高地戦のレビュー・感想・評価
全25件中、1~20件目を表示
非日常の世界にあるプロップの使い方が見事。
〇作品全体
登場人物それぞれが抱える過去や因果と、プロップの使い方が見事な作品だった。
例えばシン大尉。初登場シーンでモルヒネ中毒であることを見せて、痛みに鈍感な「戦争中毒者」の雰囲気を作り出す。味方に手りゅう弾を投げさせて煙幕を作るシーンでは、モルヒネというプロップによって痛みに鈍感になっているシン大尉が、自ら突撃していくことで異常さがさらに演出される。勇猛果敢ではあるがその無謀さの裏に潜む兄との関係性、そして過去。「異常」の霧が徐々に晴れて見えてくるシン大尉の人間味を「心の痛み」というキーワードに乗せて描き出しているのが見事だった。キム中尉が死亡し、涙するシーンはまさしくその「心の痛み」というキーワードを上手く使ったシーンだったと思う。モルヒネというプロップが持つ「痛みを消す」という意味合いを昇華させて物語に組み込んでいて、印象に残った。
北側の兵士と酒やタバコをやり取りするところは、特にプロップの使い方が見事だった。テギョンの写真を通じて作られ、そして見えてくるシンとテギョンの関係性や、サンオクが作った歌の歌詞を通じて共有される両軍兵士の停戦への想い、ラストシーンでシンとヒョン中隊長が分け合う酒とタバコの火。直接的な邂逅はほとんどなく、プロップのみで積み重なっていく因果関係がすごく人間的で、相対してセリフで伝えあうよりも心にスッと入ってくる演出だった。
登場人物が次々に斃れていき、いなくなっていくからこそ際立つプロップ演出。その場に残された「物」が伝えてくる独特な情感と、「物」によって時間差で露わになる因果関係に、ただただ息をのむ映画だった。
〇カメラワーク
・トラックバックのカットがめちゃくちゃカッコいい。戦争映画において大人数で接近した戦闘シーンをトラックバックで見せるのってハッタリがバレる危険性があるからあまり見ないんだけど、序盤の戦闘シーンでは容赦なくトラックバックしててびっくり。山岳地帯での戦闘ってどうしても空間が窮屈になる(それが魅力でもある)んだけど、そのトラックバックではスケール感がすごく出ていて新鮮に映った。
あとはキムが中隊長を撃ってしまった直後、シンがキムへ銃口を向けるカットのトラックバックが猛烈にかっこよかった。トラックバックカットまでの素早いカット割り、キムの頭部へ向けられた銃口を見せてゆっくりトラックバックしてシンが銃を向けている構図をフルショットで映す。意図的に作った乱れた秩序のカット割りから一気に映像的に見栄えする、整然とした構図になる快感があった。
・アクションカットのブレ演出とかスローモーション演出は2020年に見ると古さしかねえな、となった。当時見ていればなにも引っ掛かることはなかったのかもしれない。最近10年前以上の作品を見ているとき、映像の特殊効果が薄いほうが映画が作られた時代の「生っぽさ」を感じられていいなとなる。
戦争映画はそのスケールの大きさからどうしても映像的な迫力であったり悲惨な描写に目が行きがちだけど、一気に個人の感情へクローズアップできるプロップ演出も見どころの一つだ。
写真、ドッグタグ、手紙…そこにいないからこそ、そこに宿った想いが際立つ。強烈な非日常だからこそ強く意味を持つプロップたちをもっと意識して戦争映画に触れていきたい。
朝鮮戦争を知る
全部じゃないが、何となく見えた。戦争ネタはあまり好きじゃないが面白かった。
お互い早く終わって欲しかったんだね。
じゃ誰が戦争したかったん?
偉い人同士が個人で殺し合いすれば早くかたがつくよね。
コ・スがイケメンすぎた。
凄い映画だ。 おすすめです。 ドラマ「怪物」のシン・ハギュン、ドラ...
凄い映画だ。
おすすめです。
ドラマ「怪物」のシン・ハギュン、ドラマ「シグナル」のイ・ジェフン、チョ・ジヌン。
特にイ・ジェフンの存在感が凄い。
監督は、「タクシー運転手」のチャン・フン。
むなしい
内通者がいるのではないか?という
疑いを調査するために配属される流れから
予想外へと展開していき
悲しい結果へ。
他にも戦争中の敵と味方が共通の時間を持つという
映画はあるけども。
これはその中でも戦争してるのが
元は同じ国のもの同士だし
言葉だってちゃんと通じるし。
素敵な時間を持ててそれで終われたら良かったのに。
戦争とはなんと人心を踏みにじるものなのか。
停戦の報があってもまさかこんなことになろうとは。
そして今現在も
あくまで停戦中であって終戦はしてないのだ。
どうか、このまま
かりそめでなく平和のまま
終戦を迎えてほしい。
敵ではなく、戦争と戦う
本当に、戦争って何のためにあるんだろう……。
現場では、双方が停戦を願って、待っていたのに。
最後の12時間の残酷さ。
現場を見ずに、地図を見て指示を出す司令部。
戦争は陣取りゲームとは違う。
人が命を懸けている。
何のために……、何のために……。
言葉が通じる同士だから、余計に切ないのかな。
最後の大合唱、日本が外国とする戦争ではありえない。
戦う意味って、何?
良く練られたストーリーと静と動の映像コントラストが見事で意外性も有り、大変に面白かった
チャン・フン監督による2011年製作の韓国映画。
原題:The Front Line、配給:ツイン。
良く練られたストーリーの映画で、とても楽しむことが出来た。
舞台は朝鮮戦争真っ盛りの両軍境界線上の高台。そこに主人公シン・ハギュンが内通調査の使命を受けて乗り込む。大尉の謎の戦死含めミステリー要素と、そこで出会う旧友コ・スの変わり様と種々の疑惑。更に、主人公が出会う謎の女性。歌うたいで皆に愛されたイ・デビッドの北朝鮮狙撃による観客の予想通りの突然の死。相当に良く出来た脚本と感心させられた。
そして何より、高台の覇者が何度も度々入れ替わる南北軍の間で、一種の交易が生じていたというのが、何とも面白い。即ち、南の家族のいる北朝鮮軍兵士の手紙の送付と引き換えに貴重な高級酒の差し入れ、食材と引き換えに名曲の歌詞を教えてもらう等。これが上層部には内通者がいると見なされた訳だが、ユニークであると共に、同一民族間の戦争ということで、説得力を有するのが素晴らしい。
更に、コ・スが酷い作戦を強行する上官を射殺する展開(大尉の死も彼によるらしい)、恐怖の北朝鮮狙撃手があの女性だった意外性、その狙撃手による射殺されるコ・スの最期。実に面白い。
そして最期、休戦協定が成立し生き残れたと思ったのも束の間、停戦まで12時間あり、さらなる戦いを命令される両軍兵士。幸い霧に覆われ戦闘不能不能に思え、北朝鮮軍は教えてもらった歌詞を歌い上げる。そのまま休戦かと思えたが霧は綺麗に無くなり、最後の死闘が始まる。そこで、多くの兵士が命を落とす。あの女性狙撃手も主人公により刺し殺された。何という無駄な死なのか。それら静と動のコントラストの見事さに圧倒された。
韓国映画のレベル実に高い!羨ましいかぎり。
製作イ・ウジュン キム・ヒョンチョル、脚本パク・サンヨン、撮影キム・ウヒョン、美術リュ・ソンヒ、音楽チャン・ヨンギュ タル・パラン。
シン・ハギュン(カン・ウンピョ中尉)、コ・ス(キム・スヒョク中尉)、
イ・ジェフン(シン・イリョン大尉)、イ・デビッド(ナム・シンシク二等兵)、
リュ・スン(スオ・ギヨン軍曹)、コ・チャンソク(ヤン・ヒョサム曹長)。
リュ・スンリョン(ヒョン・ジョンユン中隊長)、キム・オクビン(チャ・テギョン狙撃手)。
朝鮮半島の歴史!
韓国の歴史はよく知らないけれど、映画を観ることで勉強になりますね。
南北の停戦が決まっても2年近くなかなか終わらす、現地の兵士は戦い続けている。
いよいよ本当に停戦となったて、兵士はみんな喜ぶが、まだ12時間あるからエロック高地を奪還せよ!と命令される。なんとも気の毒😰
最後の戦いの時、霧の中で北朝鮮の兵士たちが歌を歌い、韓国側も同じく歌い始める。兵士達は両方とももう戦いたくはないだろう。当たり前だ。でも命令には逆らえず霧が晴れたら戦いが始まる。まさに地獄絵図。両方とも命懸けの戦いの最中、米軍の戦闘機は味方である韓国軍も居るのに構わず空爆する。酷い話だ。
同じ国民同士が敵となり、戦い続ける。まだ今も停戦状態で終戦に至っていない北朝鮮と韓国。早く終戦になればいいのに!
お勧めしたい戦争映画
戦争という極限の状況下での人間ドラマ、戦闘シーンの描写、そのバランスが素晴らしく、すごい映画だと思いました。凄惨な状況の中にもそれぞれ生きている人間がおり、それは主役側にも敵側にも存在し、正義はどこにあり、正解は何なのか考えさせられます。広大な戦時下で、メインキャストがご都合主義的に交流するシーンもありますが、それをご都合主義的と感じさせず、物語に没入させる力がある作品です。
何のための戦争
朝鮮戦争の最中の前線を体感できるかのような映画。
一つの山を韓国と北朝鮮で取り合う戦場で何が起きていたか。前半は一種のミステリー感もありつつ、後半は完全に戦争映画。
停戦協定が結ばれて、これで家に帰れると思いきや、効力を発するのが12時間後。領土を少しでも広げるために最後の総力戦をしなければならなくなり、これで戦争が終わったかと思っていた喜びから一気に絶望する感じ。
喜びからのギャップがつらい。
マジで何のための戦争か。
俺たちは敵と戦ってるんじゃない。戦争と戦っているんだ。
このセリフがとても印象的。
傑作ですね。
戦争と戦う
完成度が高い軍記物。巧みな脚本に吸い込まれる。同じ民族同士の争いという無情さを背景に、組織の理不尽な判断や、チームとしての連帯、戦場での流儀、侮れぬ敵、無慈悲な結末と、案内役であるシンハギュンの眼を通して一枚一枚カードを切ってくる。
登場人物のキャラも立つ。応答する役作り。若大尉のかつての顔と皆を鼓舞する今の顔の違い。モルヒネに手を出す時の表情。そして終局。ガンダムが朽ちて膝をつくがごとく。スナイパーの静かな表情。それが崩れるから心に響く。敵の大将とこちらの軍曹・新兵も印象的。チームを統率するコスの憎めなさ。哀戦士である。
エンターテイメント要素が高くて、これをどこまで事実として見てよいか、疑問も抱いたところ。特に新たな事実として提示された12時間は、そんなことをしたら非武装地帯を確保できなくなる訳で、どうしてそのような指示になったのか、よく理解できなかった。
停戦って何だ
朝鮮戦争はまだ続行中。
しかも同じ民族、同朋で戦っている。
それを題材に韓国人が映画を何本も撮っている現実は、
リアルなアンチテーゼをヒシヒシと伝えてくれる。
このエロック高地(逆から読むとKOREA)の戦い自体
大して有名ではないが、この悲惨さこそが事実。
ただその悲惨さを伝えるだけではなく、
少しのサスペンス要素も踏まえているから、
話の推進力はぐいぐい来る。のめり込む。
基本ウンピョとスヒョクの友情がベースだが、
それ以外のキャラたちのエピソードの絡み方もいい。
ラストも「JSA」の脚本家らしく、
北も南も同朋なんだよ、なのにどうして…、という感じ。
決して後味は良くないが、戦争映画としては傑作でしょう。
また見たい。
余談。
主演の二人、香川真司と速水もこみちにしか見えなかった。
凄惨な戦闘の中で積み重なった重厚なドラマに圧倒される壮絶な戦争映画
朝鮮戦争真っ只中の1953年。停戦協議は遅々として進まず兵士達は停戦の知らせを待ちわびながらも南北の境界線で戦っていた。韓国諜報隊員のカン中尉は焦燥に駆られて上官と口論したことから激戦区として名高いエロック高地に送られ、同地で戦闘中の通称”ワニ分隊”の中に人民軍との内通者がいるらしいとの情報を元に内偵するという熾烈な任務を命じられる。カン中尉は調査を続けるうちに長い戦闘の中で両軍の間に密かに芽生えた奇妙な関係に気付くが、激しさを増していく戦闘は両軍兵士をさらに残酷な運命へといざなう。
一進一退を繰り返す戦闘で失われていく人命。死屍累々の山林で精神を蝕まれる者達の慟哭。狙撃されてから2秒後に銃声が鳴り響くことから「2秒」と呼ばれ怖れられる姿なき狙撃手との攻防。爆撃で焼き尽くされた霧の山野に響く流行歌。何もかもが圧倒的で重厚なドラマに言葉を失います。
うわぁ…
結末が胸糞悪〜い話だった。戦争映画だから清々しいラストなんて期待してないが、予想より遥かにズシーンとくる。でも笑えるシーンもあるし、人間ドラマもあるし、凝った構造してるし、観てよかった!鉛筆で境界線を引くシーン。この映画を観る前と観た後の重み違いすぎる。あと最後アイツを刺す時のあの表情、視線はたまんない…つらいっす。
マイナス1はすこーしウェット過ぎるところがあって、そこが私好みじゃなかったから。
全25件中、1~20件目を表示