らしい。
「川の底からこんにちは」で、主演の満島ひかりちゃんをはじめ、演者の魅力を引き出した石井監督が、本作でもまた登場人物を魅力的に映し出している。
私は主役が魅力的であるというのは、良い映画の条件のひとつだと思っている。
石井監督という人は人間を魅力的に描くのがとても上手だ。その魅力的な登場人物たちに引っ張られてこの映画は退屈しないとても楽しい映画になっている。
上映時間は133分と決して短くない映画なのだが、この人たちのことをもっと観ていたい気持ちになった。
それほどこの映画の登場人物たちは魅力的で好い人たちばかりだった。
ストーリー的には大きな起伏はありませんが、主役の馬締光也にとっては大問題ということが起きたりして、その辺りの内部描写を追いかけて観ていくと、笑えるし、泣けるし、観賞後もとても良い気持ちになれると思います。
好きな作品でした。
地味な話だけど、面白い。
なるほど、こうきますか。
馬締が、松田龍平と聞いた時は「どうかな~」と思いましたが、中々どうして。結構いい仕上がりになっていますね。さすがです。
凛とした美しさを持つ女性には、やっぱり宮崎あおいは外せないですよねぇ。ただ、「自分、不器用ですから」と言いそうな、女高倉健の雰囲気は、彼女をしても、表現しきれなかったような気がします。中々難しい表現なんでしょうね。
軽妙な西岡を誰が演じるのか気になりましたが、オダギリジョーが上手く演じています。なるほどね。確かに、一見軽薄だけど、実は真面目と言う感じは、オダギリジョーの雰囲気であるかもしれません。
そして、加藤剛と八千草薫。この二人には、思わず唸ってしまいますね。加藤剛の重厚感と、八千草薫の淑やかさがあって、この作品は逸品になっているんだと思います。
ピース又吉が出ているのは、最後のクレジットで気が付きました。って言うか、何処に出てた?
原作も読んでいるんですが、結構、原作に沿った内容になっていると思います。ただ、時間の都合のためか、原作での岸辺と宮本が付き合っていく件などは、完全に省かれていますが。あのあたりも、辞書編集にまつわる濃厚な人間関係の表れとしては良いと思うんですけどね。
辞書編纂というお仕事
言葉以上に伝わってくるものが
波に整頓されてゆく、、
面白かったです♪
わはは!という 笑いではないのだけれど、
まさに辞書のように、笑いが整頓されてゆく感じ。。
ちょっと 力が弱いというか、
まじめくん のキャラクターが映画には向かない気もしたけれど、
最近 少ないタイプの日本映画として 楽しく見ました☆=
しかも、泣けます!!
時代遅れ のようでも あった辞書編集部が、
まじめくんを中心に 活気をおびてゆく、、
周りの素敵なキャラも含め、応援したくなりました。^-^
清々しい気持ちになれる一作かと思います。vv
大渡海を買いたい。
松田龍平と宮崎あおいのおかげで応援は出来るが、
正直、恋愛パートは余計に思えた。
辞書作りにのみ邁進する群像劇にしてほしかったな。
締めの言葉がしっくりこないエンディングが微妙。
とはいえ、
長い歳月をかけて作り上げた辞書"大渡海"をめぐる仕事ぶりは、
薀蓄とユーモアに満ちていて楽しい。
語釈(意味や解説。言葉の意味を説き明かすこと)を練りながら、
用例採集ノートを埋めてゆく作業、面白い。真似したい。
喜怒哀楽を煽りたてずに落ち着いた筋運びの世界感のもと、
辞書が抱える奥深さと、
努力して積み上げてゆく地味だけど何より素晴らしい生き方が、
はっきりと浮かび上がってきて、
言葉を紡ぎつつ静かな活気みなぎらせる人間讃歌に結びついていて好き!
期待以上
松田龍平が好きなので試写会に申し込んだものの、
内容が地味そうなので眠くならないか心配でした^^;
でもそんな心配は無用の面白い映画でした。
辞書作りってあんなに期間がかかるものなんですね。
長い年月の間の人の生き死にも描かれていてしんみりしました。
元々紙の辞書が好きだったのですが、最近はもっぱらパソコンで調べ物をしていました。
この映画を見て、古い辞書を出してきてまた活用したくなりました。
気づくと自分も映画の1部になっている錯覚を覚える作品だ!
何と言っても、この作品は松田龍平ファンと、宮崎あおいファンにはたまらなく魅力的な味の有る作品だと思う。
物語は、1995年に「大渡海」と言う国語辞典の編集出版をする事になった編集者の地道な日常の仕事振りを通じて、仕事・結婚・人生の意味や、そして生き甲斐、或いは現代の日本の姿を、言葉と言う人間にのみ与えられたコミュニケーションの手段を通じて、今の日本を生きる人々の姿を浮き彫りに描こうと試みた辞書編集者達の15年間の静かな歩みを時にユーモアたっぷりに、そして薄紙に水が沁み込んでいく如く、淡々と静かに観る者の心の中に徐々に浸透させていく映画だが、この彼らの静なる情熱が、一見すると情熱と対局するかの様に見えるのだが、彼らの静の世界が動の世界を上回る、情熱を帯びた生き様として、終始、静かに見つめる事で更にその情熱が画面から溢れ出す。
地味な物語なので、これと言って盛り上がりのあるシーンなども特に無いのだが、それでいて松田演じる馬締君と言うキャラが、特異なキャラの為に、その日常の生き様がコミカルに見えてきて、何時の間にか気が付くと、この作品に飲み込まれているのだ。
そしてあたかも、自分もこの編集室の1員として入社しているような錯覚さえ受ける、力作と言う事が出来ると思う。
今もっとも、俳優として良い芝居を見せてくれる松田龍平と宮崎あおいちゃんの2人に加えて、オダギリジョーも久々で、松田と真逆のキャラをとても美味しく演じていたし、加藤剛、八千草薫、渡辺美佐子がしっかりと若い俳優達を包み込む。
私達人間は、自己及び、他者とのコミュニケーションを図る上で、その総てのコミュニケーションの手段の基本は、言語の介在が無くしては何事も生れないものだが、そんな身近過ぎる言語を人は無意識に使い、言葉本来が持つ意味や、正しい言葉の使い方をせずに、誤用し、乱用している。しかし、人は本来日常生活に於いて、言語を丁寧に正確に操る事で、自分の今の感情及び、その人の本当の気持ちを自分自身が理解し、他者に対しても、自分自身の気持ちを伝え、或いは他者の気持ちを理解する事も出来る様になるのだ。
言うなれば、自己認識の基本とも言うべき言語を、母国語であるが故に、無意識に使用しているために、本来言葉として正しく表現して認識化する事で得られる自己認識も、かなり誤認識であったり、無意識の自分を顕在意識で、自己理解する事が出来るようになるためには、母国語であっても日々の生活で、話して使う練習を積まないと正しいコミュニケーションが出来ないと言う事を改めて再認識した。
同じ日本語でも、確かに、その使う人の微妙な認識や、意識のずれによっては、自分が意図する認識と異なる印象を他者に与えてしまう。そんな言葉に纏わる人間同志の気持ちの疎通が軽妙に可能になったり、その逆になると言うこの言葉の面白い世界を再現して魅せてくれる。
初めに言葉ありき!まさしく言葉が無ければ人は自分を認識する事さえ不可能である。
その言葉と言う人間に授けられた魔法のツールの魅力を辞書で無く映画で堪能しよう!
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