「1滴が大海になる物語」クラウド アトラス Minaさんの映画レビュー(感想・評価)
1滴が大海になる物語
約3時間という長い本編で、難しそうなテーマと来ると早速冒頭で不安要素が強くなってしまうが、体感的にはそれ程長く感じない位であり、物語に集中していた事がよく分かる形となった。公開当時高校生だった私は、正直観る映画を間違えたと思う節もあったが、終盤に行くに連れて複雑な物語の中にも面白さや発見があり、じわりじわりとその世界観にハマっていった。
本作は6つの時代のストーリーが時系列をバラバラにして描かれているという、オムニバスとも違う斬新な手法を取っている。映像化不可能とされた小説が原作となっているが、確かにこれは難しい挑戦だっただろう。それを実現させたウォシャウスキー姉妹(当時は姉弟だったか)、流石である。興行面では不振だったものの、映画製作の意欲や挑戦といった部分は大いに評価出来るものだと私は思っている。
本作は日本人には馴染みの無い輪廻転生を描いた作品で、どの時代にも同じ思いを抱いている人間がおり、自らの強い信念を元に行動して行った人々の運命を描いている。一般的なSF作品として観るとかなりの奥深いテーマに翻弄されるかもしれない。輪廻転生については詳しい訳ではないが、それでも何とか意味は理解できたし、さほど難しい説教臭い部分も無く、本当にあっという間の3時間だった。自らの決断が招く結果が必ずしもハッピーエンドになった訳では無い。愛するものや自分自身を犠牲にして、その想いを次の世代に繋いでいく。1人の人間の物理的な力は小さい物かもしれない。しかし想いという物は時代も時空も超える物であるという事が強く感じる構成だ。劇中の台詞でも「1滴でもやがて大海になる」というものがあるが、そうして集まった雫が集まる過程を描いた作品という事になるのだろう。
今までは普通に送っていた自分の人生も振り返りたくなるような作品だった。
また、内容について行けなくても、同じ俳優がそれぞれ異なる時代で別の人物を演じているというマニアックかつ大胆な演出であり、写真だけの人物だったり、性別も違っていたり等、色々な人物に焦点を当てて鑑賞してみるのも面白いかもしれない。